高速増殖炉には年200億円だすが・・・ 

癌に対する重粒子線、陽子線治療のコストの比較。知らないことだった。ここでも縦割り行政の弊害と、学会の事なかれ主義だ。

ついでに言っておきたいが、メインテナンスだけで年200億円、毎日5500万円必要な、高速増殖炉「もんじゅ」は、一度も実用化されず、事故と不祥事にまみれつつも、今後とも稼働を目指すらしい(実際上は不可能なのは明らか)。先進諸国ではとっくのとうに開発を取りやめた高速増殖炉なのに、まだ金をぶち込む気だ。年200億円というと実感がわきにくいが、一日5500万円というと、酷い浪費であることが実感できる・・・。

だったら、年に20億円、30億円で維持ができるがん治療の施設に金を出してもらいたいものだが、原発利権にまみれた政治家と官僚は、決してそうはしない。

以下、MRICより引用~~~

重粒子線と陽子線は全く違う。一緒くたに扱うと禍根を残す

『ロハス・メディカル』2015年11月号に掲載されたものの転載です。

ロハス・メディカル編集発行人
川口恭

2015年11月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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治療開始以来ことあるごとに逆風を浴びてきた「がん重粒子線治療」に何度目かの危機が訪れています。話の前提が理不尽なので、一言モノ申します。

8月8日の毎日新聞朝刊1面に「粒子線治療 先進医療除外も」という見出しの記事が載りました。8月6日の先進医療会議で、日本放射線腫瘍学会が行った報告を受けてのものでした。その後も、マスコミ各社が、粒子線治療に否定的な報道を繰り返しています。
先進医療としての扱いがどうなるか、はたまた健康保険が適用されるようになるか、来年まで決まりませんが、この流れで進むと、がん粒子線治療は、これまでより患者にとって縁遠い存在となる可能性が高く、我が国は普及度世界トップの座から陥落するかもしれません。

『ロハス・メディカル』の重粒子線治療に関する連載記事(『ロハス・メディカル』のwebサイトで電子書籍を読めます)をご記憶の方々は、「話が違うじゃないか。一体どういうことだ?」と、お感じでしょう。たしか、日本の成功を見て、米国が重粒子線治療に再参入してきたんじゃなかったか、と。
この件は論点が色々あり、一つずつ丁寧に論じたいところではあるものの、紙幅が限られていることもあり、詳しくは別の機会に譲って、今回は最も問題の根幹となっていることに議論を絞ります。照射費用が高額なのに他の治療法より優れていることを示せなかった(劣っている、ではありません)という点です。
 
がん粒子線治療が歩んできた歴史を踏まえると、医療界の主流派から他の療法との比較試験をできるような扱われ方をしてこなかったことや、費用対効果の検討は研究の進んだ後に唐突に出された基準だったことなどあり、学会だけに挙証責任を負わせた先進医療会議と、その振り付けをしている厚生労働省の進め方は極めて不当だと考えます。しかし、同じ効果なら安価な方を使うべきというのは国民の利益にかなう大義なので、今回この手続き的なことは批判しません。

問題にしたいのは、現在我が国で行われている粒子線治療には2種類あって、原理は似ているけれども結果は相当に違うという事実があるのに、それを無視して2種類が一緒くたに扱われていることです。たとえるなら、新幹線の「のぞみ」と「こだま」を一緒くたに扱うようなものです。
2種類とは、『ロハス・メディカル』で連載を続けてきた炭素イオンを飛ばす「重粒子線治療」と、陽子を飛ばす「陽子線治療」で、照射費用を安くできる可能性に差があります。「高額なのに」という文脈で扱うなら、分けないといけないのです。

現時点で各施設が提示している約300万円の照射費用だと、粒子線治療は2種類とも「高額」と言われて当然の面があります。しかしモノの値段というものは、本来は需要と供給によって決まるものであり、そこを見ないで費用対効果を云々するのは乱暴です。
そして、需要が増えた時に供給も増やせるのかを見ると、2種類は全く違うということに気づきます。その観点に立って、2種類を分けて論じれば、「高額」という大前提がひっくり返るのに、そのことが全く無視されているのです。

◆使うほど安くできる

意外と知られていないことかもしれませんので一言お断りしておくと、現在、粒子線治療の照射費用は照射1回あたり一定額という設定ではなく、患者1人が予定された回数の照射を受けると一定額という設定になっています。30回に分けて照射を受けようが、1回だけ受けようが、1人が払う金額は同じです。

