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指導・監査・処分の「3つの不幸」(その1/3) 

医療機関に対して、行政は圧倒的な権力を振るう。保険診療に関して、指導を行い、監査さらに処分を行う権力が、行政に与えられており、医療機関側にはそれに対抗する権限が実質的に与えられていないからだ。これは、保険診療という、本来、医療機関と患者・保険者・国の間の対等な契約関係に基づく事業をゆがめるものだ。これらの行政の権力の根拠が、戦前の法律に基づくものであることに驚かされるが、現在も、行政は権力の行使を恣意的に行っている。

先日、私の仕事場を継承してくださった医師が、厚生局に出向き、煩雑な手続きをようやく終えた時、担当の行政官は、「これからは個別指導もありますから」と唐突に述べ、にやりとしていた、と聞いた。権力を与えられた者には、その行使が公正に行われる制度的な保障・監視体制が必要だ。現時点では、実施的にその保障がない。行政訴訟を起こしたところで、一医療機関・医師が、行政とその背後にいる国に勝てる可能性は限りなく小さい。厚生局の行政官に、細分化された医療を指導できるだけの力量がない。また、指導は専ら経済的な理由で行われており、医学的な観点からして適切でないことが横行している。こうしたことから、現行の行政による指導・監査・処分は、根本的な見直しが行われるべきだと考える。

この厚生局には、不祥事でつぶされた社会保険庁の役人が多数入り込んでいるという。年金を食い物にした投資会社から、年に2000万円の供応を受けていたのも、同じく社会保険庁から横滑りした年金基金の連
中だ。こうした行政の腐敗を、徹底的に追及すべきだ。


以下、MRICより引用~~~

指導・監査・処分の「3つの不幸」(その1/3)

この記事はm3.com医療維新に2012/4/5に掲載されたものです。
http://www.m3.com/

弁護士 石川 善一

2012年5月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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●はじめに
保険診療をした後の法律関係(権利・義務関係)には、大きく分けて、2つの局面がある。保険医療機関からの診療報酬請求の局面と、保険医・保険医療機関に対する指導・監査・処分の局面である。

前者の法律関係を定めているのは、健康保険法および厚生労働省告示(「診療報酬の算定方法」)であり、その告示の別表(点数表)は、詳細に定められ、かつ2年ごとに改定されている。このことは、医療関係者が広く知るところである。

他方で、後者の法律関係を定めているのは、健康保険法および厚生労働省令(「保険医療機関及び保険医療養担当規則」)であるが、指導・監査・処分に関する同法令の根本的構造は、1942年の同法改正以来(すなわち大日本帝国憲法下から)、変わっていない

本稿では、後者の法律関係の問題の深刻さを医療関係者に広く知っていただくために、まず、指導・監査・処分における「3つの不幸」、すなわち保険医の自死、保険医・指導監査官等の贈収賄、保険医等に対する違法処分について、振り返りたい。そして、「みぞべこどもクリニック」の溝部達子医師に対する保険医療機関指定取消処分および保険医登録取消処分に関する行政訴訟の代理人を務めた弁護士の立場から、「3つの不幸」の原因・関係は何か、今後そのような「不幸」が繰り返されないようにするために何を改めたらよいか、筆者の認識している問題の所在と意見の概要を、計3回の連載でお伝えしたい。

1.開業医(保険医)の自死
2011年、新潟市内の開業医が地方厚生局の個別指導10日後に自殺したことは、日本医師会の臨時代議員会で報告され、多くの医療従事者の注目を集めたが、このような不幸は、以前から繰り返されてきた

矢吹紀人著『開業医はなぜ自殺したのか』(あけび書房)によれば、古くは1952年、長崎県と広島県で厚生省の監査が行われ、「20数人が処分されて自殺を出す『高松技官事件』が起きた」ほか、1959年には、埼玉県と宮城県で、監査を受けた直後に保険医が自殺し、1965年には、山口県で保険医が監査直後に焼身自殺し、1993年には、富山県で、開業医が個別指導で「こんなことをしておられると、医者ができんようになるかもしれないなー」などと言われた後(約2カ月後であるが、「毎日、注射を受けにくる腰痛や肩痛の患者さんを、どうやってへらしたらいいんか」などという「悩みの2カ月」の後)、自殺している

また、2007年9月には、個別指導で「こんなことをして、おまえすべてを失うぞ!」などと言われていた東京の歯科医師(保険医)が監査の直前に自殺した(東京歯科保険医協会の東京社会保険事務局に対する同年10月4日付け「抗議文」。詳細は同協会のホームページを参照)。

