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K先生 

大学卒業後、こちら北関東の大学の附属病院で研修をさせて頂いた。学生時代、本の上で勉強していたことと、医師になって実際に患児に接する臨床とは大きな違いがある。患児一人一人が、それなりの人生と、病気の経過とを負って、入院してくるのだ。新しい発見と、出会いの連続だった。

その初期研修で先輩の方々によく教えて頂いた。脳波所見の取り方を、一対一で丁寧に教えてくださったのが、K先生だった。当時40歳前後でいらっしたか、小柄でいつも笑顔を絶やさぬ優しい方であった。外来が終わり、静かになった外来の一室に、予め提示され、自分なりに所見をとった脳波を持って行き、K先生に所見の添削を受けるのだ。週に一度程度、半年ほど続いただろうか、今考えると、お忙しい中、よく教えてくださったと思う。その後、神経を専門にすることはなかったが、脳波を一応読めるようになったのは先生のおかげだった。

K先生は、私が大学を去るのと前後して、そう遠くない公的な施設に移られたことは知っていた。そちらでご活躍なさっているのだろうと思いつつ、ご無沙汰を続けてしまっていた。先日、ネットで彼女の名前を検索し、重度身体障碍者の施設の施設長を、さほど遠くない施設でなさっていることを知った。理事長もなさっておられるので、自ら設立なさったのだろう。昭和の終わりに設立された施設とあるので、公的な施設に移ってから、それほど時間の経たないうちに、ご自身で開設なさったのだろうか。施設名、それに施設の運営方針などから、カソリックの信仰によって立つ施設のようだ。もう80歳前後になっておられるのではないだろうか。

私の医師人生を思い返すと、彼女のように親切にご指導くださった先生方のことが何人となく思い起こされる。人としての繋がりの上に、技術や考え方が伝えられるという消息なのだろうと改めて思った。

ここで余計なことを一言記すが、現在、官僚が進めている、医師を統括し、人事を掌握しようとする試みは、失敗に帰することだろう。官僚が作ったそうした制度には、魂が入らないというべきか、先輩医師との人格的な繋がりが期待できないからだ。旧態依然とした医局制度を持ち上げる積りはないが、臨床医学の伝承には、人から人へ手渡すように伝えられるものがあるのだと思う。官僚には、それを制度化することはできまい。

K先生がお元気なうちに一度お目にかかりに行きたいものだ。

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