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鼻腔を診ること 

私は、小児科医として咽頭所見と同等、またはそれ以上に鼻腔の所見を重視すべきではないかと常々思ってきた。小児疾患で多いのが、気道(特に上気道)の感染だが、それに劣らず多いのが、上気道、鼻腔のアレルギーだと思うからだ。

鼻腔の重要な機能には、吸気中の異物・病原体をトラップし、下気道に至らせぬこと、それに吸気を温めることがある。空気の流れる構造は、鼻甲介で三つに分けられ、吸い込まれる空気が、そうした広い鼻粘膜と接触することで、その機能が実現することになる。吸気が最初に接触する場所であり、かつその接触が広い面積で行われる鼻腔粘膜が、感染・アレルギーの成立する場になる可能性が高いわけだ。このようなことは、医師であれば、よく分かっていることなのだが、小児科医は往々にして、口腔・咽頭所見しかみない。確かに、こちらに特徴的な所見が出る疾患はあるし、扁桃の変化も大切だ。だが、それ以上に、鼻粘膜・鼻腔の所見は大切だろうと思う。

以前にも何度か記したが、鼻腔所見を必ず診るようになって、そこでの異常所見が如何に多いかに驚かされる。特に、アレルギーによると思われる鼻粘膜の腫脹、鼻閉塞が驚くほど多い。咽頭痛で来院する患者の大半が鼻閉即を伴う。これは、同じ病変が咽頭粘膜にもあるということもあるかもしれないが、たいてい咽頭粘膜に異常所見はみられない。後鼻漏が、その痛みに関与していると思われることもある。鼻腔の異常は表面上さほど深刻ではなく、本人・家族もその症状に慣れてしまうことが多いようだが、確実に生活の質を落とし、感染の機会も増やす。また、中耳炎や副鼻腔炎といった合併症も頻発する。口呼吸することで、口腔内が乾燥し、虫歯になりがちになる。

昨夜、何気なく、耳鼻咽喉科の実践的なテキストに目を通していて、鼻鏡にも多くの種類があり、細い経の優れた内視鏡が使えること、後鼻腔所見も内視鏡で比較的容易に見えることを改めて知った。私が、若ければ、こうした機械を十分に活用して、鼻腔の所見をより精細に取っただろうと夢想した。

若い小児科医諸君は、エコーを自在に使いこなす方が多くなっていると聞く。それと同様に、是非鼻腔所見も重視してもらいたいものだ。こんなことは、小児科医にとって常識になっていることかと思っていたが、非常勤の病院で、他の数名の小児科医の診療ぶりをカルテで見せて頂き、鼻腔を診ることはまだまだだと感じた次第だ。自慢話と受け取られてしまうかもしれないが、診療のスタイルが旧態依然であることは自分でも意識しているし、そうした意識から抜け出して、新たなことにチャレンジし、有用と判明したことを実際の診察のやり方に取り入れてゆくことがいつも大切なのではないかと思っている。特に、小児科では圧倒的に患者数の多い上気道疾患については、まだまだ検討の余地がありそうな気がする。「風邪」の一言で済ませてはいけないケースが多々あるものだ。

付言すると、鼻腔は耳鼻科に、という意識が小児科医にあるのは事実で、実際耳鼻科医でなければ対応できぬことも多い。それはよく分かっている。が、全身を診るべき小児科医という立場からは、鼻腔所見を取ることも大切なことなのではないだろうか。

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