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「一定の病気」の診断書は、選択肢 

今春の道交法改正によって、「一定の病気にかかわる運転者対策」が、施行された。内容は、こちらでも過去に取り上げた。ここ

「一定の病気」の患者が、免許を取得する、ないし更新する場合に、地域の公安委員会に、「診断書」を提出することが求められる。

その診断書の書式は、氏名・生年月日・住所のほかに、病名と総合所見を記すようになっている。総合所見は、現病歴、現症、重症度、治療経過、治療状況を、数行で記す。

ついで、現時点の病状についての意見現時点での病状を踏まえた今後の見通しについての意見を記すようになっている。・・・が、両者ともに、既定の「選択肢」から選ぶようになっており、意見を記すことはできない

現時点の病状に関しては、残遺症状がないか、軽微である、または存在するが、運転に差支えないという選択肢であれば、運転は許可される。病状を踏まえると、安全運転に必要な能力を欠いているという選択肢の場合は、免許の発行、更新は、不可となるか、保留となるようだ。

安全運転が可能と判断されても、今後の見通しについての選択肢がある。安全な運転に必要な能力を欠くことになると思われる症状が、再発する恐れがない、またはある年数(これは医師が記載する)の間は、症状が再発する恐れはないと認められる場合は、免許が発行、更新されるようだ。

だが、一年以内に再発するおそれが否定できない、またはおそれが認められる場合は、免許の発行、更新は不可となるか、保留されるようだ。


現時点の症状についての判断も、個々の例では難しいだろう。特に、安全運転ができる、できないと、断言するのは難しい。

さらに問題なのが、今後の見通しについての判断だ。再発するおそれがない、などとは、全知全能の存在以外言えない。ましてや、ある一定期間再発するおそれがないと、一体誰が判断できるのだろうか

医学的な判断は、すべからく、確率的なものになる。「決して・・・ではない」、とか「絶対・・・である」とは言い切れぬのが、医学的な判断の特徴だ。このように断言する(既定の選択肢から選ぶこと)ことを、医師が強制されるとしたら、「症状再発のおそれがない、とは言えぬ」という選択肢を選ぶことしかできないのではあるまいか。

この「診断書」もどきの書式を作った役人は、物事がなにも分かっていない。これでは、医療現場に混乱を生じさせ、さらに患者には不利な「診断書」を医師は出さざるを得なくなる。その場合、医師患者関係が悪化する可能性が大きい。運転免許は生活上必須のことも多い。そうした患者は、病名をかくす、ないし治療自体を放棄してしまう可能性がある。後者の場合、交通安全対策とは逆の方向に働くのではないか。

さらに、診断書に病名も記すことになっているが、患者のプライバシーはしっかり守られるのだろうか。犯罪を犯したわけではないのに、病名を公安委員会に届け出るのは、人権侵害に当たらないのだろうか。

以前にも記したが、この「一定の病気」にかかる国民の人口は、数百万のオーダーになるはずだ。この制度によって、巻き起こされる混乱は、大きくなることだろう。このように硬直的な制度を作った役人の責任は、問われるべきだ。

コメント

やはりと言うか、案の定というか、この診断書書式の作成には、医師は関与していないそうです。

行政のやることはこれだからなぁ・・・。

てんかん患者などの交通事故を想定していると思います。事故のハイリスク患者に免許を与えない、更新させないという発想から、技術革新によって新たな段階に移ることが可能な時代になっています。(部分的)自動運転の導入です。すなわち例えばてんかん患者には、医師の診断書があれば、衝突防止システム(現時点ではスバル車のアイサイトが最良、次いでVolvoのV40)をつけるための費用を一部補助し、衝突防止システム導入車の限定免許とすることです。この策なら医師患者関係の悪化もないでしょう。

  • [2013/09/04 16:49]
  • URL |
  • 通りすがりの勤務医
  • [ 編集 ]
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突防止システム(現時点ではスバル車のアイサイトが最良、次いでVolvoのV40)をつけるための費用を一部補助し、衝突防止システム導入車の限定免許とすることです・・・というのは、どこかの地域で実際に行われているのでしょうか。北関東の当地では、そのような動きは全くありません。

診断書の書式は、現時点、または一定期間を区切って、「症状の再発がない」ことを医師に診断することを求めるものです。実際上、それは不可能なことです。

で、医療現場には、大きな混乱が生じています。

免許交付に際するこの診断書提出の対象疾患は、てんかんだけではありません。向精神薬、精神安定剤、抗ヒスタミン剤等、眠気を生じうる薬剤を服用する疾患すべてが対象になります。統合失調症だけでも全人口の1%と言われていますから、対象者はかなりの数に上るはずです。

その自動運転の精度、安全性は、確かなものなのでしょうか。それを搭載した車に乗れば、安全は確保されるというデータはあるのですか。そのシステムを、上記の対象疾患患者すべてに義務付けるという動きがあるのでしょうか。

今のところ、事故が起きた際の責任を、行政以外に取らせるための対応を、行政がしているとしか、私には思えません。

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