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調剤薬局と医療機関 

これからは、零細医療機関経営者の立場ではなくなるので、診療報酬等医療の経済的な基盤についても考えるところを、どしどしここで記して行きたい。

医療費が年々増加し、それを抑制するため、小泉政権時代には抑制額を決めて、診療報酬も引き下げられた。民主党政権に替わってから、あからさまな医療費抑制はなくなったが、少なくとも末端の零細な医療機関にとっては厳しい状況が続いている。

その一方で、医療費に占める割合を大幅に伸ばしているセクションがある。調剤薬局(保険薬局)に支払われる医療費の部分である。これには、調剤薬局数自体の増加等の因子も含まれるが、診療報酬の決定に際して報酬が優遇されていることは事実のように思える。

m3から拾ってきた数字を挙げる。

まず医療費全体に占める調剤医療費の割合の経時的な変化だ。

      国民医療費    調剤医療費

H12     30兆1400億    2兆7千億

H22     36兆6000億    6兆800億

過去10年間で、国民医療費が、6兆4600億円(21%)増えた。その一部である、調剤医療費は、4兆1000億円(152%)増加している。医療費の伸びの64%は、調剤医療費の伸びであることが分かる。

調剤医療費に占める薬剤師の技術料を見てみる。手元にあるのは、平成17年と22年の比較だ。

      調剤技術料(調剤医療費に占める割合%)処方箋1枚当たりの調剤技術料の平均  

H17年   1兆2400億円(27%)          1900円

H22年   1兆5600億円(26%)          2100円

調剤技術料は、調剤医療費全体の猛烈な伸びに並行して伸びており、調剤技術料の絶対値でも増加傾向にあることが分かる。

このような事実が、マスコミに取り上げられることは殆どない。診療報酬改定時にマスコミを通じて喧伝されるのは、「開業医が楽して儲けている」というプロパガンダだ。これは、財務省・厚労省といった行政が、歪曲したデータと、企図した誤った結論をマスコミに流すことによって行われている。

繰り返すが、末端の医療機関としては、小泉政権以降、診療報酬は実質切り下げが続いている。開業医の受け取る技術料を10円、20円下げるという議論が繰り返し行われている。しかし、上記の調剤薬局・製薬企業の受け取る診療報酬について突っ込んだ議論はされない。

医療のなかでの医療機関と薬局・製薬企業の担う責任の重さ、重要性から考えると、医療機関の経済基盤を侵食する一方、後者により大きなパイを回そうとする、こうした行政は、問題があるように思える。少なくとも、社会的な公平性を欠くと言わざるを得ない。患者として医療機関にかかられる方は、調剤薬局での支払いと、医療機関での支払いを現実に見比べてみて頂きたい。その差の大きさに改めて驚かれることだろう。

調剤薬局は、チェーン化し、大規模化している。その団体である日本保険薬局協会には、賛助会員として、製薬会社・薬品流通会社が名前を連ねている。こうした団体には、行政OBが様々な形で天下りしているのが通例となっている。製薬大企業には、厚労省の官僚が多数天下っていることが良く知られている。天下りの実態、政治家との関係等、調べればかなりキナ臭い煙が立つはずだが、マスコミは、上記の医療費分配の不公正さと同様に全く切り込みを入れようとしない。

MRICにしばらく前にアップされた坂根氏の医師・薬剤師の基本的技術料についての議論は、こうした文脈で読むと、説得力がある。再診料だけが医師の技術料ではないが、彼女のこの文章は、医療現場にいるものの実感を適切に反映している。


以下、MRICより引用~~~

再診料と薬局調剤技術料

つくば市 坂根Mクリニック    
坂根 みち子

2012年3月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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同一病院の同日多科受診は、2科目からの受診料は取ることが出来ない。この制度が問題となった時、時の厚生官僚は、病院の外来を安くすれば病院側が外来部門を縮小する方向にいくだろうと思った、と答えた。実際には、経営者は他の赤字を少しでも吸収すべく外来部門を縮小することはなかった。今回、大病院での同日多科受診について、2科目でも半額算定できるようになった。わずかに前進した。
しかしながら紹介率が低い大病院については「紹介なし」患者の初診料を引き下げ、また治療が終わり他の医療機関に紹介しても患者がまた受診した場合、外来診療料は70点から52点に下がるというルールを作った。官僚の考えは上記とおなじであろうが、同じ轍を踏むだろう。患者がいろんな理由をつけて戻ってきてしまった場合、病院側は結局診察を拒否することはできない上に収入が減り、ごねた患者は安く診てもらえる。しわ寄せは現場に丸投げである。

そもそも病院に通院している患者に、かかりつけ医を作ってそちらに通ってほしいということを話すのはかなりの労力が要る。その時間と手間を考えると、Drは皆毎回黙って診察してしまうのである。
患者側からも考えてみる。筆者は勤務医だった頃から、患者さんにはかかりつけ医として近所の開業医受診を勧めてきた。心筋梗塞や心不全等重篤な病態から治療した人は、医師に対する信頼感から担当医が変わることに抵抗する。これは心理的には理解できる。病院の方が専門医がいて、いざというときに入院できて検査も出来るから開業医には行きたがらない、これもある程度真実だろう。だが戻ってきた人たちや開業医に行くことを拒否した人から、今まで何度病院の方が安いからこっちに来ているんだ、と言われたことか。安価な医療は安易な受診を生む、これもまた真実である。