さて、粒子線治療の施設は大規模な加速器が必要で、建設に陽子線で100億円弱、重粒子線で100億円強かかります。重粒子線施設建設を進めている大阪府の検討会に提出された資料によれば、年間の施設維持費は陽子線が約5億円、重粒子線で約6億円、人件費が1日8時間稼働の場合で年4億5千万円かかるそうです。他に土地代、借り入れた資金の利息なども払う必要があります。

現存施設のうち最も古くから治療を行っている放射線医学総合研究所(放医研)は、21年経過して加速器はまだまだ使えそうです。少なくとも30年は使えると考えて、その期間に収支を合わせるためには、陽子線で年16億円、重粒子線なら年19億円の売上が必要だそうです。この費用を年間の治療患者数で頭割りした金額が収支トントンの照射費用ということになります。分母に患者数が入りますから、治療患者数が増えれば増えるほど、照射費用は安くできるということ、お分かりいただけるでしょうか。

◆2種類の違い

さて、以上を踏まえた上で粒子線治療2種類を見比べてみましょう。
細かい理屈は、連載の最終回(2015年4月号、『ロハス・メディカル』のwebサイトで電子書籍を読めます)で一度書きましたし、近日刊行の拙著『がん重粒子線治療のナゾ』(大和出版)でも改めて説明しますけれど、炭素イオン線は1人の患者に1度に当てる線量を増やし、その分患者1人の照射回数を減らすことができます。一部の肺がんでは既に1回照射になっており、研究をリードしている放医研では、照射可能なすべての固形がんについて1回照射実現を目標にしているそうです。対する陽子線の場合、線の性質の違いから回数を減らすのに限界があります。

この結果、もし需要が充分に存在した場合には、1個の施設で治療できる患者の数は、炭素イオン線と陽子線とで大きな差が出ることになります。つまり、重粒子線は患者を増やして費用を安くすることが可能、陽子線では難しい、のです。
大阪府では、現在の平均照射回数(陽子線20回、重粒子線11回)で年240日を9割稼働するとして、陽子線だと最大年650人、重粒子線だと最大年1400人強を治療できると想定しています。患者数さえ充分なら、重粒子線の方は1人150万円へと半額以下に値下げしても年21億円と採算ラインを超えます。陽子線は250万円まで下げるのがやっとです。

現在の施設数を前提にする限り、捌ききれないほどの潜在的需要があることは、本誌連載最終回でも説明しました。もし1人あたり照射回数が8回まで減れば、あるいは施設の稼働量を25%程度増やせば、100万円を切れる計算です。
ここまでくれば他の治療法に費用対効果でも負けないはずなので、健康保険を適用してしまって患者を増やし価格を下げる方向へと舵を切る手だってあるはずです。

◆大事なのはメンツ?

なぜ、費用対効果が云々という話になっている時に、こんな重大な事実が無視されているのでしょうか。
医師が必ずしも放射線治療に詳しいとは限らないので、先進医療会議の委員たちが知らなかったということは充分に考えられます。しかし、放射線腫瘍学会の構成員たちが知らないはずはありません。敢えて言わないようにしていると見るべきでしょう。

この学会の不可解な動きの背景として指摘しないわけにいかないのが、重粒子線治療を推進してきたのは旧科学技術庁(現文部科学省)所管の放医研で、対して我が国で最初に病院附属の陽子線治療施設を設けたのは旧厚生省(現厚労省)所管の国立がんセンター東病院だったという、省庁縦割りの弊害です。先進医療会議を開催しているのも、そこで健康保険適用の可否を判断しているのも厚労省です。
1992年に米国が重粒子線の研究を中止して陽子線に絞ったという経緯もあって、厚労省と医療界の主流派たちは「米国でさえ成果を出せなかった重粒子線の研究など予算のムダ」と捉え、本命は陽子線、重粒子線は脇役という考えに凝り固まっていたと思われます。そして、陽子線が重粒子線を上回る結果を出していたならば、スンナリ陽子線だけ健康保険適用まで行ったのでないかと考えられます。しかし残念ながら厚労省と主流派たちは、明らかに判断を間違えました。

重粒子線は生き残るのに陽子線は残らないという事態を避けるために、沈まばもろとも、ということでしょうか。あるいは、そのうち米国が重粒子線で結果を出してくれるだろうし、その時には今回の議論を誰も覚えていないだろうから、それを待って普及させればいいやということでしょうか。
大きな可能性を秘めている重粒子線治療の脚を縛って、陽子線治療と一緒くたに扱おうとする、そこにあるのは内輪の論理だけで、患者の利益とか国益の視点が全くないようにしか見えません。
きちんと2種類を分けた上で、患者・国民の立場に立って議論することを強く望みます。

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