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マーラー「さすらう若人の歌」 

マーラーの作品「さすらう若人の歌」を演奏したことが二度ある。最初は、大学オケで。まだチェロを弾き始めて間もないころ、殆ど弾けず、難しいなという思い出しかない。二度目は、10年近く前、地域オケの定期演奏会でだった。多少弾けるようになり、マーラーの世界を垣間見ることができた。バリトンの歌う歌詞に興味がわき、抄訳を試み、それをそのオケのMLに流したことがあった。誰かの訳を参考にさせていただいたのだったかもしれないが、自分なりの訳になるように努力してみた積りだった。その訳が、とあるところからひょこっと現れたので、備忘録の積りで、ここにアップしておく。

マーラーの私的な、リートに通じる世界をみることができるようだ。


以下、感想と抄訳~~~


この曲の歌詞が、マーラー自身によって作られたものであることは、スコアを手にして初めて知ったことでした。衒いのない、率直な歌詞は、文学的評価はどうあれ、好感がもてるもののように思います。練習中にも少し話題になった、歌詞の意味のあらましを、僭越ながらここに記させていただきます(抄訳のつもりが、ほぼ全訳になってしまいました)。


第一曲 私の恋人の結婚式の日に

恋人の結婚式の日、喜ばしい結婚式の日に、私は悲しみだけを知る。私は、自分の小さな部屋に入ることだろう。陰気な小部屋に。そして私の恋人を思って泣くのだ。私の最も愛する恋人を思って。嗚呼、可憐な青い花よ。枯れてしまうな。愛くるしい小鳥よ。お前は、緑の衣を着けたヒースの枝にとまって歌うのだ。嗚呼、世界は何と美しいのだろう。もう歌わないで。花を咲かさないで。春は、もう過ぎ去ってしまったのだ。すべての歌は、終わったのだ。夜毎、眠りに落ちるたびに、私は自分の悲しみを思う。私の悲しみを。

第二曲 今朝、私は野原を歩いた

今朝、私は野原を歩いた。夜露が、まだ野草にかかっていた。陽気なフィンチ(小鳥)が私に語りかけた。こんにちは?。お早う。こんにちは?。美しい世界ではないか?美しい世界!歌え!歌え!美しく命にあふれて!この世界は、私を何と喜ばせてくれることだろう。

野原のブルーベル(ゆり科の多年草)までもが私に喜びを与えてくれる。その指輪のような花びらを、チリンチリンと鳴らす。鈴の音を鳴らすように、朝の挨拶をする。美しい世界ではないか?。美しい世界?チロンチリンと鳴らせ。美しいものを。この世界は、私を何と喜ばせてくれることだろう。

そして、この世界はすぐさま輝きだす。陽光のなかで、すべてに音と色彩が満ち溢れる。花や鳥、大きいものもかわいいものも。愛すべき日だ!。美しい世界ではないか?こんにちは?こんにちは?美しい世界!これで私の幸福は戻ってくるだろうか?否!否!私は、知っているのだ、幸福の花は決して決して私には花開かぬことを。

第三曲 光り輝くナイフがある

光り輝くナイフがある。私の胸に刺さったナイフ。嗚呼、痛みよ。嗚呼、悲しみよ!。ナイフは、とても深く切り裂く。すべての楽しみと喜びを。とても深く!ひどい苦痛を与え、深く切り裂くのだ!嗚呼、これは何という邪悪な客人なのだ?彼は、決して沈黙することなく、決して休もうとしない。私が眠ろうとする夜も昼も、休もうとはしない。嗚呼、苦痛よ!悲しみよ!私が天を見上げるとき、そこに二つの青い眼が見える。嗚呼、苦痛よ、悲しみよ!彼女のブロンドの髪が、かぜにゆれるのを私は遠くから眺める。嗚呼、苦痛よ、悲しみよ!私が夢から目覚めると、彼女の銀色の鈴のような笑い声が聞こえる。嗚呼、苦痛よ、悲しみよ!黒い棺の中に横たわれたらよいものを。そして、決して決して私の眼が開かねば良いのに。

第四曲 私の恋人の二つの青い目

私の恋人の二つの青い目が、私を広い世界に送り出す。私は最愛の土地に別れを告げねばならない。嗚呼、青い眼よ、かって何故私に眼差しを投げかけたのか?。今、私には、永遠の苦痛と悲しみがある。

私は、静かな夜の中に歩みだした。静かな夜、暗いヒースの茂みの向こうから私に別れを告げるものはいなかった。ごきげんよう。ごきげんよう。ごきげんよう。愛(恋人と訳すべきか)と苦悩が私の同行者だった。

道の傍に、菩提樹が立っている。そこで、私は始めて眠ることが出来た。菩提樹の下で!。その花びらが散って、私の上に降り注いだ。そこで私は生きることが苦痛ではないことを知った。すべてが再び良いことに
なった。嗚呼、すべてが再びよきことになった。愛と苦悩、そして世界と夢のすべてが!

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歌が終わり、最後の寂しげなフルートソロの前の、あくまで暗いクラとバスクラの和音が印象に残ります。人生と和解したはずのマーラーには、やはり苦悩が待ち受けていることを暗示しているのでしょうか。

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