昨年末、支払い側の代表である健康保険組合連合会専務理事は、「診療科は、病院の都合で分けているにすぎない。我々は複数科にかかっても『病院を受診した』と思っているだけ」と発言した。現場感覚で言うと暴言に近い。更に氏はこうも言っている「確かに大学病院の外来の伸び率は高く勤務医の負担は大きい。しかし、患者が大病院を受診するのは、複数の診療科があり、優秀な医師がいるなどの理由から安心感を抱くからだろう。」 それぞれの専門医の診察料をタダにしておいてこれはない。それならきちんと支払わなくてはいけない。病院の医師がいくら勧めたところで、今の制度では決定権は患者にあり医師は診療を断れない。状態の安定した人が開業医に流れる仕組みになっていないから、皆大病院に行くのである。前回の改定時、再診料については2年間で議論を深めるはずだったが、まったく前に進んでいない。支払い側の代表と診療側の代表が今更このレベルに戻って議論をしているとはなんということだろうか。

もっと驚くべきことがある。院外の調剤薬局における調剤技術料は、昨年の資料によると1枚平均200点(2000円)である。
大学病院の再診料が70点(700円)で、同日多科受診すれば、1科あたりの診察料は、2科受診で35点、3科受診で23点相当となるのに対して、薬剤技術料は、調剤の種類と日数により、ガスター81点、ラックB81点(いずれも28日処方で)とすべて加算されていく。診察しているDr.より、そのDr.が出した処方箋で処方する薬剤師の技術料の方がはるか上なのだ。
これを知った時あまりのことに愕然とした。自分の診察技術料が薬剤師の技術料の足元にも及ばない評価しかされていないことに、怒りよりモチベーションが落ちてしまった。なぜこんなひどいことがまかり通っているのか。
県の行政のトップで働かれているDrは、「結局のところ官僚が医師を嫌いなんだね」とおっしゃった。逆に腑に落ちた。そうでもないと理解できない。

さらに問題だと思うのは、今までほとんどの医師はこのことを知らなかったということである。筆者自身、開業してもこの事実はわからなかった。巧妙に医師の目には触れないシステムになっている。
自分の子供が大学病院を受診して初めて気づいた。医師になって20年以上経っている。他の人たちはどうだろうか。
試しに昨年、自分が所属していた医局でこの事を話してみた。会場にどよめきは走った。発表後地域の拠点病院で働いているDr.が、ここにいるDrの90%は知らなかったと思いますと言っていた。そうだろうと思う。昨年来、折に触れてこの話をしているが、ほとんどのDr.は それは本当か?と聞いてく
る。
全国の国立大学の教授に聞いてみるがいい。その日ご自分でやられた外来に対して支払われた再診料と調剤技術料を知っているかどうか。

そもそも医薬分業を推進したのはなぜか。院内調剤の薬剤差益で稼ぐ構造を解消し、薬剤関連費を下げるために院外処方を強引に推進したのではなかったのか。現状では、どこのクリニックにも門前薬局が開設されている。つまり、折角医薬分業を推し進めながら厚労省は薬局に対して、自前の薬局を建て薬剤師数人雇ってもペイする値段に設定したということだ。やはり裏に何かあると勘繰りたくなるほどの薬剤関連費の優遇である。
そして、世間知らずのお人よしの医師たちは、自分たちの技術料がこんなに不当に低く抑えられている一方、薬剤師の技術料にはずっと高い点数がつけられていることさえ知らず、中医協では1点2点の再診料の攻防に明け暮れているのである。

大学の教育に、医療経済学を入れなくてはいけない。また医師は日常業務の保険点数を知る必要がある。特に勤務医は、医療費の実態をほとんど知る機会がないので、何が起こっているのかわからず低医療費政策の嵐に巻き込まれている。
20年前は検査用紙に、点数が入っていたため、どの検査が何点かオーダーする時に知ることができた。今は制度が複雑になりすぎて知ることが出来ない。患者に聞かれても答えられない。
日本は諸外国に比べて、新薬の処方率がとても高い。あれだけ熱心にMRが回ってきて営業すれば、新しい物のほうが効き目がよさそうに思えるのでつい処方してしまう。
またジェネリックも、国から強制されると医師の裁量権を奪われたようで反発していたが、なんのことはない、製薬会社にうまく乗せられていただけのことかもしれない。個人的には事実を知ってからはすべてジェネリック可とする処方が増えた。薬剤費が増えれば事実上医療に回る費用は減ってしまう。

支払い側は、医療費の底上げになると、再診料を上げることにも多科受診にきちんと支払うことも強く反対されているが、今の再診料と調剤技術料をみておかしいと思わないのか。支払う金額が少なければ歪んだ料金体系でも構わないのか。
再診料は原点に戻ってきちんと評価してほしい。大病院の診察料は当然各科毎とれるようにして欲しい。そうすれば安定した患者は黙っていても開業医に流れるようになる。それが勤務医の負担軽減である。開業医に患者が流れるようになれば、開業医の外来数が増えて無駄な医療で経営を成り立たせる必要がなくなる。開業医は今の料金体系では数をこなさないと経営を維持できない。再診料が安いと回数と検査で稼ぎ、しかも一人一人にじっくり話す時間は無くなる。悪循環である。
節約すべきは再診料ではない、他にある。

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