FC2ブログ

第三者医療事故調のアドバルーン 

この記事にある通り、先日、第三者による医療事故調を設置して、予期せぬ以上事故による死亡例の原因究明を行うという新聞記事がでかでかと載っていた。こともあろうに、その第三者医療事故調の候補が、かの「日本医療機能評価機構」であるらしい。

医療事故調は、調査結果を捜査機関に渡すことはないとしているが、ご遺族には手渡されるはずで、それによって医療訴訟が提起される可能性は十分ある。

それにしても、かの「日本医療機能評価機構」が出てくるとは・・・。この天下り団体は、昨日もラジオで広告を流していた。「お産の時に」脳性まひになったお子さんとご家族を救う、らしい。脳性まひの原因の大多数は胎内での問題、遺伝的な問題であることが分かってきているのに、である。

予期せぬ死亡事故とは一体何なのか?ちょっと頭に上がったのが、精神科における患者の自殺である。それがすべて予期せぬ死亡事故と扱われるとなると、精神科医療は成立しがたくなる。また、救急医療での重篤な外傷、高齢者の急性疾患等々、ハイリスクな症例では、「予期せぬ」死亡は頻繁に生じうる。医療には絶対はない。確率的な事象で、患者の死は予期せぬ形で起こりうる。

個々のケースで、死亡に至った経過に徹底した医学的な検討を加えることは重要だろう。が、それは「日本医療機能評価機構」のような天下り団体が行うべきことではない。彼らには行えない。

あの新聞記事は、厚労省が出したものではないとのこの室長の話だが、彼女が担当したものではないとしても、やはり厚労省しか出所はあり得ない。よくある、アドバルーンを上げて、世論の反応を見るというやり方だ。行政は、この手法で世論を誘導し、自らの政策を実現してきた歴史がある。さて、このアドバルーンをそのまま認めると、急性期医療が成立しがたくなるわけだが・・・。



以下、MRICより引用~~~


厚労省・大坪室長「予期せぬ死亡届け出義務 全病院・診療所に拡大」は今は「厚労省方針」ではない

井上法律事務所
弁護士 井上 清成

2013年5月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
---------------------------------------------------------------------
1. 5月13日(月)新聞各紙に「厚労省方針」「厚労省決定」と載ったけれども
5月15日(水)、日本医療法人協会は、日野会長・小田原医療安全調査部会長、協会事務局員と筆者(協会医療安全調査部会委員)で、厚生労働省医政局を訪問した。対応したのは、この4月に医療安全推進室長に就任したばかりの大坪寛子氏と同室員である。当初は約束してくれてはいたのだが、残念ながら吉岡総務課長は不在であり、急用が生じてしまったらしい。
もともと、訪問の目的は、4月18日に厚労省が提示した医療事故調の取りまとめ案に対して、この1月と2月に成立した四病協合意と日病協合意といった病院団体の諸合意をもっと尊重して欲しいと申し述べ、同協会としては、医療事故調に関して「医療法改正」をするのは現状では反対であると表明することにあった。当然、所期の目的は達したものの、話題の中心は、丁度その2日前の5月13日(月)に新聞各紙が全国的に派手に報じた「予期せぬ死亡届出義務 全病院・診療所に拡大 厚労省方針」(2013年5月13日・東京新聞朝刊より)などといった記事の内容に移って行く。
そうしたところ、結局、大坪室長は、それらの記事(特に、厚労省方針とか厚労省決定といったところ)を明確に否定したのである。現に、大坪室長自身が新聞数紙に対し、記事に関して既に異議を述べてあるとのことであった。

2. 厚労省は今は検討部会の議論をまとめてみただけ
たとえば、前出の東京新聞は、冒頭で「厚生労働省は医療事故の実態把握のため、国内すべての病院・診療所約十七万施設を対象に、診療行為に絡んで起きた予期せぬ患者死亡事例の第三者機関への届け出と、院内調査を義務付ける方針を決めた。関係者が十二日、明らかにした。」としている。他の各紙もほとんど同じ内容の記事であったし、全国各地の地方紙にも派手に掲載された。
ところが、大坪室長によると、厚労省は自ら立案を決めたことはなく、ただ検討部会の議論をまとめてみていただけとのことである。現時点においては、検討部会(正式名称は、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」)の結論待ちという立場であった。
つまり、5月29日(水)午後1時に開催される次回の検討部会が、医療界としての正念場ということであろう。ここ数年にわたって議論されて来た医療事故調問題も、いよいよクライマックスを迎えるらしい。医師の検討部会構成員のみならず、医療界全体がいよいよ大きな決断を迫られる。

3. 医療法改正は不要、医療法施行規則の改正だけで必要十分
末尾に、医療法改正が必要な法律所管事項と、医療法施行規則改正で足りる省令所管事項との対比一覧表を示す( http://expres.umin.jp/mric/mric.vol116.doc )。これは、日本医療法人協会で法的観点から検討し、5月15日の厚労省訪問時に提出した資料の一つである。
四病協や日病協の病院団体合意の範囲ならば、医療法の改正は要らない。ところが、厚労省取りまとめ案のように、第三者機関を創設したり、予期せぬ死亡届出義務化をしたりするならば、確かに医療法改正は必要である。
大坪室長は、医療の見識のみならず、法的見識も十分に有しており、この点を的確に理解していた。大坪室長の意図するところは、「これまでも病院の先生方が十分にご努力されていることは理解しているが、患者や社会に対しては見えにくいところもある」「医療者の努力が見える形へ」(5月10日金曜日メディファクスより)といったところにあるらしい。これも一つの識見だと評価しえよう。
しかしながら、もしも、刑法の業務上過失致死罪の見直しや、民法の責任制限(軽過失免責)への道筋に何ら言及せずに、ただ医療法改正をしてしまったとしたら、少なくとも近い将来には二度と再び、そのような議論は「決着済み」として蒸し返せなくなってしまうかも知れない。日本医療法人協会の提言は、今はまず医療のプロセスの内のことだけを、再発防止・医療安全のために、自律的に医療者だけできちんと事故調査をしてしまおうというものである。だからこそ、医療法施行規則の改正で足りてしまう。そして、その後5年くらいで見直して、医療法改正をして、刑法の業務上過失致死罪等を排除しようという構想である。すべての医療者と医療界には、これらの点を十分に考慮して、重大な政策決断を行って欲しいと思う。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/2889-a17a6e67