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厚生労働省の恣意的行政 

昨年の診療報酬改訂で、リハビリに「日数制限」が加えられた。リハビリをある程度行ったものは、回復の可能性がないとして、リハビリを受けられなくしたものだ。

リハビリは、失った身体機能を元に戻す以外に、残された身体機能をそれ以上失わないようにする意味がある。高齢者の脳血管障害後遺症等には、後者の意義は大きい。

しかし、厚生労働省の官僚は、問答無用に後者の目的のリハビリを受ける機会を多くの患者から奪った。

その恣意的で非道な行政を敢然と批判し続けている方がいる。元東京大学免疫学教授の多田富雄氏だ。彼は、自ら脳梗塞の後遺症を負いながら、このリハビリ制限という悪しき行政と戦っている。彼が、2006年11月号の現代思想において、この恣意的行政が鶴見和子女史の死期を早めたとして、強く批判している。多田氏は、小泉前首相と、リハビリの「専門家」とを批判しているが、実質は、厚生労働省の担当官僚への批判である。

厚生労働省は、リハビリ制限を撤廃する方向で、検討中だと言う。朝令暮改の行政はいい加減にして欲しい。その度に、患者さんと医療に携わる人間は右往左往させられる。人の命を左右するこうした恣意的な決定をした官僚には、そうしたことを繰り返さぬために、後になってでも、責任を是非取ってもらいたい。

以下、多田富雄氏の文章を引用する。

以下引用~~~

犠牲者の第一号になったのが、不幸にも社会学者の鶴見和子さんであった。例にあげるのも痛ましくてはばかられるが、11年前に脳溢血で倒れられてからも、リハビリによっ て、自立して精力的に文筆活動をしていたが、今年になってリハビリ打ち切りが宣告された。回数が減らされた後、間もなく起きあがれなくなり、7月30日に亡くなった。その 前に彼女が詠んだ歌に、

政人(まつりごとびと)いざ言(こと)とわん老人(おいびと)われ 生きぬく道のありやなしやと

寝たきりの予兆なるかな ベッドより 起きて上がることのできずなりたり

直接の死因は癌であっても、リハビリ打ち切りが死を早めたのは確かである。小泉さんがこの碩学を殺したと、私は思っている。病床で書いた「老人リハビリテーションの意味」 というエッセイには、維持期のリハビリがどんなに生きるために必要かが、切々と語られている。そして今回の改定は、老人に対する死刑宣告だと、いつになく激しい口調で糾弾 している。リハビリの「専門家」といわれた人はこの文を読んで欲しい。あなたの専門家意識が打ち砕かれることだろう。

もうこれ以上語るまい。このような老人を救うミッションが、リハビリ医療には厳然としてあるはずである。またそれを忘れた専門家意識が、鶴見さんの死を早めたことを糾弾さ れるであろう。

コメント

鶴見さん、亡くなっていたのですか・・・ファンだったのに。しかも、そんな亡くなり方なのですか。
交通事故のために記憶を奪われ、てんかん持ちになった私の父親なんか、リハビリ医療を奪われたらきつい存在なんです。高度経済成長を支えてきた人たちに、こういう仕打ちはないと思います。

結局、大腸がんで亡くなられたようですが、リハビリ制限で運動機能ががたっと落ちたことが死期を早めたということだった様子です。

厚生労働省、否現政権は、極言すれば、老人のホロコーストをする積りです。医療を崩壊させるということは、高齢者、持たざるものにシビアな結果を齎しますからね。後世が、この施策をどのように評価するでしょうか・・・。

鶴見和子さんの白鳥の歌とも言える著作が、1月に刊行されたようです。下記の2007年1月の新刊を見てみてください。(別な医療系BBSから引いてきました。)

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/index_2.html

二つの遺言と題する講演も載っていますね。なかなか味わい深い講演ですね。

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