さらに、同年には、7月の個別指導から鬱の症状を呈していた鳥取市の開業医が、10月に保険医登録と保険医療機関指定の各取消処分を受けた後の特異な経緯も経て、12月に自殺した(日本医事新報2012年3月3日号16ページ)。

このような不幸が繰り返されていることは、その原因が当該個別指導・監査の担当官個人ないし保険医個人の問題ではなく、すべての個別指導・監査ないし保険医に関係し得る問題であることを示している。

2.保険医・指導監査官等の贈収賄
指導・監査に関する不幸には、もう一つ別の一群がある。
2007年には、地方社会保険事務局の指導医療官が保険請求への指導をめぐり有利な取り計らいをした見返りに、大学同窓会役員である保険医から現金を受け取ったとして、いずれも逮捕され、有罪判決を受けた。

2010年には、厚生労働省(本省)の特別医療指導監査官(逮捕時は課長補佐)がコンタクトレンズ診療所に指導・監査に関して便宜を図った見返りに、同診療所を系列に有するコンタクトレンズ販売会社の役員から現金を受け取ったとして、いずれも逮捕され、有罪(医療指導監査官は実刑)判決を受けた。これらは、自らの犯罪行為について逮捕され、各判決を受けただけとも言えるが、このような犯罪行為に至ったことは、当該保険医・指導監査官等の各個人にとっても、指導・監査という制度自体にとっても、不幸なことである。

これらの贈収賄の原因が当該個人のモラルの問題にとどまらないことは、誰しも思い至るところ(すなわち、過去の日本を見ても、現在の世界の各国を見ても、法治制度の進化の問題)であるが、厚生労働大臣は、本省課長補佐にかかる2010年の事件を受けて初めて、「保険医療機関等に対する指導・監査の検証及び再発防止に関する検討チーム」の設置を指示した。しかし、その同年12月17日付け「中間とりまとめ報告書」を見ても、「指導大綱・監査要綱等の体系に基づき行われている指導監査業務について、不正行為の発生を防止できるものとなっているかという観点から確認を行う。……指導対象の選定方法等そのあり方について見直しを行う」という程度にとどまっている。

3.保険医等に対する違法処分
保険医・保険医療機関に対する指導・監査の後の行政処分においても、不幸はある。
2005年11月、当時の山梨社会保険事務局長は、溝部達子医師に対する保険医登録取消処分と「みぞべこどもクリニック」の保険医指定取消処分(以下「本件各取消処分」という)をした。しかし、同医師は、本件各取消処分の取消請求訴訟(以下、「溝部訴訟」という)を提起し、2010年3月31日の甲府地裁判決は、「本件各取消処分は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり、裁量権の範囲を逸脱したものとして違法となり、取消しを免れない」と判断して、各処分を取消した。

国は控訴したが、2011年5月31日の東京高裁判決は、甲府地裁判決の理由を一部改めながら、国の控訴を棄却し、同判決は確定した。

このような違法な本件各取消処分により、保険診療がいったんできなくなり(2006年2月に甲府地裁が執行停止決定をした後は、保険診療ができるようになっていたが)、東京高裁判決の確定により同処分が取消されるまでに、5年半余り(初めての個別指導が中断され、患者調査が実施されてからは、6年半余り)を要したのは、不幸なことであった。

本件各取消処分に至った原因は、その違法な処分をした当該地方社会保険事務局長ないし担当官等の個人的な問題にとどまらないはずである。「人による行政」ではなく、「法律による行政」の下では、個人的な事情があったとしても、本来、法律に違反する行政処分はできないはずである。

(その2/3に続く)

コメント

社会保障法と弁護士

新司法試験となって行政法が必須科目となり、社会保障法分野に対応できる弁護士もふえています。
 平成のはじめごろまでは行政法は選択科目で6分の1程度が選択、その後廃止、2007年の新司法試験で必須科目となって復活というのが大きな流れです。
 役所に不満があれば弁護士を同席させてください。

なるほど、司法関係者増員とカップリングされたことだったりして・・・ということはないですよね。

私はもうこうした行政とのやり取りの矢面に出ることはない立場になりましたが、もしそうなったら、徹底して戦おうかと思っていました。でも、開業当初、行政に処分をくらうことが、即仕事が続けられなくなる、医師生命がおしまいになることを意味していましたから、神経は使いました。

弁護士帯同も是非進めるべきでしょうが、行政に一方的な権力が付与されたシステム自体がおかしいと思います。行政の監視を誰か第三者が行わないとだめだと思います。

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