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医師増員論は、戦時中の医師増員を思い出させる 

かって数年前までは、厚生労働省も「諮問会議」等「外部有識者」を使って、医師が将来過剰になるという議論を盛んにしていた。実際、それ以前は、医学部の定員を減らしたりしていた。

ところが、「医療崩壊」が起きてから、2008年を境に、医師の増産に舵を切ることになる。医療現場で医師が過労の状況にあるから、医師を増やせば良い、という発想だ。毎年医学部に入学する学生数は、2006年までしばらく7625人だったものが、年々増やされ、2010年では8846人となり、16%の増加だ。最近の厚生労働省が出した医師数実態調査による将来の医師の必要数は、14%増となっており、少なくとも毎年10000名の医師を生み出す体制にする積りのようだ。2006年以前の人数の5割増しを目指すということも言われており、そうすると11400人前後まで増やされる可能性が高い。

この大きな方針転換について、疑問がある。

以前の医師過剰論との整合性はどうなっているのだろうか。有識者の意見に過ぎないという言い訳は許されない。厚生労働省の意向を汲んでの過剰論であったはずだし、結論を厚生労働省は受け入れ政策に反映させていたはずである。このように真逆の方向に政策転換するのであれば、その根拠を以前の議論を踏まえて示すべきである。それをしないのであれば、政策決定すべての根拠が薄弱と見なされることになる。

「医療崩壊」は、現場の出来事であり、その原因も多岐にわたる。大きな引き金になったのは、小泉政権当時の医療費引下げと、医療に完全を求める国民の風潮と、それに応えたマスコミ・法曹の問題だったのではないだろうか。医師数を増やすこと「だけ」では解決しない。現場の声を聞き、それに基づいて医療政策を策定すべきだ。急激な医師数増は、問題を解決しないばかりか、別な問題を生じる可能性が高い。

医療教育現場への負担はどうなっているのだろうか。医学部によっては、50%前後の増員が行われている。教育設備、スタッフは十分に手配されているのだろうか。漏れ伝わるところでは、これまでの教育体制とあまり変わらぬという。それでは、粗製乱造と言われても仕方あるまい。

医師が不足するという議論をする場合、現在の医師のワークロードを基準に議論していないだろうか。現在の医師に課せられた負担のどこが過重なのか、を見極め、それに対する対応をきめ細かくする必要がある。医師を急激に増やせば解決するということではないように思える。

医師を増やすとしても、現在、これから医学部に入って教育を受ける医師が一人前になるには、10数年かかる。さらに、彼らの医師としてのキャリアーは、40年間以上続く。高齢者人口が、減少に転じてからも、彼らは仕事を続けねばならないのだ。彼らの医師としての人生を考えてみることも必要なのではないだろうか。

現在の医師増員論は、戦争中に医専を作って、医師数だけを増やしたことを思い出させる。弁護士大量増員の二の前にならなければよいのだが。


以下、引用~~~


20年後も医師不足、高齢化で患者増
12/12/26
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

医師不足:20年後も 高齢化で患者増

 現在の医師数を増やす政策でも、高齢化で医療が必要な人も増えるため、20年後も医師不足が続くとの予測を、東京大医科学研究所の湯地晃一郎助教(内科)のチームがまとめた。医師の高齢化も進み、現行政策の効果は限定的としている。

 日本では亡くなる人の8割が病院で最期を迎えるとされ、死者が多いと医療を必要とする人も多くなる。チームは、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計や厚生労働省の医師数調査などから、都道府県別の医師と死者数の関係を、10年と35年で比べた。

 その結果、人口1000人当たりの医師数は、2人から3・14人へ1・6倍になるが、死者数も同程度増えることが分かった。このため、医師1人がみとる5年間での死者は、10年の23・1人から24人へとやや増える。

 35年の都道府県別では、埼玉の38・2人が最多で、青森(36・9人)、茨城(36・1人)の順。埼玉は死者数の増え方が最も大きかった。

 国は、救急医療などでの医師不足を受け、08年から大学医学部の定員を増やして、医師増加政策を進めている。人口は今後減少するため、医師不足は解消へ向かうという見方もある。だが、湯地助教は「現行政策で医師不足は解消せず、医師の負担も変わらない」と話す。

 さらに、医師の高齢化も進み、35年には60歳以上の医師が14万1711人と10年の5万5375人の2・5倍になるという。【野田武

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