集団的自衛権を行使した場合の財政的負担 

2013年ブラウン大学の研究者が、イラク戦争に要したコスト・人的被害についての分析を報告した。

それによると、米政府支出については、戦費やイラク駐留費、退役軍人に支払う手当を含めて約2兆ドル(約190兆円)と試算。利子を含めると向こう40年で6兆ドル(約570兆円)に膨れ上がると報じられた。前半の戦争期間中に確定した支出だけで、一年に19兆円の支出になる。

米国が世界戦略を練り直し、日本に肩代わりを求めてきたことは、繰り返し記している通り、ガイドライン改訂、アーミテージ・ナイリポートに具体的に記されている。安倍政権は、何としてでもこの法案を通そうと、集団的自衛権行使内容がまるで個別的自衛権行使の範囲に収まるかのように説明しているが、存立危機事態の認定等、集団的自衛権発動の決断は、時の政権にフリーハンドで与えられることになる。米国からの要請によって、中東に自衛隊を派遣し、実質的に戦闘に参加させることは確実だ。

そこで、どれほどの戦費負担が我が国に生じるか、という問題がある。戦費負担を少なく見積もって、上記のイラク戦争に要したコストの1割としても、毎年1.9兆円の支出が必要になる。実際には、世界第三位の「軍事大国」として、より大きな軍事支出を要請されることだろう。米国では、国防予算が、実際にイラク戦争開始前に年3000億ドル(約24兆円(だったものが、同戦争開始後最大年7000億ドル(約56兆円)まで増えている。我が国の防衛予算もこの3年間増え続けているが、それでも5兆円弱である。これに1.9兆円以上増額しなければならなくなる、ということだ。それが、一年だけで済まず、長期間続くことになる。

中東への自衛隊派遣、それに伴うコストだけに留まらない。中国の脅威が喧伝されているが、不測の事態で、米中が西太平洋で衝突をすることになった場合、米海軍は、我が国の海上自衛隊に援護を要請してくる。集団的自衛権によって、その要請を断ることはできない。米海軍の援護を続けるためには、現有の四個護衛隊群を、少なくとも1.5倍に増やす必要があると、防衛研究所元所長の柳澤協二氏は述べている。現有の軍備は、専守防衛のためのものであるから、日本、その近海以外に出てゆき戦争をするためには、必ず軍備を増強しなければならなくなる。そのコストがどれほどになるのか・・・現在の防衛費の半分近いコストが余分にかかることになるのではないだろうか。

日本は、少子高齢化により社会保障の必要が自然に増え、そのための予算を増やしていかなければならない。従って、社会保障予算を毎年3000億円削るだけで、医療介護にかなり強烈なしわ寄せが起きた。現実問題として、集団的自衛権行使に伴う軍事予算増に対処するために削減できる予算の多くは、社会保障費になるだろう。社会保障費を、毎年、2兆円前後削減することになったら、社会保障は維持できなくなる可能性が高い。さらに、GDPの6割ほどの額の国債を日銀に購入させているわけだが、日銀の信用ががたつけば、国債の価値は大きく下がり、酷いインフレが生じる可能性がある。そこにかぶせて、軍事費の増額が必要になったら、国民生活は成り立たなくなるのではないだろうか。今日も、国会で安倍首相は、集団的自衛権行使をする際に、新たな軍備を整える必要はない、と言っていたが、全く信用がおけぬ言葉だ。戦争になったら、経済的にも国民生活がめちゃめちゃに破壊される。

人的被害の問題はより一層深刻であり、また別な稿で考えてみたい。

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