老朽原発をさらに20年稼働するリスク 

田中三彦著「原発はなぜ危険か」(岩波新書)は、原発建造に直接かかわってきたエンジニアならではの好著だ。その中に、原発の老朽化問題についての記載がある。

それによると、深刻事故につながる冷却材喪失事故が、通常、配管破断から始まると想定されているが、より深刻な事態がある。それは、原子炉圧力容器自体の瞬間的な破壊、脆性破壊である。

脆性破壊による深刻事故について、日本原子力研究所・構造強度研究室室長であった藤村理人史が、雑誌「原子力工業」1986年第32巻第10号で、次のように述べている。

もし圧力容器が破局的な破壊をしたならば、その鋼材の破片はミサイルとなって瞬時に飛び散ることになるので、格納容器の数十mmの壁は難なく貫通してしまうであろう。格納容器はまったく役立たず、ECCSなど緊急冷却装置なども無力化する。炉心は露出し、それこそ数万人の死亡者を出す大災害へと発展してしまう。

この脆性破壊を起こす大きな要因は、中性子照射が長年にわたって続くことにある。その程度を表す一つの指標が、NDT温度である。Nil Ductility Transition Temperatureの略であり、金属が延びの見られぬ破壊に移る限界の温度である。NDT以下でその金属材料を用いることは脆性破壊を生じえることから極めて危険であるといわれている。上記著作が記された1990年時点で、多くの原発で、当初マイナス16からマイナス50度であったNDTが、プラス30から60度にまで上昇していることが判明している。このニュースに取り上げられている、高浜1号機等がそれに含まれている。その後、原発が稼働され続け、NDTはさらに上昇している可能性が高い。

脆性破壊による爆発が生じると、壊滅的な汚染を生じることになる。福島第一では、まがりなりにも原子核分裂反応は停止され、圧力容器の爆発は免れたこと、さらに放射性物質の多くが海側に流れたことで、あの規模の被害で「収まっている」・・・それでも甚大な被害であるが。この脆性破壊による原発の爆発は、今回の原発事故の規模をはるかに超える。さらに、高浜の近傍には9機ほどの原発が存在し、高浜原発で脆性破壊による爆発が起きると、瞬時にそれらの原発もコントロール不能になる。その結果は、恐らく日本全土が汚染され、住めなくなるということだ。

これほどのリスクがあるのに拘わらず、そしてそのリスクが仮定の話ではなく、現実に差し迫っているにも関わらず、高浜原発を再稼働するのは無責任である。国を真に愛する者が考えることではない。


以下、引用~~~


稼働40年の高浜1・2号機 関電、20年延長を検討

2014年11月13日11時44分 朝日新聞デジタル版

 関西電力が、運転開始から約40年たった高浜原発(福井県高浜町)1、2号機について、最大20年間、運転を延長する検討に入った。原子炉などの耐久性などを調べる特別点検を実施するため、原発メーカーなどと調整を始めており、来春にも運転の延長を国に申請する方向だ。年内にも最終判断する。

 経済産業省は、運転開始から40年を迎える国内の原発7基について、廃炉か、運転延長かを判断するよう電力会社に求めているが、態度を明らかにしたところはない。

 高浜原発は1号機が1974年、2号機が75年の運転開始で、出力は各82・6万キロワット。同じく廃炉かどうかの判断を求められている美浜原発(福井県美浜町)1号機(出力34万キロワット)、2号機(同50万キロワット)より出力が大きく、動かせば収支を改善させる効果も大きい。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/3348-e3163179