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『世界でもっとも厳しいレベル』の新規制基準は本当か? 

原子炉再稼働のために、原子力規制委員会が審査する基準である、「新規制基準」は、「世界でもっとも厳しいレベル」だとよく言われる。安倍首相が、国会答弁や記者会見でも繰り返して、そのように述べてきた。だから、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断した原子炉は安全なのだ、と言うわけだ。

ここで、政府、安倍首相は。原子力委員会に判断をゆだね、自らの責任を放棄している。一方、原子力規制委員会は、新規制基準に適合するかどうかを判断するのみという立場で、原子炉の深刻事故が起きないとは決して明言しない。また、周辺地域の住民の避難の問題等には積極的に関与していない。こちらも、深刻事故が起きることへの責任は放棄している。

『世界』8月号の「解題「吉田調書」」では、新規制基準が「世界で最も厳しいレベル」にはなっていない例として、欧州の加圧水型EPRという次世代型の原子炉の例を挙げている。EPRは、我が国の加圧水型炉PWRとほぼ同様の構造、機能のようだ。違うのは、EPRが、航空機の衝突と炉心溶融に対処するための方策がとられている。一つは、格納容器が二重構造になっている。これは、外部からの衝撃、破壊から原子炉を守るためなのだろう。もう一つは、格納容器底部にコアキャッチャーといいう構造があり、深刻事故の際に生じる炉心から生じる溶融デブリを冷却装置のある貯留エリアに導かれるためといわれている。これらの安全性のための構造は、大多数が建造後20年以上たっている日本のPWRには適用できない。もしこうした安全策を適用しようとすると、コスト面から原発再稼働はペイしない。「世界で最も厳しいレベル」という形容は、新たな安全神話なのだ。

新規制基準の別な重要な問題としては、東電福島第一原発事故の原因究明がされておらず、その知見が取り入れられていないことが挙げられる。原因が究明され、それに対する対応が検討されて初めて新規制基準の内容が決まるはずなのに、そこがすっぽり抜けている。たとえば、一号炉の水素爆発は、建屋五階で起きたとされてきたが、四階でも起きたという知見が得られたことがある。こうした知見によって、事故がどのように起きたのかの理解が変わってくる。原因究明が去らないうちに、「世界で最も厳しいレベル」の新規制基準だと言われても信じかねる。

また、同じ連載記事で、原子炉の安全性の問題に詳しい田中三彦氏が、原発事故の際の緊急時対策本部長のポスト、さらに対策組織の在り方に言及している。これまで、各原発の所長が、その職に就くことになっていた(なっている)が、それで良いのか、ということだ。東電福島第一原発事故当時の当該原発所長だった吉田氏の個人的な責任を追及するためではないと断りながら、吉田氏が原発の機能、深刻事故時の対応に詳しくなかったことを、吉田調書の記載から明らかにしている。もっと現場に詳しい人間が、対策本部の中枢にいれば、違った事故の経過になったかもしれない。所長は、いわば現場の第一線から離れ、マネージメントを主に行う管理職であるから、当然と言えば当然のことだ。だが、今も、深刻事故の際の緊急時対策本部長は、各原発の所長が自動的になるようになっている。これはシステムエラーと言えるのではないだろうか。

このように、原発稼働のリスク、それへの備えができていないのに、原発再稼働に突き進む現政権の姿勢は無責任かつ異常である。

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