医療費大幅削減が何をもたらすか? 

今夕、数年前まで私の患者だったK君のお母さんから電話が入った。ご一家は、二つ隣の町に引っ越して、お目にかかることは最近はなかった。気管支ぜんそくのK君が発作を起こしたのだが、救急で診てくれるところがない、という。近くの基幹病院に通っているのだが、小児で診てくれぬらしい(理由は私には良く分からない)。私は、3年前に閉院したこと、隣町で小児科の救急輪番体制を行っているということをお教えした。その基幹病院では、3か月に一度の受診で、投薬を受け続けているらしい。

少しお節介かと思ったが、お母さんには、少なくとも一か月に一度は診察を受けた方が良いだろうことと、ある程度の救急対応をしてくれる医療機関にかかった方がよいのではないか、とも申し上げた。基幹病院がどのような理由で、K君の救急受診を断ったのかが分からない・・・K君の側に問題があった可能性もある・・・ので、まずは現在の主治医とよく相談すべきだろうと考えた。

財務省は、この先5年間で、医療費を2.5から3兆円削減するようだ。医療費の7%前後に相当する。小泉構造改革の際にも、骨太の方針とやらで、毎年3000億円医療費が削減されたので、そのほぼ二倍の規模の削減幅である。小泉構造改革では、救急医療の破綻が生じた。盛んに、救急患者の医療機関による「たらい回し」が問題にされた。実際は、救急医療が経済的にペイせず、救急医療で裁判に訴えられるリスクが増大したことによって、救急医療が機能しなくなったのだ。その後も救急医療の需要はすさまじい勢いで伸びているが、根本的な問題は解決していない。

財務省は、医療費削減とともに急性期病床の削減も意図しているようだ。そうした医療政策が行われるとどうなることだろう。救急医療、小児医療はともに経済的に成り立ち難いので、地域の医療機関は手を引くことになるのではないか。一方で、先に述べた通り、救急医療が大きく必要とされている。サッチャー政権下の英国のNHSによる医療体制で明らかになったように、救急医療にかかるのに数時間待ちということがありふれたことになるのだろう。入院も容易にできなくなる可能性が高い。わが国では、高齢化が救急医療の需要を底上げする。そこで、医療供給体制を削減するとどうなるか、陽を見るよりも明らかである。

さらに、この削減幅は、救急医療のみならず、現在の医療システム全体を機能させなくするほど劇的なものである。この医療費削減を答申した財政審の会長の吉川東大教授は、小泉構造改革時代以来、混合診療解禁論者である。恐らく、「医療を立ち行かせるため」として、大幅な混合診療の導入に踏み切るつもりなのではないだろうか。それでしか、この医療費削減は実現しない。

K君のような患者が、夜間、休日、医療を受けるために右往左往するのが常態になる日が近い。

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