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予防接種の同時接種 

小児科医師のメーリングリストで、小児への複数予防接種の同時接種の可否が話題に上がっていた。この1、2年の間に、これまでの予防接種に加えて多数の予防接種が始まり、それらを適応となる短い時期にどのように打つかという問題が、現実問題として小児科の臨床現場に立ちはだかっている。欧米では、同時接種が一般的に行われている。

議論の発端は、某大学の研究者から、同時接種は控えるべきだという見解が出されたことのようだ。肺炎球菌と他の予防接種同時接種後に、死亡例があり、サイトカインという免疫系の反応物質の量を測ると、同時接種群でそれが高値となる、なので副作用の生じる可能性が高いから、同時接種をすべきではない、ということのようだ。

だが、この見解に対しては、批判が多い。その研究者のサイトカインについてのデータは、サンプル数が少なく、統計的な処理がされたいない。元来、サイトカインの高値を悪い指標と捉えるべきなのか、むしろ免疫反応が起きていることを表しているだけなのではないか。予防接種後の死亡例は、必ずしも予防接種のためである可能性が高いわけではない(因果関係が不明である)。・・・といったことだ。私も、同時接種肯定の議論に賛成だ。

東京都立小児総合医療センターの医師から、この問題に関連して興味深い発言があった。同センターは、東京都西部をカバーする小児医療の第三次救急医療機関で、重症例が多く集まるらしい。乳幼児期の細菌性髄膜炎の主要な原因菌である、インフルエンザ桿菌と肺炎球菌の予防接種が開始して以来、細菌性髄膜炎の症例が激減した、ということだ。予防接種の効果が上がって、予後の良くない、細菌性髄膜炎が減ったということは、とても良い知らせである。また、予防接種後の死亡例に限らず、来院時に不幸にして亡くなってしまったケースに対して、死因究明のための解剖(行政解剖)が余り行われないらしい。行政解剖の費用をカバーする公的予算がついていないためのようだ。予防接種後の死亡例については、徹底して死因究明を行う必要があるのではないだろうか。そうしないと、極めて少数の予防接種後死亡例のために、予防接種を躊躇する親御さんが出たり、行政が予防接種の中止をしたりすることになりかねない。

予防接種の同時接種によって、発熱等の頻度の比較的高い副反応は、「相加的」に増えるが、「相乗的」に増えることはない。さらに、予防接種によって得られる利益は計り知れぬほどに大きい。細菌性髄膜炎の悲惨な経過を知る者としては、インフルエンザ桿菌・肺炎球菌を始めとする新しい予防接種群を同時接種で積極的に打つように、親御さんに勧めようと改めて思った。

上記医療センターを始め、大学他の第三次救急医療機関で、今夜も寝ずに仕事をなさっている医師諸兄姉に改めて感謝の意を表明したい。一睡もできずに夜が白々と明けてくるくるのを、同じようにかって経験していた者として、本当にお疲れ様と申し上げたい。

コメント

因果関係の有無は不明

> 議論の発端は、某大学の研究者から、同時接種は控えるべきだという見解が出されたことのようだ。

見つけることができませんでした。

> だが、この見解に対しては、批判が多い。その研究者のサイトカインについてのデータは、サンプル数が少なく、統計的な処理がされていない。

統計的な処理がされていないと、それだけで論文が返戻になりそうな気もしますが。p<0.01とか言うやつですよね。

> 予防接種後の死亡例は、必ずしも予防接種のためである可能性が高いわけではない(因果関係が不明である)。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001jqmw-att/2r9852000001jqyw.pdf
等を見ると、{司法|行政|承諾}解剖が行われていても、因果関係の有無の判断は難しいようですね。(これは、小児科特有のことなのでしょうか?)

> 東京都立小児総合医療センターの医師から、(中略)また、予防接種後の死亡例に限らず、来院時に不幸にして亡くなってしまったケースに対して、死因究明のための解剖(行政解剖)が余り行われないらしい。

東京都監察医務院は、23区内だけなのですね。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/a_kansatsu.html
当院は昭和23年3月に開院して以来、死体解剖保存法第8条に基づいて東京都23区内で発生したすべての不自然死(死因不明の急性死や事故死など)について、死体の検案及び解剖を行いその死因を明らかにする仕事をしています。

Mikeさん

この議論は、小児科医のクローズドのMLで行われていたものです。大勢は、同時接種を勧める方向で、日本小児科学会もその線で進めているようです。

同時接種に待ったをかけているという研究者は、むしろ例外です。同時接種によるデメリットは常に念頭に置かなくてはならないと思いますが、現在のところメリットの方が多そうです。

現場では、同時接種ですと手間が大変なのですが、お子さんにとっては、来院する回数が少なくて済みますし、限られた期間内に多くの予防接種を済ませるためには、同時接種が必須になります。

確かに、解剖をしても死因を特定できるとは限りませんが、出来る限りの調査が必要です。死因が予防接種のためではないのに、時間的関連だけから予防接種を死因としてしまい、そうした症例が集積しますと、行政は予防接種を中止せざるをえなくなります。すると、予防接種をうけられぬためにデメリットを被るお子さんがたくさん出現するということになってしまいます。

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