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読売新聞の救急医療に関する記事 

あるサイトで見つけた読売新聞の論説記事。切迫感も何もなく、医療現場に負担をさらに押し付けようとする、厚生労働省の意向を汲んだ記事としか読めない。

批判的に(笑)、ご紹介したい。こんなことはもう書いていても、無力感に囚われるだけなのだが・・・。

以下引用とコメント~~~

減少する救急病院
深刻な勤務医不足 実情に沿った診療体制に
 全国の救急病院(救急告示施設)が過去5年間で約1割減少し、4644施設になっていることが本紙の調査で分かった。(医療情報部・鈴木敦秋)

 救急病院が1割も減ったという現象は、一見ショッキングに見える。しかし、数の変化だけにとらわれるべきではない。救急病院の内実は患者には見えにくく、看板倒れのような病院も放置されてきたからだ。今回の調査結果を、患者にも医師にも有益な体制づくりを進めるきっかけにすべきだろう。

 救急医療の窮状を象徴する診療科の一つが小児科だ。

 「これ以上、医師を殺さないで」。14日の東京地裁。東京都中野区の病院で、激務のためにうつ病を患い自殺した小児科部長代行・中原利郎さん(当時44歳)が「労災」認定されたことを受け、妻(51)は切々と訴えた。

 夜間に救急施設を訪れる患者の半数は子どもだ。当直の小児科医が診察に追われ、翌日もそのまま勤務するという状態が続いた結果、疲労した勤務医が病院を離れ、残った医師がさらに過酷な勤務に直面する事態となっている。

このような連続過重労働は、私が勤務医をしている頃から当たり前のように行われていた。当直に入る前の日も、当直明けも通常勤務。疲弊した医師が第一線の医療機関を去る医療崩壊のおき始める以前から、このような勤務が常態化していた。それを、何で今さら!というのが率直な感想だ。

 この病院では、6人の常勤医が3年間で半分になり、中原さんは1999年に自殺する前の数か月、最高で月8回の当直をこなしていた。

 これは小児科だけの問題ではない。2004年度から始まった医師臨床研修の必修化で、約半数の研修医が大学病院から市中の大型病院に移ったため、人手不足となった大学病院が、派遣先の中規模病院から医師を引きあげ、残った勤務医がより厳しい労働条件下で救急を担わざるを得ないケースがあちこちで出現している。とりわけ地方では深刻な状況だ。

 さらに、医療事故のリスクの高まりは、勤務医の意欲の低下を招き、勤務医から開業医への転身も増えている。ここ数年は、年間約6000もの診療所が開業する“開業ラッシュ”が続いている。

 どうすればいいのか――。

 「地域の実情にあった救急システムの構築が急務だ。医師や機能の集約化は解決策の一つ」と、医療提供体制に詳しい東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授(医療経済学)は指摘する。現在は各病院に医師が薄く広く配置されており、診療体制に余裕がない病院が多い。このため、拠点となる病院の医師数を増やし、1人にかかる当直などの負担を軽減するというものだ。

集約化が、まるで問題を解決するかのように言われているが、それは幻想だ。医療を受ける側からすると;医師を集約するということは、患者さんにとりアクセスが悪くなることを意味する。それを受け入れてもらえるのか。僻地などで、実際上、問題はないのか。医師の側からすると;たとえ集約化されたとしても、二次・三次救急医療機関では、重症者を診ることになり、入院患者の夜間急変にも対応することになる。小児科で言えば、新生児まで対応するとなると、少なくとも15名以上の体制が必要となる。さらに、カバーする医療圏が拡大するから、仕事は多忙を極める。これが一体可能なのかどうか。さらに、医師の負担を本当に減らせるのか。

机上の議論ではなく、実際に示して欲しいものだ。


小児科医数は足りている、偏在しているだけだというドグマが、厚生労働省のでっち上げであることは、以前のエントリーに記した。小児科医は足りないのだ。小児科が不採算部門(最近は、他の科も不採算にされつつあるので、小児科だけと言うと語弊があるが)であり、忙しすぎるのだ。小児科医を増やす、そのための財政的な対応をする、これしか根本的な解決はない。

 川渕教授は「その際に不可欠なのが、病院勤務を離れた開業医の協力。例えば、午後10時までの時間帯を交代で担当するなど地域医療の担い手としての自覚を求めたい」と強調する。

一次救急を開業医にさせるという厚生労働省の方針に沿った発言と思われる。患者の親御さんの小児科医志向をどうするのだろうか?専門外の救急を対応して、問題が起きたときに、医療訴訟になれば救急医は敗訴する時勢だ。60歳以上の開業医には、夜間救急を対応するのは体力的に難しい。さらに、小児科を診ることができる開業医といえば、小児科医・内科医しかいないのではないか。かなり少ない人数で担当することになる。開業医が夜間一次救急を担当して、上手くいっているように見えるところもあるが、時の経つに従って負担に耐え切れなくなっているところもある。

