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後発薬(ジェネリック)は、先発薬とは異なる薬 

先日、米国人医師の記した小児神経学のテキストを読んでいたら、ある抗痙攣薬のジェネリック(後発薬品)は、効果が劣るので、それまで一般に用いられてきた先発品の薬品名をそのテキストでは用いる、と記されていた。テキストに堂々とそのように書かれていたので、いささか驚いた。医師としては、ジェネリックは、先発品と、別な薬であると考えて用いることが妥当だと常日頃感じていたので、この著者は、それを端的に述べているだけだと思い直した。

ジェネリックにも、先発品と同等かそれ以上の製剤もあるが、原則は、両者は別物ということだ。

多田智裕氏の下記の文章は、極めて穏当な発言だ。

現在、医療現場では、一件20円の加算が取れるからと、一般名処方にすることの是非が問題になっている。医師が処方をする際に、薬剤の商品名ではなく、一般名を処方箋に記すと、加算が取れるという新たな仕組みだ。その処方箋を受け取った院外薬局の薬剤師が、先発品にするか、または数多くある後発品のどれにするか決めて、患者に薬を渡すことになる。

ジェネリックと先発品は別な薬剤だという原則からすると、これは医学的に問題が多い。院外薬局が、最も優れた薬剤を選択してくれれば良いのだが、薬局としては薬価差が相対的に大きいジェネリックを処方することが多くなるのではないか。

実際的な問題として、薬剤師の判断で処方されたジェネリックで副作用が出た場合は、その副作用の責任はだれが取るのかという問題がある。厚生労働省の回答は振るっている。誰も責任を取らなくて良い、取るのは薬剤の副作用を補償する組織だ、という回答だ。でも、まずは医師が、患者とのやり取りと副作用の対処に関わることになるのは間違いない。

また、薬剤の適応症が、ジェネリックと先発品で異なる場合がある。医師の知らぬところで、ジェネリックを出され、その薬剤が患者に使えないことになっていた場合、厚労省は個別に対応するとしている。すなわち、処方した医師には、ジェネリックにした責任もなければ、その薬剤が実際処方された事実すら知らないのに、医師に責任が負わせられ、保険者が適応外使用として医師に薬剤処方に関わる診療費用すべてを返還することを求めることがある、というのである。これは論理的にも、社会通念上からも、認められる話ではない。

この一般名処方加算のような杜撰な制度を、厚労省がなぜ持ち出したのだろうか。表向きは、医療費削減という理由づけだが、どうもそれでは理解できぬことが多すぎる。Yosyanさんのブログで最近取り上げられ、そこで議論されたように(こちら)、院外薬局を救済することが目的のように思える。数多いジェネリックを取りそろえることは、院外薬局にとっては大きな負担になる。それを少数に絞ることができれば、経営的に院外薬局には大きなメリットになるわけだ。一般名処方加算制度によって、処方権を、医師から薬剤師に移せば、院外薬局は特定の(少数の)ジェネリックだけを揃えれば良いことになり、経済的な負担が大きく減ることになる。

厚労省は、ジェネリック使用促進と、先発品の保護とを同時に進めようとして、度ツボにはまっているという状況なのだろう。何が置き去りにされているか、それは素性のよく分からぬジェネリックをそれと知らされずに投与される国民である。厚労省は、ジェネリックと先発品各々の製薬企業の方を向いているのである。


以下、MRICより引用~~~

ジェネリックは「先発品と同じ薬」ではありません~短絡的すぎる「薬剤費の抑制=ジェネリックの使用促進」という図式

※このコラムはグローバルメディア日本ビジネスプレス(JBpress)に掲載されたものを転載したものです。
http://jbpress.ismedia.jp/

武蔵浦和メディカルセンター
ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕

2012年5月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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東京都保険医協会が作成した、「ジェネリック(後発医薬品)は医者に相談して」( http://www.hokeni.org/top/download/pdf/2012generic_a4.pdf )と題したポスターに対して議論がわき起こっています。
このポスターではジェネリックは「新薬と同じ成分効能か?」と問いかけます。そして「ジェネリックの効能にはばらつきがあります」「効能格差は最大40%」と続き、「ジェネリックの中で効くものを医師と相談しましょう」と締めくくっています。
これに対して、日経新聞は4月22日「医療界は後発品普及を促せ」と題した社説を掲載。「医療費削減のために(ジェネリックを)主体的に普及を促 すべき医療界が、(中略)一部の医師の意識改革の遅れにより、(中略)誤解させる文言を含んだポスターを作成した」と、このポスターが“患者の正しい理解 を助けない”と論じました。

日本ジェネリック医薬品学会( http://www.ge-academy.org/ )も東京都保険医協会に対して内容の変更や回収を求める質問状( http://www.ge-academy.org/img/iken120326.pdf )をホームページに掲載しています。
特許が切れた医薬品をより安く提供するジェネリックの役割は十分に分かります。しかし、ジェネリックを「先発品と同じ薬で値段が安い」と説明することこそ、逆に患者の正しい理解を助けないばかりではなく、事の本質を見えなくしてしまうのではないかと私は思うのです。

