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送信能力と受信能力 

言ってしまった。

もう10年以上の付き合いになる、ある北米のハムに、「キーを替えた方がいい」と言ったのだ。

彼は、長年、縦ブレを使っている。だが、キーイングの長点が短いことが多く、短点と区別がつかない(ように私には聞こえる)。さらに、短点の長さが不定で、時に長点と区別がつかないことがある(ように私には聞こえる)。一昨日お目にかかったときに、あまりに理解しがたかったので、縦ブレではなく、バグキーかエレキーを用いたらどうかと言ったのだ。

私は、これは禁句としてきた。

キーイングは、1対3という比率が機械的に正確に出されれば良いと言うものではない。それが理想と言う方もいるかもしれない。その方は、キーボードをお使いになることだ。が、電信に多少なりとも長くかかわってくると、微妙に変化するキーイングの方が疲れないことが分かってくる。微妙なリズムの変化が、聴くものに心地よさを感じさせてくれるのだ。だから、1対3の原則を機械的に求めることには反対なのだ。

キーイングが、そのように機械的なものではないということになると、キーイングへの評価は、送信者と受信者の間の相対的な関係になる。ある「崩れた」キーイングが、ある受信者に取りにくかったとすると、それは「崩れ」具合が酷いことと、受信者の受信能力に問題があることと両方があり得るのだ。送信の「崩れ」が、あるエキスパートにとっては、心地よいリズムでもありうるのだ。電信を始めて間もない方々は、この点に関して謙虚になるべきだろう。

勿論、送信者に問題があることも大いにある。縦ブレを用いたキーイングの場合、否、キーボード以外ではどのようなキーであっても、送信者がキーの操作を如何に訓練してもうまくできな場合がありうる。特に老齢になってくると、それが目立つ。場合によっては、神経系の病気のためなのかもしれない。そうした、いわばハンディキャップを抱えつつ、電信に出ようとされているのかもしれない、ということを、受信者は常に念頭に置くべきだ。

先に述べた北米の友人のキーイングを、別な友人はよく理解できるのである。だから、私は、彼にキーイングについてコメントすべきではない、と自分に言い聞かせてきたのである。その禁を自分で犯してしまったということだ。

その二人の電信マンである友人に共通するのは、英語のネーティブであるということだ。電信を受信する際に、ある程度コミュニケーションをとるようになると、符号と文字を一対一対応させることは意識のなかであまり行われなくなる。むしろ、意味を理解することに意識が集中する。その際に、それまで送出された内容の理解から、これから送出されるかもしれぬことの予測を無意識のうちに行う。丁度、本を読むときに、文字一つ一つを追うのではなく、文章の意味を理解し、次に来るかもしれぬ言葉・文章を予測しつつ読み進めるのに似ている。この作業が、電信でコミュニケートする際に、我々を引き付ける一番のポイントではないのだろうか。電信は、聴くのではなく、読むのだ。彼の符号を良く読み取る友人は、英語が母国語であるために、それが可能になっている可能性が高い。

和文でもキーイングの「崩れ」が問題にされるが、あれはやはり和文そのものへの習熟度が高い方に多く、そうした方同志では、その高い習熟度から、先に送信されるであろうことが予測できるために「崩れ」を感じないのではないだろうか。

私が禁句を吐いてしまったその友人は、何かバツが悪そうな様子で、かなり速度を落として別れの挨拶を送信してきた。

悪いことをしてしまったものだ・・・。

コメント

表現の難しさ

Shinさん、お早うございます。 欧文にせよ和文にせよ取りにくい符号と言うのはありますね。 最近私は、自分としてはかなり強い表現でクセのある符号に対する苦言をブログやBBSで述べさせて頂いていますが、私の考えとしては、無線と言う不特定多数を相手にした行為の場合、受け手を選ばない様に送信する側がなるべく正確な符号を送り出すべきだと思っています。 でも相手に対して「貴方の打っている符号はモールス符号ではない」と言う様な表現はやはり問題があるでしょう。 少なくともそれを理解出来る人も居るのですから。 今回のお話を心に刻んでおきたいと思いました。 ではでは。

Re: 表現の難しさ

>無線と言う不特定多数を相手にした行為の場合、受け手を選ばない様に送信する側がなるべく正確な符号を送り出すべき

正確な符号を送るようにすべきというのは、一般論としてその通りだと思いますが、無線交信は、不特定多数を相手にするのとは違うと思います。第三者のaudienceはいるとしても、基本的には一対一の関係です。その関係から、符号の受信しやすさが決まってきます。ある符号は、ある状況では取りにくいかもしれませんし、別な相手では十分取れる符号かもしれない、ということですね。送信する側だけの問題ではなく、受信する側の受信能力にもかかわることになります。

和文で交信している、プロ上がり、またはプロの方の、故意に崩したような符号を問題にされていることは分かりますが、相手がそれを十分読めるのであれば、問題はないでしょう。初心者にその崩した符号を送るのは論外ですが。

送信者の年齢、病気などからくる符号の「崩れ」ということもありえます。相手の符号が取れないと、詰問したり、否定したりするのは慎重でなければならないと、私は思います。

昨日、久しぶりにあった、W6YAが、ひざ関節の置換術をうけたばかりで、手が震える(から送信ミスが多くなる、投与されている薬のせいかも・・・)と恐縮していました。以前に比べるとわずかにミスが増えたかという程度でしたが、彼にしてみると、「いやになっちゃうな」というレベルだったのかもしれません。私にとっては、昔と変わらず、立派なCWだと思いました。会ってうれしかったという気持ちが、符号のミスを帳消しにしました。符号の崩れと、ミスは同一に扱えないかもしれませんが、送信する相手の状況を思いやることも大切なのではないかと思います。

相手の送信の様子にコメントする場合、慎重に言葉を選んで、相手が改善できるように述べることが必要でしょうね。

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