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南相馬市立病院における内部被曝調査 

南相馬市立病院においてホールボディカウンター(WBC)による内部被曝の調査を行った中間報告。

結果として、現在のところ、ひどい内部汚染にさらされている方は皆無のようだが、低線量被曝の影響を考えて、今後ともに経過観察して行きたいとの結果のようだ。

筆者は語っていないが、児玉龍彦教授が以前紹介していた、セシウムの尿路上皮細胞への蓄積の問題がある。セシウムは、尿路から多く排泄され、尿路の上皮は、高濃度のセシウムに長時間さらされ、細胞内に放射性セシウムを取り込むことになる。それが、尿路上皮の異型性を引き起こす、という報告がある。この汚染は、WBCによる計測では捕まえられない。以前紹介した論文にもあり、また児玉龍彦教授も繰り返していたが、尿所見、沈査の上皮細胞異型性を長期に亘りフォローすることが必要なのではないだろうか。

以前、テレビでの双葉町町民の方へのインタビューを聴いて驚かされたのだが、3歳未満の小児には、内部汚染の検査が行われていないとのことだった。現在用いられているWBCは、幼少小児への適用は難しい様子。こうした幼少小児での内部被曝の問題こそが、一番の重要事項であるはずだ。行政の怠慢と言われても仕方あるまい。

それに、WBCによる内部被曝調査の人員・費用が、病院の持ち出しで行われていることも驚かされる。内部被曝の問題は、今後長く続く。持続可能な体制を、リソースの側面からくみ上げる必要がある。これも、行政がバックアップすべきことだ。

こうしたきちんとした研究者・医師等による信頼のおけるデータが出ることこそが、一番の安心につながる。行政当局が情報を隠したり、市民が情報を得る努力をないがしろにすることは、市民の不安を募らせる。行政には、市民が情報を得る体制へのバックアップと、そうした情報の全面的な公開を続けてもらいたい。

以下、MRICより引用~~~

WBCの検査結果をふまえて

南相馬市立総合病院 坪倉正治

2012年2月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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南相馬市立総合病院では、2011/7/11より、ホールボディーカウンター(以下WBCと呼びます)による住民の方々対象の内部被ばく検査を開始しました。当初は安西メディカル社および富士電機社製のWBCを用いておりましたが、今現在はキャンベラ社製のFast scanというWBCを用いて、一日あたり110人のペースで検査が進んでいます。2012/1/27日の段階で、検査人数は1万人を超えました。

全てが解明された訳ではありません。しかしながらこの検査は我々に多くのことを教えてくれました。この検査に携わるものとして、検査結果とともに、どのようなことが明らかになりつつあり、今何が問題となっているかを紹介できればと思います。

尚、結果は南相馬市のホームページ
http://www.city.minamisoma.lg.jp/shinsai2/kensa/hibakukenshinkeka.jsp
に随時公表されております。

明らかになったことの一つは、「時間経過とともに、セシウムが検出される人の割合が下がってきている」ということです。上記ホームページの図4になります。小児を対象にした2011/9,10の時点での検査では、約半数が検出限界以下であったのに対して、2012/1には約95%が検出限界以下になりました。現在南相馬市の多くの子供で、セシウムの検出をしなくなってきているということです。大人でも同様の傾向が見られます。大人を対象にした場合、2011/10には約半数が検出限界以下でしたが、2012/1には約80%が検出限界以下になっています。

このことは大多数の人間で、「セシウムが徐々に排泄され、体内量は低下傾向である」ということを示しています。上記は完全に同一の人間でのセシウム量の変化ではありませんが、表2と図3は最も値の高かった小児と成人について、約3ヶ月後に再検査の際、全員で値が低下傾向であったことを示しています。

セシウム137自体の半減期は30年ですが、体内に取り込まれた場合、尿や便を通じて排泄されます。生物学的半減期といい、成人で70-100日、1歳で10日とかなり幅があります。成人より小児の方が、男性より女性で排泄速度が早く、一家全員を計るとご家族の中でご高齢の男性のみが検出してしまうことを頻繁に経験します。まだ再検査できている人数は20名強と少ないですが、少なくともセシウムを取り込み続け、体内の放射能量がどんどんと上昇傾向である、といったような状況では全くありません。