 集約化については、横浜市のケースが一つのモデルケースだ。これまで27の病院が小児救急の当直日を交代で分担してきたが、年間の患者数には1189~78人とバラツキがあった。こうした偏りを解消し、医師の勤務環境の改善を図るため、来年度から小児科医が8人以上常勤する病院を7か所指定し、3年間で11人以上の体制にしていく。当直は2人体制になる。

上記の小児科医の集約の問題が出てくるのではないか。8人以上常勤医を置いても、忙しさは倍以上、当直回数も決してそれほど減らないはず。それに、3年間で11人以上の体制にするという「計画」は、小児科医の足りない現在、一体実現するのか。出来たとしても、小児科医の労働条件は良くならないのではないか。

 集約化とは別に、施設の役割分担を徹底することで新システムを作った例もある。

 早期新生児などの死亡率が94年に最も高かった宮崎県は、出産の8割を開業医が担い、緊急時には産科医が24時間対応できる6か所の総合病院に運ぶシステムを導入した。病院には3~4人の産科医が常勤しているが、基本的に緊急時の対応に専念する。この体制整備により、04年に死亡率が全国最低になった。

異常分娩を受け入れる病院に、3,4人の産科医だけで済むのだろうか?24時間365日受け入れ態勢を組むのに、それだけの人数で足りるのだろうか?労働基準法から遠く外れた勤務体制を、当然のように考えてのことではないのか?

 同時に、救急医療の質を向上させることも大切だ。そもそも、すべての救急病院が全診療科で24時間365日の体制をとってきたわけではない。厚生労働省の05年の統計では、救急体制がある全国約5450施設のうち、小児科で深夜の救急対応が「ほぼ毎日可能」なのはわずか16%、内科でも約50%に過ぎない。

 「高熱を出して救急病院に駆け込んだのに、当直医はアルバイトの研修医で、オロオロするばかりだった」「腕を複雑骨折して深夜に救急病院に運ばれたが、『ここでは手当てできない』と言われ、別の病院に移された」……。

 患者からの不安の声が根強いのは、不十分な救急体制を非常勤の当直医でやりくりしてきた結果とも言えよう。蘇生(そせい)や外傷を扱うための講習を受けたこともない医師が救急病院で当直しているような状況も改めるべきだ。

 システムづくりと質の向上は、救急医療を改善するための車の両輪。その認識を社会全体で共有したい。

救急医療の質の向上とは、24時間、各科専門のベテランが診る体制を言っているか?そもそも、どんな業種であれ、日中と同じ体制を夜間も確保するのは困難なことは明らか。医療機関は、コンビニエンスストア化はできない。

さらに、救急を非常勤医に押し付けてきた?蘇生や外傷を扱う「講習」を受ければ、救急の第一線で活躍できる?医療現場を非難して問題は解決するのか?特定の科を一通りこなせるようになるのには、10年以上の経験を必要とする。医師が研修や、講習を受けただけで、一人前に仕事ができるようになると考えるのは机の上だけにしてもらいたい。

さらに、そうした中堅どころは、疲労困憊して、救急の現場を立ち去っている。「質を向上し、システムをつくる」ために一体どうしろと言うのだろうか?このようなスローガンは無意味だ。

救急医療の崩壊の背後にある問題、年々抑制され続けている医療費・数少ないスタッフ・年々増え続ける医療訴訟それに患者さんの志向と受診態度の問題などを踏み込んで議論しなければならない。そうしなければ、救急医療の崩壊は避けられない。


(2007年3月29日 読売新聞)』

コメント

こんにちは!
まだこんな記事が出るようになるだけマシになってきたかな、というのは甘いでしょうね(笑)!
もうなんだか本心では飽き飽きしてきてしまっているのですが、そんな事も言ってられません。来るべき医療崩壊に備えて宣伝していかないと、下手すると「結果(←大淀病院事件のような、ひとつひとつの事件)」が出てきた時に、医師が悪者にされかねません。
しかも授業にでている子に「出席率が悪い」とどなられているような理不尽な医者叩きo(^-^)o!!

やっぱりそのときまでにドロッポでしょうか?あああ、もう、こんな結論しかでてこないのが悲しいですね。

読売新聞は、医療問題には強いという自負を持っているらしいのですが、この程度の認識では困ったものです。例の、日本医師会の地域医療問題検討委員会(でしたか?)、医師の僻地義務化の中間答申を出した委員会には、数少ない民間委員として読売新聞の記者も入っています。

もうどうにでもなれ、と放り投げるのは何時でも出来るので、できるだけのことはしておきたいと思っています。

産科の状況はますます大変ですね。緊急帝王切開を、常に30分以内に(無理だっていうの!!)に行わないと、医療訴訟では敗訴する時代に、産科医として生きてゆくリスクは、とてつもなく大きくなってしまったという印象です。どうぞ燃え尽きず、生き残ってください。

ありがとうございます。
頑張ります(笑)。
やめる時は燃え尽きた時か、訴訟された時だな~とは思っています。

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