新たな「基金」が、医療機関に強制力を及ぼす 

亀田総合病院地域医療学講座と、千葉県の医療行政との軋轢について、小松秀樹氏が
MRICで記している。千葉県のやり方に憤懣やるかたない小松氏の憤りが、良く分かる。

彼の記事のなかで、私の注目を引いたのが、本来医療機関収入になるべき診療報酬の消
費税分を元手に立ち上げられる新たな「基金」に関してである。

要するに医療機関から金を出させて、地域病床の配分、医療機関の機能変更等を
「強制的に」行わせる、行政組織を立ち上げる、ということだ。

県単位で行政の言うことを聞き入れぬ医療機関には、診療報酬上のペナルティを課すという
提言が、財政審から成されたが、それとこの話は、一致する。そのペナルティを課すのが、
この基金の役割なのだ。

これに先立って、国保が、市町村から県単位に移行した。これも、上記の動きと一致する。

行政は、大学医局の人事権をはく奪し、さらに医療機関への強制力を手に入れた。それが、
医療をどのように変えてゆくのか、大きな憂慮を持って見守ることにしよう。こうした「基金」
には、当然行政の天下り等の利権があるのだろう。行政の責任は重大だ。

以下、MRICより当該論文の一部を引用~~~


亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政(3)


亀田総合病院地域医療学講座プログラムディレクター
小松秀樹

2015年5月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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◆消費税増収分を活用した基金
今回の事例が示すように、県の補助金は有効に使えない。しかし、国は病院の収入を奪って、補助金に振り替えようとしている。
2013年8月に発表された社会保障制度国民会議報告書では、誰にでも必ず訪れる死を前提に、それを忌み嫌うのではなく、穏やかな死を迎えられるよう、社会が個人を支援していくとしている。筆者は、この方向に全面的に賛同するものである。しかし、これを実現するために、厚労省は、一貫して「強制力」を強めようとしている(4、5)。都道府県の権限を強め、「病床機能報告制度」と「地域医療ビジョン」によって、かつての共産圏の統制経済のように、行政は医療の需要と供給量を決めようとしている。一方で、消費税増収分を活用し
た基金を創設した。
病院の購入する物品やサービスに消費税がかかっているにもかかわらず、診療報酬に消費税がかけられていない。消費税率引き上げ分が診療報酬に十分に反映されていないことを合わせると、この基金は、病院の収益の一部を取り上げ、それを、支配の道具に使う制度であり、再投資の判断を経営者から行政が奪い取るものである(6)。

2014年4月の診療報酬改定と消費税率の引き上げで、日本中の医療機関の経営が悪化した。基金として厚労省が配分しても、その金は極めて使いにくい。間に県が入ると無駄にしか使われない。基金は厚労省と県の役人の権限を増やすだけにしかならない。医療に関する知識、技術、環境は大きく変化する。サービス向上のためには、世界を認識し、必要に応じて迅速に自らを変えていく必要がある。しかし、行政組織は権力の暴走を防ぐために、様々な法律上の制約を課されている。しかも、無謬を前提とする。事実の認識に基づいて、安易に改善を図ることは許されていない。
行政が直接サービスを提供すると、サービス向上が望めないばかりか、費用がかさむ。権力を持つが故に、自らを甘やかすからである。千葉県の平成24年度病院事業会計の決算見込みによると、病院事業全体で、収益440億円、費用427億円で13億円の黒字だとしている(http://www.pref.chiba.lg.jp/byouin/pre
ss/2013/24jigyoukessan.html)。しかし、収益の内106億円は負担金・交付金すなわち税金であり、民間と同じ言語を使うとすれば、93億円の赤字となる。民間病院なら1年持たずに倒産する。これを黒字と説明している限り、事実の認識に基づいて改善努力を続けるなどできるはずがない。日本の医療は私的セクターの関与が大きいが故に、比較的小さい費用でサービスが供給されている。

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