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河野太郎氏の医療批判を批判する 

Mike氏のコメントで紹介された、河野太郎氏の「ごまめの歯ぎしり」と題するブログをこのところ読んでいる。立て続けに医療に関するポストがあった。こちら

彼は、医療には無駄遣いがある、それを削減せよという発想のようだ。ただ、その根拠は、別な研究者が一地方都市の医療費を検討したデータ等、日本の医療政策を論じるにはあまりに限られたデータにだけ依っている。

河野氏の大きな主張の一つは、保険病名という出鱈目な病名が横行しているのがけしからん、ということだ。例として、統合失調症という病名が多すぎる。現実には、認知症の患者に抗精神病薬を投与する際に、統合失調症という病名が必要になることを挙げている。実際のところ、「適応症」に入っていない病気で、薬剤を投与する場合、保険での診療報酬請求にそのためだけの病名をつけることは、過去には行われてきたのは事実だ。だが、それも査定が厳しくなり、医療現場では苦慮するケースが多い。いわば、医療の現実に、行政側が追い付いていないために生じた問題なのだ。その事情を河野氏はご存じの様子だが、彼の主張はその行政の不作為を責め、改善しようと言うのではなく、医療現場が保険病名を用いることがおかしいという論調だ。さらに、統合失調症の患者実数は、この診療報酬データから得られる数よりも、大幅に少ないのではないかと主張される。しかし、実際のところ、病状の軽重はあるにしても、統合失調症の患者は、大まかに言って、100人に1人程度と昔から言われている。現在もそれは変わらないはずだ。統合失調症という病気の頻度はかように高いのだ。河野氏は、そうした事実をご存じなのだろうか。保険病名から医療現場を批判しても何も始まらない。

慢性疾患に対して、予防医学的な対応を取った群では、そうでない群に比べて、必要となる医療費が下がる、(だから予防医学を推進せよ)ということも、河野氏は述べている。が、これには、両群が同じバックグラウンドの集団であるのか、また統計処理上の問題はないのか、という厳密な検証を要する問題がある。生活習慣病というと、患者は生活習慣に問題があったから発症したと非難されそうだが、ことはそれほど単純ではない。生活環境、それに遺伝的な負荷を考慮に入れて、厳密に判断しないといけない。また、人は、歳をとり、やがて病を必ず得る。そこで医療の世話に必ずなる。そこで、医療介護のコストが発生する。その額が、生涯で医療介護にかかる費用の大部分を占める。予防医学が、医療費削減に万能ではない。

日本の医療費の高さについても、OECDのデータは、日本の医療費の内、歯科の自費分・介護費等々を除いたものだから、実質日本の医療費は、十分高くなっているとも述べている。OECDのデータがいい加減だという、驚くべき発言である。OECDのデータを見ると、医療費を厳密に定義していることが分かる。このような国際機関が、各項目の定義を行わずに統計を取るとはありえない話だ。河野氏は、日本の医療費が十分高いということを言わんとするために、このようなOECDのデータを、その厳密性を知ってか知らずか(たぶん知っていての発言なのだろう)、貶めている。政治家として恥ずべきことだ。日本の対GDP比医療費も、ようやく9%を超えてきたが、これは世界最高の高齢化社会での医療費としては、激安である。

また、4月24のポストでは、ある地方自治体の診療報酬請求書(レセプト)と「領収書」を突き合わせて点検したら、1%の点検だけでも、100万円の「還付」があった、と記されている。この内容がイマイチ分からないのだが、領収書は、レセプトに基づき発行されるものだし、行政が領収書を突き合わせることなど不可能なはずだ。ここで彼の言う領収書は、処方箋ないし薬局からの請求書の間違いではないだろうか。レセプトの電算化が行われ、レセプトと、処方箋内容の突合せが行政側で容易に行えるようになった。で、この突合せで「還付」というか、医療機関が強制的に、投薬に関わる診療報酬をすべて返金させられる。その最大の理由が、病名落ちと、適応症に合わない病名(上記の保険病名)をつけたことによる。高額な薬代、処方料等々は、医療機関がなんら直接利益を得たわけではないのに、すべて返還させられる(これについては最近記した)。こうした事情を知ってか知らずか、この「突合せ」を徹底して行えば、医療の「無駄」を省けるとでも言わんばかりである。

こうした方が、医療政策を策定し法律化する政治家なのかと思うと、暗澹たる気分になる。医療機関を悪者にして片付くような問題ではない。国民に、負担を増やさざるを得ないこと、サービスは低下させざるを得ないことを、正直に述べるべきだろう。そして、現在の国の借金を積み上げてきたのは、自民党政権時代の公共事業のコストが主たるものだったこと、も。

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