二つ目は、「2011年冬の日常生活での慢性被ばく量はかなり少ない」ということです。先ほど2012/1の検査で小児の約95%が検出限界以下であったと申し上げました。このことは、これらの小児での、検査直近での内部被ばく量が、検出されるレベル以下に抑えられていたことを示しています。器械の検出限界レベル以下の慢性的な被ばくを否定できるものではありませんが、今現在の南相馬での日常生活が、大きな内部被ばくをもたらすものではないことがわかってきています。この結果は、南相馬市で実際に診療している我々にとっても非常に勇気づけられる情報でした。しかしながら、今後値が増えないとも限りません。WBCの検査は、1度の結果で何かが言える訳ではなく、継続的な検査を行うことで初めて大きな力を持ちます。今後も定期的に検査を行い、体内の放射能量が増えてこないことを確認する必要があります

ここまで、体内のセシウム量が代謝により下がってきていること、慢性的な被ばくが少なく抑えられていることを紹介しましたが、注意せねばならない情報もわかってきました。
三つ目は、「放射能の値の下がり具合が良い人と悪い人がいる」ということです。先ほどの図3にも示されていますが、再検査にて予想される生物学的半減期よりも減少具合が悪い人がちらほら出始めているのです。つまり、現在もある一定量の慢性的な内部被ばくを続けている人がいるということです。

それらの人々がなぜ、放射能値の下がりが悪いのか明確な理由は突き止められていません。しかしながら、そのような方々のほとんどが、汚染食品(の可能性があるもの)を継続的に摂取し続けている方でした。具体的には家庭菜園のものを未検査で食べ続けていらっしゃる方や、未検査の果物の箱買いをし、継続的にそれを摂取している方です。実際に、それらの行為をやめるよう指導することで値の低下を認めたことはこの仮設を支持すると思います。

ベラルーシのベラルド研究所の報告書には、内部被ばくの原因の94%が食物、5%が水、1%が空気であったと記されています。幸か不幸か食物の自給率の低い日本では、色々な産地の食物を食べるため、このように食品からの内部被ばくがかなり抑えられているのではないかと推測しています。今現在の500Bq/kgであるとか、100Bq/kgといった基準が功を奏しているのではなく、ただ、色々なものを食べているから、それに加え子供を持つ親たちが独自に産地を選び、食品摂取に気をつけてくれているからに他ならないのだろうと思います。当院の結果(子供の平均値7.2Bq/kg)は、同一レベルの土壌汚染地域で比較した場合、ソ連で報告されていた量(約200Bq/kg程度)に比べて文字通り桁違いに低いのはこのためだろうと推測しています。

外部被ばくは、空間の線量に大きく依存しますが、内部被ばくに関しては、空間線量がその量を規定する因子として重要なものでないと感じています。つまり、今の生活での内部被ばくは、現在の食生活でどの程度汚染食品を避けられているかに大きく依存しています。福島県内で食品の摂取に十分気をつけていらっしゃる方と、都内に住んでいて食品には全く気を使わない方を比べた場合、どちらがこれからの内部被ばくリスクが高くなるのかは微妙なところです。食品汚染をどのように考えるかは、南相馬の問題ではなく、浜通りの問題でもなく、もはや東日本全体の問題です

今現在、南相馬にてスーパーで食材を購入し、水道も必要な場合はミネラルウォーターを用いて、適宜マスクをする。この生活で大量の内部被ばくをする状況ではありません。よって逆にベラルーシでは1%が空気と申し上げましたが、相対的に空気からの被ばく量が多いであろうことは予想されます。内部被ばくの主要な経路が、経口なのか吸入なのかという点に関して、ウクライナではWBCの上半身側と下半身側の検査結果を比べるという方法がとられています。吸入が多い場合、上半身側(肺側)での検出量が下半身側(足腰まわりの筋肉側)よりも高くなる傾向があることが言われていますが、今現在の当院の結果にてそのような傾向は見つかっておりません。吸入での被ばくが問題ないなどという気は一切ありませんが、いずれにせよ今後は食品の検査体制の強化と、居住区域のホットスポットの除染が必要なことに変わりはないでしょう。

当院での検査で明らかになってきたことをいくつか紹介しましたが、まだこれから解決しなければならない問題も多く存在します。
一つはヨウ素の問題です。やはり内部被ばくにおいて、一番懸念されるのはヨウ素による甲状腺がんの増加だと思います。我々が検査を開始できた2011/7の段階から、既にヨウ素は全く検出できない状況になっていました。その頃には既に検知できない程度の量だったと言えるのかもしれませんが、ヨウ素の被ばくは終わっており、痕跡を追うことは出来ませんでした。つまり我々にはヨウ素の内部被ばくがいかほどだったかを知るすべがありません。このことに関して我々の出来ることは、ヨウ素とセシウムの比率を決め、セシウム量からヨウ素の内部被ばく量を推測することです。しかしながら、セシウムがかなり排泄されつつある今、この方法での予想はかなり雑であり、ヨウ素の内部被ばくの高リスク群がどのような方々なのかを突き止めるまでには至りません。その意味でも、全員の小児には年に一度ペースの定期的な超音波による健康診断が必須であろうと考えています。

