「不正」請求という誤報 

この手の問題は、開業していた頃から頭痛の種だった。

膨大かつ複雑な診療報酬体系に沿う形で診療を行うことが、医療機関側に要求されるが、その診療報酬体系に大きな問題がある。まとめれば、

〇診療報酬制度が複雑すぎる。
〇解釈でいかようにも取れる条項がある。その解釈は、行政の意向次第。恣意的。
〇診療報酬制度をあまりに頻繁に変える。

ということになる。

診療報酬請求の誤りの大部分は、不正ではない。過誤にしか過ぎない。診療所レベルで言えば、患者さんの保険証の問題・・・更新されたものを持参しないとか、保険自体が変わったとか・・・であることが圧倒的に多い。病院であっても、おそらく同じだろう。それを不正と呼ぶのは、誤りである。マスコミは、意図的に不正請求という用語を乱用する。記事をアピールするための意図的な誤報だ。

不正請求を大々的かつ意図的に行っている業界がある。が、どういうわけか、そちらは問題にされぬことが多い。どうも業界団体が政治家を強力に支援していることと関係しているらしい。

他の業界はさておき、この不正請求という言葉が、医療従事者のやる気をどれだけ削いでいることか。

川渕教授は医師ではなく、行政畑出身の方だと思うが、医療現場をあまりに知らない。医療現場は、この複雑怪奇な診療報酬体系に翻弄されている。診療報酬請求書が電子化されてから、かなり機械的に、請求が査定されるようになった。彼の言う合理化である。しかし、解釈の問題、さらに医療そのものの複雑性を、機械的に処理することはできない。彼のような人物が、有識者として、現実無視の意見を述べているようでは、医療はますます混迷させられる。また、審査が甘いと言うこともない。行政が医療機関に個別指導、監査を行うことが常態としてある。その指導内容は、往々にして重箱の隅をつつく類のものなのだ。

率直に言えば、行政は、医療費を削減することを至上命題に、診療報酬を猫の目のように改変する。医療費の無駄を省くことは確かに大切だが、ピントが外れた議論であることが多い。ぎりぎりのところで経営している医療機関としては、解釈上収入が増える選択肢を取らざるを得なくなる。しかし、事後になって、「医療法を無視した」解釈が行政から示され、診療報酬を返還する羽目になる。

医療機関は、そうしたことにならぬように、医療内容を自ら委縮する方向に向かう。結局、この壮大な無駄の体系のしりぬぐいをさせられるのは、患者たる国民ということになる。


以下、引用~~~

後絶たぬ、診療報酬の不正請求 基準曖昧で審査甘く

記事:神奈川新聞
14/09/30

 診療報酬をめぐる不正・過大請求が後を絶たない。JA県厚生連伊勢原協同病院(伊勢原市)で疑いが明らかになった「検体検査管理加算」の不正請求も、過去に他の医療機関で発覚している。一方、不正が明るみに出るのはわずかとみられる。医療関係者は、届け出基準の曖昧さや厚生労働省の審査の甘さを指摘する。

 同加算をめぐっては、2005年に滋賀県内の病院、12年には宮城県内の病院でそれぞれ1千万円単位の不正請求が発覚。それぞれ、臨床検査の担当医が手術補助などの業務を受け持っていたり、週1回の外来診療に当たっていたりしていた。県内でも09年、川崎市内の病院で数百万円の不正請求が明らかになっている。

 静岡県内の病院は今年7月、同加算4の請求をめぐり、臨床検査医の「常勤」の基準を満たしていないと厚労省から指摘を受けた。同院によると、6月末で請求資格を取り下げ、13年4月からの本来の資格との差額分の診療報酬を患者の自己負担分を含めて返還する方針だ。

 同院は常勤医に必要な勤務時間について、医療法に基づき「週32時間以上」と解釈。だが厚労省は「週5日40時間」を原則とし、患者1人当たりの診療点数が月400点(4千円)低い同加算2に当たると指摘したという。同院関係者は「医療法に準じるのが当然だと思っていた。同様の解釈をしている病院は多いのではないか」と話した。

 ただ、不正や過大請求が発覚するケースはまれだ。

 同加算など特別な診療行為ごとに算定される特掲診療料を請求できる資格は、施設規模に応じた医療機関の届け出に基づき、厚労省が審査して決定される。ある病院関係者は「審査はほぼスルーと言っていい」と打ち明ける。

 なぜか。「病院の性善説が根底にある」。別の医療関係者が説明する。基準を満たすため、実労働がなくとも名義を使うためだけに医師を在籍させている病院もあるという。「(診療所を除いた)病院だけでも1万軒近くあり、厚労省はチェックを徹底しようにも、手が回らないはず」とみるこの関係者は、「結果的に不正を野放しにしている、と言われても仕方がない」と国を批判した。

 東京医科歯科大の川渕孝一教授(医療経済学)は「日本のチェック体制はアナログで、先進国の中で非常に遅れている。制度設計に明らかな欠陥がある」と指摘する。診療報酬の請求内容を調べる厚労省の指導医療官ら指導・監査担当者が、慢性的に不足しているのが実態という。医療機関から市町村や健康保険組合に請求されるレセプト(診療報酬明細書)は年間十数億枚に上るとされ、「レセプトと院内体制の二重チェックで精いっぱいだ」と強調する。

 不正請求を防げなければ、患者の自己負担が増えるだけでなく、不必要な医療費の増大を招く。川渕教授は抜本的な不正請求対策として、「診療報酬の管理を全面的に電子化してシステム監査に移行し、(医師の配置の把握を容易にするため)専門医の登録制もさらに進めるべきだ」と提言している。


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