●なぜ医師団体は「ジェネリックの使用は慎重に」と呼びかけるのか
4月から施行された「一般名処方」加算20円を算定している医療機関においては、処方された薬が商品名ではなく成分名で記載されます。
例えば、今まで発行される処方箋に「ガスター」(胃酸を押さえる胃薬の商品名)と記載されていたものが「ファモチジン」(ガスターの成分名称)となります。今までとは違う名称が処方箋に記載されていて戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。
医師が“商品名“でなく“成分名“で処方箋に薬を記載するようになると、実績重視で先発医薬品を選ぶのか、値段を考えてジェネリックを選ぶのか、のアドバイスは、薬の調剤を行う薬剤師に委ねられることになります。
ですから、「一般名処方」制度の本質は、これまで医師が独占してきた「処方権限」の一部が薬剤師に委譲されることに他なりません。
もしも、先発医薬品とジェネリック医薬品の効果が同じであれば、医師と同じ6年間の教育と実習を受けた薬の専門家である薬剤師が調剤できるようになるのは、効率が良い制度だと言えるでしょう。
しかし、欧米の例を見ても、血圧の薬やてんかんの薬などのジェネリック医薬品の中には、効果が不十分または不安定で、使用が推奨されていないものが存在するのはまぎれもない事実です(参考:メルクマニュアル医学百科 http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec02/ch017/ch017c.html )。
「ジェネリック=価格の安い薬」と説明されていることが多い現状では、治療の最終的な責任を背負う医師団体が「ジェネリックの使用は慎重に」という呼びかけを行うのは、決して“意識改革が遅れている“からではありません。

アメリカではジェネリックは先発品とは「別の薬」と認識
そもそもジェネリックは「後発医薬品」とも呼ばれており、新しく開発された薬(先発医薬品)の20年間の特許が切れた医薬品を他の製薬会社が製造して発売したものを指します。
有効成分名とその分量が判明しているので、ジェネリックメーカーはほとんど開発費用をかけることなく薬を製造できます(新薬開発には約200~1500億円程度かかるのに対して、ジェネリックは1億円程度です)。
薬剤原価のみで製造できると言っても過言ではなく、そのため「先発品の2割から6割の価格で販売できる」という説明には間違いはありません。
でも、ジェネリックは「先発医薬品と同一の有効成分を同一量含有している」だけであり、添加物などは異なります。先発医薬品と決して「同じ」ではないのです
この議論の出発点は、厚労省および、ジェネリック医薬品学会も同じです。
話が変わってくるのはこれから先です。
厚労省およびジェネリック医薬品学会は、「添加剤の成分や配合量が先発医薬品と異なっていても、承認審査においては生物学的同等性試験を行なっている」から「先発医薬品と同等の安全性と有効性が担保されている」と結論づけます(「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/02_09.pdf 厚生労働省)。
分かりやすく言うと、「(省略しても良いと思われる試験は省略しているが)必要とされる試験は行った上で承認しているので(先発品と同じと思って)問題ない」ということです。
考え方の違いと言えばそれまでですが、アメリカにおいては、ジェネリックは先発品とは「別の薬」と認識されています。そして、承認基準項目が少ない以上、発売後に第三者機関による「先発医薬品と同等かどうかの品質再評価」が必要と考えられています。
ジェネリックに変更して薬の効果が明らかに低下した症例や、添加物による副作用と思われるアレルギー症例を経験している医師は、私を含めて数多くいると思われます。
実際に一人ひとりの体内に取り込まれてどのように作用するかについては、承認基準だけですべて判明するわけではないのです。
東京都保険医協会が冒頭のジェネリック医薬品学会の質問状に対して答えた文面はこちら( http://www.hokeni.org/top/public/generic/2012/120416generic.html )で確認できます。厚労省の求める承認基準にこだわることなく、発売後の品質評価の結果の公表を積極的に行い、基準に満たないジェネリックのランク付けが必要である、という意見は十分理解していただけるのではないかと思います。

●特許切れ先発品価格の価格を引き下げるのがベストの解決策
それよりも私が一番の問題だと思うのは、「質を落とさない薬剤費の抑制方法=ジェネリックの使用促進」という短絡的な図式が、多くのメディアおよび世間一般において当然とされていることです。
これまで述べてきたように、ジェネリックは先発品と“同一”ではありません。ですから「質を落とさない薬剤費の抑制」の一番正当な方策は、「特許切れの先発品価格をジェネリックと同じ程度の価格にする」のはずです。
先発品は臨床試験も行われていますし、副作用情報も十分に揃っています。また、20年間の特許期間中に開発費の回収は終わっています。
そして、先発品メーカーにしてみても、ジェネリックメーカーにシェアを奪われるよりは、特許終了後は価格を安くしても売り上げと利益を上げた方が、新薬開発の研究費に回せる金額が多くなるのは間違いないでしょう。
調剤薬局が在庫を揃えるのに四苦八苦するほどの数多くの種類のジェネリックを製造するより、特許切れ先発品の薬価を下げることこそが、“同一”の薬品をみんなが安く利用できるベストの方法だと私は思います。

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