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日本脳炎予防接種と薬剤の副作用 

西日本で日本脳炎の予防接種直後に、10歳の小児が心肺停止になり亡くなられた。その方のご冥福をお祈りしたい。

この事例が最初に報道された時に、激しい症状を呈するアレルギーであるアナフィラキシーではないかという報道があった(毎日新聞等)。しかし、接種5分後に心肺停止を生じたということから、アナフィラキシーとしては病状の進展が早すぎると感じていた。

その後、患児は、基礎疾患があり、オーラップという抗精神薬と抗鬱剤(新しい種類のSSRI)ジェイゾロフトを投与されていたことが判明したようだ。それら二剤の併用により、QT延長症候群(LQTと省略)を生じ(または、それが悪化し)、予防接種という精神的なストレスが加わり、致死的な不整脈をきたしたのではないか、と改めて報道されている。予防接種をした医療機関と、かかりつけ医は別である。

LQTは、10000から15000人に一人の割合で見いだされる異常で、先天的な要因と後天的な要因で発症すると成書にはある。典型的には、年長児期から思春期にかけて、激しい運動や、感情的動揺などにともない、意識消失発作として発症するらしい。原因の一つが、薬物であり、その原因薬物は、向精神薬、抗アレルギー剤、抗生物質、抗潰瘍薬等々多岐にわたっている。診断は、心電図によってQT延長を証明することだが、運動負荷によるQT延長を確認しなければならないことも多いようだ。

で、今回の事例の併用薬の副作用情報を見ると、共にLQTを生じうるとの記載はあるようだが、両者の併用については、ジェイゾロフトは禁忌としているが、オーラップには、他の二種類のSSRIの併用は禁忌とされているが、ジェイゾロフトについては記載がない。ただ、臨床現場の感覚では、オーラップのこの記載を読めば、ジェイゾロフトの併用には慎重になるだろう。

この事例から分かること、そしてこの経験を今後に生かすために当局関係者に期待したいことは次のようなことになる。

〇日本脳炎予防接種自体の問題ではなかった。当初、予防接種の副作用とほぼ断定的に報道したマスコミ(毎日新聞等)には反省を促したい。

〇LQTによる突然死の可能性が高い。

〇LQTは、致死性不整脈をきたしうる疾患としては、比較的頻度の高いものだが、実際上、事前に診断を下すことは難しい。家族歴に突然死をした方がいたり、薬物投与中にストレスで失神発作を生じた既往歴があれば、診断をつけられるかもしれないが、予防接種を行う臨床現場の立場からすると困難なことではないかと想像する。

〇薬物の副作用、併用禁忌の情報は、投与する医師が最大限の注意を払うべきだ。が、LQTの場合等、多数の薬物によって起きる重篤な副作用について、医師が、すべてカバーするのは実際上難しい。こうした重篤な副作用については、薬剤師にも応分の責任がある。薬剤処方に関わる診療報酬が手厚く設定されているのは、こうした見過ごしを、処方段階で見出すためではないのだろうか。こうした副作用を防ぐために、二重、三重のチェックが働くシステムが必要だ。

〇この事例で、LQT発症に、薬物が関与していることはほぼ確実だが、患児の元々の遺伝的な素因も関与している可能性もある。

〇予防接種の問診の不備はあったと思われる。処方をしていた医師の説明が十分だったか、それをご家族が十分理解できたのか。問診の形式、ご家族の記入の問題、そしてそれをチェックする医療側の体制等。だが、予防接種は、短時間に多数に対して行わなければならないものなので、この事例のようなケースを避けるためと称して、複雑極まる問診票に変更することは避けてもらいたい。行政と予防接種会社、製薬会社は往々にして責任を医療現場に丸投げする傾向がある。それは止めてもらいたい。例えば、薬物の副作用情報にはありとあらゆる副作用が羅列されている。頻度不明というものも多い。それらをすべて把握することは、実際上不可能だし、現実的ではない。副作用情報に掲載してあれば、責任は医療現場にあるというやり方は、製造責任と行政の責任の放棄としか思えない。

〇この事例について、警察が情報を集めていると聞くが、少なくとも刑事事件化すべき事例ではない。


週に一回予防接種を10数名に定期的に行っている私としては、無関心ではいられぬ事件ではあった。

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