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「たらい回し」訴訟の和解 

昨日のローカル新聞に載っていた、医療「過誤」訴訟和解のニュースについて触れよう。

自治医大に、若年性関節リュウマチの6歳の男児が入院したが、肝機能障害があり、国立成育医療センター(昔の、国立小児病院)に転院。しかし、消化管出血を生じ、自治医大に再び戻り生体肝移植を行ったが、救命しえなかったというケースだ。親御さんは、病院を「たらいまわしにされた」として、1億1千万円の賠償を求めて、自治医大を提訴した。

その民事訴訟で、和解が成立した。「因果関係は不明である」が、和解するようにとの裁判所の勧告に従って、自治医大側が和解を受け入れたらしい。

手元にこのニュースの記事がないので、もしかしたら、間違いがあるかもしれないが、大筋の流れは、このようなものだった。

この記事を読んで、納得が行かないことが二つある。

このケースは、若年性関節リュウマチの全身型、それもかなりの重症だったように思える。生体肝移植を試みたことから、肝不全の状態になっていたようだ。このように幼くして生命が断たれることは、親御さんにとり断腸の思いだったことだろう。しかし、主治医達にとってもそうであったことは想像に難くない。それが、何故「たらい回し」をされたという民事訴訟になるのか、全く納得が行かない。国立成育医療センターといえば、様々な分野でトップクラスの小児医療を行っている医療機関である。どのような理由で転院となったのか分からないが、少なくとも「たらい回し」ではあり得ない。

また、「因果関係が不明」であるのに、何故和解するのだろうか。親御さんとしても、どうしてわが子が亡くなったのか、徹底して理解したいという気持ちではないのか。裁判所が、そうした医学的な議論をする場として相応しくないのは分かるが、一旦、民事訴訟を提訴した、提訴されたからには、徹底して「因果関係」を究明して欲しいものだ。医療側から言えば、このように中途半端な形で和解しなければならないとなると、モチベーションは大きく低下する。自治医大の幹部が、この裁判を「穏便に」早く終わらせることだけを考えていたとしたら、それは、医療現場の思いとは全く違うだろう。

コメント

和解について

私もこの場合和解では納得いきませんね。
ただ、最近私の周りで発生しつつある事案では、場合によっては和解という選択肢もあり得ると当事者から聞かされました。

最初はその先生も若いなんてあり得ない、徹底抗戦だ、と仰っていたのですが、いろいろと進展するうちに、少し考えたようです。
裁判って本当に不毛なんだそうです。エネルギーを使います。人を罵倒し、相手の出してきた証拠を全力を出して否定する、そしてこちらの証拠を提出して、また証人を呼んでそれを補完して…。
日常臨床の合間にこれを続ける元気は、普通に一生懸命臨床をしてきた医師ならば、あまりないそうです。
勝ったところで損こそしませんが、徳にもなりません。
そうすると請求額を思いっきり下げて和解さえすればこの面倒から解放される…と考えてしまうのだそうです。
また和解だからといって、こちらに非がある、と言うことにはならないのだ、と聞きました。お互い不毛な裁判をお金を幾ばくか払うことで止めましょう、と言うことなんだそうです。
まあ個人的には理不尽な判決に対しては徹底抗戦で望んで欲しいし、売られたけんかは勝たなければならない、と信じてはいるのですが…。
実際医院経営をしている当事者からすれば、そんなことよりもその裁判をさっさと忘れて心機一転、診療に目を向けることの方が得策、と思ってしまうのだそうです。
もちろん和解に持ち込んでも、裁判に持ち込んで泥沼になっても弁護士にはお金が入りますので、彼らはウハウハなわけです。

QWさん

不毛な戦いという意味は良く分かるような気がします。特に、個人の立場で訴えられたら、医師としての仕事が出来なくなってしまうでしょうね。身近にそのような立場に置かされたことのある医師の知り合いがいました。そのケースは、医師側に非があるとはどう見ても思えぬケースでした・・・その方の場合、結局、相手が訴訟を取り下げて終わりましたが、医師会の弁護士が担当してくれたとはいえ、事務的な作業に追われて、とても苦労したようです。

個人で訴追された場合は、裁判の負担を考えると、様々なケースがありうるとは思います。

しかし、この自治医大の場合は、大学が訴えられているもので、医師個人が訴えられた場合とは異なります。ご存知の通り、福島や奈良でも、医療機関が組織防衛ないし事なかれ主義に走り、主治医に不利な報告書を出したり、責任者が不用意に謝罪したりして、問題が深刻化しています。東京女子医大の心臓手術中の事故では、和解した上に、人工心肺装置を稼動させていた医師が、刑事訴追されました。地裁では、彼は無罪になっていますが、検察は控訴しています。あの事件なども、大学当局の事なかれ主義が発端です。

