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『知覚から喜びへ』 

PNASの最近号で面白い総説を見つけた。

Robert J. Zatorre et al:
From perception to pleasure
PNAS Jun 18 2013 vol110 Suppl 2 10430-10437

という論文。音楽を聴く際、音楽を知覚し、それが喜びを生むまでのプロセスを、神経科学的に論じた内容だ。

抄訳の抄訳程度になるが、ざっと紹介しよう。そして、その内容に対する感想などを記したい。

『音楽は、人間社会にあって、先史時代から存在し続けてきた。著者らは、4万年前に用いられていたと思われる、ハゲタカの骨でできた横笛を、その例証として紹介している。音楽がそうして存在した理由は、音楽が、感情の表出と調節に関わり、喜びをもたらしてきたからだろう、と言う。音のパターンの認識から、喜びと言う反応がどのように生じるのかについて、認識神経科学的知見を提示しよう。

まず、著者等は、音のパターンを変換し、その記憶を保持する、大脳皮質聴覚領野の回路が存在することをを見出した。側頭葉聴覚領野と、前頭葉の間の皮質間回路は、作業記憶における音楽情報の記憶を維持するし、さらに音楽での構造的な規則性を認識することうで、重要な働きをしている。それらの機能は、音楽を聴く際の予測を生み出す。

大脳辺縁系が、音楽を聴く際の、報償の感情、動機付け、そして喜びに関わるという知見がある。このドーパミン作動系が、音楽における喜びを生じさせている。音楽を聴く際に生まれる報償の感情は、nucleus accumbens(側座核)の活動性により知ることができる。nucleus accumbensが、機能的に側頭葉聴覚領野と、前頭葉の回路と強く接続することによって、報償の感情が強く生じる。著者等は、音楽を聴く喜びは、二つの系の相互作用によって生まれるのではないかと考えている。その系とは、一つは、音のパターンから予測と期待を生じさせる大脳皮質の回路であり、もう一つは、報償の感情と、価値の付与に関わる皮質下の系である。』

音楽は、聴覚領野と前頭葉両者が関連して分析され、記憶され、その結果、記憶に基づいて、予測する作業が行われる。一方、大脳辺縁系という皮質下の領域で、その予測に基づき報償の感情が生まれる。それが音楽を聴く喜びだ、ということなのだろうか。

予測と言う作業が、音楽を聴く際に常に行われる、そこには過去に積み重ねられた音楽の記憶が生かされているということだろう。

著者等は、この論文中でも言及しているのだが、音楽のこうした特性は、言語のそれと似ている、とも語っている。聴覚野と前頭葉を結ぶ腹側路が、言語でも同じ予測の機能を持っているというのだ。ここで、私はCW受信における予測という機能を思い起こした。これは、私が何の科学的、心理学的根拠もなく、自分の意識のなかで進行する現象を記載したに過ぎないが、見事にこの総説著者の見解と一致する。というか、認識神経科学的な論拠を与えられたといって良いかもしれない。その予測が、喜びを生み出す、という図式も、考えていた通りである。CWの先人が、CWを音楽にしばしば例えてきた。それは、単なる思い付きの比喩ではなく、こうしたCW受信の背景があって、音楽と内的な連関があってのことだったのだろう。

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