二つ目は他の核種の問題です。代表的なものはストロンチウムでしょう。ベータ線しか出さないストロンチウムはガンマ線の検出器であるWBCでは検知できません。尿検査するしかないのですが、大量の尿が必要であったり、処理に時間がかかったりと、高度専門施設でしか検査できないのが現状です。少なくとも当院では計測出来ません。計測できたとしても、尿自体の濃さが朝と夕で違うように、値が安定しないという問題もあります。これに対しては、ウクライナと同じ方法であれば、セシウムとストロンチウムの比率をいくつかのサンプルから推測する方法があります。経時的に変化しますが、チェルノブイリ事故後、セシウム対ストロンチウムが9対1程度でした。被ばくの約9割がセシウムによるものだったという評価です。日本でもより明確なデータの解析が進むことが必要です。プルトニウムを含む他の核種も同様です。

三つ目はWBC自体や、その情報を処理するリソースが圧倒的に不足しているということです。今現在に南相馬市立総合病院では1日あたり110人ずつの検査が行われておりますが、この速度では全く必要な検査数をこなせません。WBCは継続的な検査と評価が必須です。実は、WBC検査は、検査自体が医療行為でもなければ、医者が説明しなければならないという規定がありません。医療行為でないため、その検査を行えば行うほど病院の持ち出しになっているのが現状です。今後の体内放射能量が増えてこないかをチェックすることは今後の暮らしの方向性を決める上で、絶対に必要なことです。各自治体でも状況は同じです。WBCが各地で導入されることは決まっていますが、多くの自治体はどのように運用すれば良いのかわからず、悲鳴を上げています。

WBCの規格化がなされていないことも問題です。東京大学の早野先生が指摘されていらっしゃるように、今の福島で、きっちり遮蔽されていない部屋内での椅子型WBCは役に立ちません。大量の内部被ばくをしていないかを確認するスクリーニングとしての意味は持つかもしれませんが、現在フォローのターゲットにしているような体内セシウム量まで検出限界を下げることが出来ないからです。当院でもキャンベラ社製のWBCが導入され、検出限界を250Bq/body程度まで下げることが出来ましたが、椅子型のもので検出限界を3桁以下とするには、1人あたり10分という検査時間が必要でした。ウクライナでは、厚さ10cm以上の金属の壁に囲まれた特注のWBCが稼働していましたが、もっと細かく計れるWBCや、小児のための特注WBCも必要です。

ここまでいくつかの値を紹介してきましたが、1回の検査値の評価は明確な結論を導くには困難を極めます。もし、内部被ばくと外部被ばくが等価であると考え、体内の分布が一様で、臓器特異性が無いと仮定した場合、大雑破に言い換えれば、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準で話す場合、今まで計測された値はまず問題がないと言い切ってよい値です。99%以上の人が1mSVの被ばくもしていないからです。今現在、この解釈のみがメディアを通して流されるため、問題ない問題ないと繰り返し報道され、内部被ばくの実態がわかりづらくなっています

しかしながら、内部被ばくの影響は、様々なことが言われています。バンダジェフスキーらが「放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響」で述べているように20Bq/kg、場合によっては10Bq/kgでも心臓に影響が出るかもしれないという報告すらあります。20Bq/kgの人間は、その後の内部被ばくがどれほどかによって、3,4ヶ月後には値が半分になったり大きく増えたりするはずで、一時点のセシウムの値のみで、長期のセシウム慢性被ばくの影響の評価は厳しいのではないかと考えていますが、慎重を期すため、当院でも体内のセシウム量が高かった方から心電図の検査も同時並行して開始しました。現在のところ明らかな致死的不整脈が見つかった方はいらっしゃいません。これらも順次報告して行きたいと考えています。採血で明らかな放射線障害によると思われる血球減少を呈している方も今現在いらっしゃらないことも付け加えたいと思います。

問題の多いWBC検査ではありますが、当院では今後もこの地域の方々のために継続的な検査と評価、情報公開を行って行きたいと考えています。ご支援賜りますようどうぞよろしくお願い致します。

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