その場は、そうした事なかれ主義で糊塗できたとしても、それは更なる医療訴訟を起こす引き金になる可能性が大きいと思います。

因果関係も明確でないケースで、安易な和解に応じることは、不幸にも亡くなられた方とそのご家族にとっても良いことではないのではないでしょうか。患者さん・ご家族にとっては、何故そうした転帰をとらねばならなかったのかを知りたいという気持ちが、第一なのではないかと思います。

いずれにせよ、現状の裁判所での医療訴訟は、多くの場合不毛であるという点では同意いたします。

補筆します

はい、私もこの場合には徹底抗戦で臨むべきだと思います。和解はあくまでも個人とか、もっと小さなレベルのでことならあり得る、と言うことです。

まず、これで安易に和解に持ち込んだ場合現場の士気は明らかに下がります。また病院は自分たちを守ってくれない、と言うことが分かれば現場医師の病院トップへの信頼感が大きく損なわれます。そしてそれは多くの場合、病院を将来にわたって害悪をもたらします。
亀田総合病院の様に判決が出た後、「不当判決だ。断固戦う」と院長が声明を出すくらいの気概を示せば、例え裁判で負けようとも現場の士気・結束は高まるはずですし、そういう院長の下でこそ身命を賭して働きたいと思うものです。
長期的にも和解は病院にとって何の益ももたらしません。文句言った患者の勝ちにしてはなりません。

僕だったら徹底抗戦します。絶対に。
司馬遼太郎は河井継之助をして次のように言わしめています。
「瓦全は生きある男子の恥ずべきところ、よろしく公論を百年の後に俟って今はただ玉砕せんのみ!!」と。
自らに非がないにもかかわらず、裁判に訴えられた場合は徹底抗戦します。裁判起こしたことを後悔させるまでやります。
頑張るだけです。

QWさん

再びコメントをありがとうございました。熱血漢のQWさんのこと、このようにお考えのことと思っておりました。

病院や大学の幹部の考え方も大きな問題ですが、やはり政治家・官僚、そしてその背後にいる国民大衆が、どのように考えるのか、または考えないのか、が大きな問題ですね。

慶応大学の権丈教授の言う「合理的な無知」・・・リターンが目に見える形で得られること以外のことは、無関心を示すという合理的な無知、国民の間に根強くある性向・・・が、大きな壁になっていますね。私も、行き着くところまで行かないと、問題の根本的な解決はありえないのではないかという考えになりつつあります。

さらに、その焼け野原の後に、持てるもののみが先端医療にアクセスできるアメリカ流の社会が待っているのかと思うと、ウンザリします。仕方ないのでしょうかね・・・。

医療過誤
「我が子に起きた悲劇」

始めまして、コメント拝見致しました。
「エンゼル広輝のホームページ」
お時間があればご覧下さい。

拝見しました

上記の「エンゼル広輝のホームページ」を拝見いたしました。
お子さんを亡くされたご両親の気持ちは察するに余りあります。
そして医療に関する経過も熟読させていただきました。

その上でお答えいたしますが、やはりこれは致し方なかったのではないか、という思いです。お子さんが亡くなったのは医療ミスではなく、病気によるものであった、とやはり思わざるを得ません。

細かい部分では、些細な技術的なトラブルはあったかと思いますが、現場では正直良くあることです。どのように技術を磨いてもうまくいかないことはあります。それを結果だけ捕らえて「ミスだ」「殺された」となっては医療行為は成り立ちません。
しかもあの状況から肝移植にこぎつけ、しかもその後一般病棟に出られるまで回復している、これはすごいことだと思います。

叙情的な書き方に終始しているのは、親御さんゆえに仕方の無いことでしょうが、かといってそれで医療ミスがあると印象付けられてもそれは客観的に見て同意しかねます。

やはり広輝君が亡くなったのは病気のせいです。医療者は、そりゃ方針は二転三転したかもしれませんが、その現場、その時々でベストと思われることを実行してきたと思います。

結果としてベストではなかったかもしれませんがワーストではなかったとは言えると思います。

感情労働

最近、時々見かける言葉に「感情労働」というのがあります。

肉体を使う「肉体労働」、頭脳を使う「頭脳労働」。そして感情を切り売りする「感情労働」。

この「感情労働」はひどくエネルギーを費やし、疲弊するのだそうです。
特に理不尽な要求に対して接するような場合には著しく疲弊します。

この感情労働の最たる職場は「教職」なのだそうです。そしていまや医療職もまたこの「感情労働」になろうとしているのだそうです。

なるほど、と思った次第です。

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