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在宅医療推進策の内実 

厚生労働省は、在宅医療を推進している。この春の診療報酬改定でも、在宅医療を行う医療機関に手厚く診療報酬を配分するようだ。

その在宅医療医療機関の条件とは、下記の三点。

(1)所属する常勤医師が3人以上

(2)過去1年間の緊急の往診実績5件以上

(3)過去1年間の看取り実績2件以上

複数(10以下)の医療機関(診療所ないし、200床以下の病院)が、チームを組んで行っても良いらしい。

私は在宅医療に携わっていないので、これがどれほどの障壁かは分からないが、ネットでの議論をみると、かなり実現困難な条件のようだ。特に、常勤医師が3人以上は、普通の診療所ではまず無理だろうし、もしこの人数の医師がいると、薬剤師を雇う必要が医療法上出てくるらしいので、診療報酬がかなり上がらないと経営が成立しない。

で、もしこの体制の在宅医療が成立した場合を考えてみる。これまでは、診療所の診療では、いわば主治医性であり、診療所の医師(圧倒的に常勤は院長一人であることが多い)が、急変時などにも対応してきた。中には、夜間は病院に丸投げという診療所もあるかもしれないが、少なくとも重症化した場合や、急変時には、主治医として診療所医師が対応するのが通常のことだった。

この在宅医療体制が、実現すると、いわば時間帯による担当医制に代わることになる。さらに、急性期医療の敷居を高くすることも行政により企図されているから、この在宅医療体制で終末期まで診ることになる。

患者にとっては、この制度変更がどのような変化をもたらすのか。急変時には、自宅でそれまでよく知らなかった医師が対応することになり、生半可なことでは入院は認められぬことになる。多くなることが予想される高齢者の終末期医療を、家族が担うことになる。

一方、医師にとっては、時間帯別の担当医制になるので、生活の質を上げるように見えるが、三名で担うと、三日に一日は夜間オンコールになる。平均年齢60歳の開業医にとっては、厳しい労働条件のようにも思える。また、在宅医療以外の医療は、さらなる医療費削減の波をもろにかぶることになり、元々患者単価の少ない小児科などは、ますます経営が難しくなることだろう。

医療経済・社会の側面から観ると、在宅医療は、効率の悪い制度のようだ。当初この制度への誘導を図って、高い診療報酬が設定されても、制度が動き出すと、医療費増大が生じ、診療報酬の更なる減額が行われるはずだ。この在宅医療制度が医療費を消費するために、他の部門・制度への医療費は削減されることになる。また、この制度は、ある程度の人口密度がないと成立しがたいのではないだろうか。高齢者が多い僻地では、この制度は成立しがたく、医療費削減が医療機関を蝕み、医療そのものが成立しがたくなるだろう。

厚生労働省は、制度を動かす場合に、様々なシミュレーションを行っていないのだろうか。それに、制度変更を「徐々に」進めることはしないのか。彼等の思いつきに近い行政施策で、医療現場は右往左往させられ、それまで何とか機能してきた医療がさらに厳しい状況に追いやられる。

この1,2年間に医療現場がどのような変化に見舞われるのだろう。高齢者の増加と相まって、このような行政の施策が、どのような変化をもたらすのか。私は医療現場真っただ中から足を洗う。申し訳ないが、傍から観察してゆくことにしよう。

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