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電子カルテの洗礼 

今日というか昨日、週に一度のバイトだった。午前中、結構患者が途切れることなく来ている最中に、11月から使用される電子カルテの説明会がある、と呼び出された。患者の切れたところを見計らって、説明会会場に向かった。

電子カルテは初めての体験。外来用と入院用に別れている。きれいなお姉さんが、横について説明をしてくれる・・・いや、説明というより、一通り動かしてみるだけ。アイコンの位置や、その意味等、聞いたそばから、記憶の外に抜けてゆく。説明のパンフも項目が羅列してあるだけ。二度にわたってトータル1時間弱をかけて説明を受けたが、それでも全部の一通りの説明も終わらない。後は、しつらえてある練習用のPCで練習しろということか。

良く理解できなかったので、いきおい批判的になってしまうが、感想としては、例えこのソフトに慣れたとしても、冬場等一日に100人近い外来数になったらお手上げだろう。または、この電子カルテのために、端折った診察・カルテ記載にせざるをえなくなるのではなかろうか。私は、週一回しかそこで仕事をしておらず、8、9割の患者さんは新患同然なので、特に時間がかかる。この電子カルテで対応できるのは、一人に、15分から20分以上かけられる場合だけになるのではないだろうか。画像を多く取扱い、診るべき患者さんの数が多くない科では、電子カルテは有用なのだろう。が、小児科では、Xである。

別な日に仕事に来る、他の医師と共同で患者を診ていることもあり、とりわけ丁寧にカルテ記載をこころがけてきたが、それはまず無理になるだろう。テンプレートを作ったところで、大切な病歴・家族歴・既往歴は、テンプレートでは対応できない。要するに、これまでのような仕事はできなくなる、ということだ。ほかの病院、第一線の病院の外来では、電子カルテでどのように多数の患者さんに対応しているのだろうか。

で、結局、これは事務部門の仕事を、医師が引き受けるということに他ならない。それに、このシステムの立ち上げとメンテナンスを請け負うIT企業も潤うことだろう。医療現場中の一番の現場が犠牲になるわけだ。電子カルテが有用性を発揮するのは、米国のように、一日10名からせいぜい20名をゆっくり診ることができるような環境だけだ。言葉は悪いが、日本の薄利多売の医療では、電子カルテは医療現場に更なる負担をもたらすだけなのではないだろうか。それとも、若い医師諸君は、一人数分間の診療を電子カルテで楽々とこなしているのだろうか。どう考えてもそうは思えない。

電子カルテで多人数の患者をこなす医療現場の姿は一体どのようなものだろうか。ディスプレーにだけ目をやり、患者を見ようとしない(というか、見る余裕のない)医師、それに通り一辺倒のステレオタイプな内容のカルテ記載ということになるのではなかろうか。これが杞憂であってくれれば良いのだが・・・。

今日の外来をやっていて、ちょっと嬉しかったことは、患者さんの親御さんのなかに、私がその病院以外ではどこで仕事をしていているのか尋ねる方が何人かいた、ということを看護師の方から聞かされたこと。ちょっと自慢話になってしまうが、きっと丁寧に診察していることを評価してくださっているのではないか・・・違うか。看護師さんの語るニュアンスでは、そのような感じだった。でも・・・この電子カルテの導入と同時に、その丁寧な診察は無理になるのかもしれない。

コメント

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Re: 医療と教育

Sさん

貴重なお話をお聞かせ下さりありがとうございます。「合理化」「IT化」という名のもとに、様々な労働環境の悪化が進んでいるのですね。こうした方針を決める「お上」には、その実態が届いていないのでしょう。

また、いろいろとご意見をお聞かせください。無線の方でもお目にかかれる機会があることを期待しています。

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