新スプリアス基準の制度化 

ITUが新スプリアス基準を制定した。それに伴い、我が国の行政は、アマチュア無線機器にもそれを適用するとした。このブログでも依然取り上げたような気がする。行政は、平成34年以降、新スプリアス基準に適合するかどうか分からぬ機器では、アマチュア無線機器に対して免許しない旨を表明している。免許を受けるためには、実測データを貼付する必要がある、ということらしい。

それに対して、JARDは、新スプリアス基準に適合しているかどうか分からぬ機器のスプリアス実測をサンプルで行うとし、アマチュア無線家の機器の実測を始めた。今のところは、無料ということだ。保証認定のような何らかの救済制度を作ろうとしているのか、それとも実測についての手間を実際に知るためなのかは、分からない。いずれにせよ、アマチュア無線家にとっては、近い将来、かなりの手間とコストがかかることになる。とりわけ、複数の古い機械で免許を受けている場合は、頭が痛いところだろう。

そもそも、ITUがなぜこのような新スプリアス基準を持ち出したのか、ネットで調べてみた。この文献は、少し古いが、スプリアスエミッション基準を制定する理由が記されている。バンド外不要輻射であるスプリアスと、それが実際にアンテナ系を経て輻射されたスプリアス、すなわちスプリアスエミッションとがあるわけだが、ITUは後者を問題とし、特に他の無線通信への妨害を減らすために、この新たな基準を策定したということだ。こうした背景を知ると、我が国の新スプリアス基準の導入に対して、大きな疑問を抱く。

まず、JARDが対応しているのは、スプリアスエミッションではなく、スプリアスそれ自体であり、これはITUの方針に合致しない。また、従来の保証認定制度で、新スプリアス基準適合を「保証」するとなると、それも国際標準からかけ離れた対応ということになる。従来の保証認定制度という、書類上の「保証」は、何を誰がどのようにして「保証」するのか理解不能な制度だ。このような奇妙な制度は、少なくとも他国にはない。本当に「保証」するなら、アマチュア無線局に出かけて実測し、法規に適合するかどうかを判断しなければならない。現在の、書類上の「保証」は、天下り組織であるTSSとJARDを潤すための制度なのだ。それを、国際標準の新スプリアス基準適合にまで拡大しようというのは笑止である。さらに、すでに述べた通り、ITUが問題にしているのは、行政当局が実測を要求するスプリアスそのものではなく、スプリアスエミッションであるわけだ。だから、スプリアスだけを実測しても意味はない。

この新スプリアス新基準が、他国でどのように扱われているのか、普段の交信中、およびSNSを通して、外国の局に尋ねてみた。まだ、答をくれた局が少ないのだが、アイルランドではこれまで通り他への妨害を与えぬことという要求だけとのこと。米国では、FCCおよび監視モニター局が、バンド外のスプリアスエミッションを監視している、もしバンド外エミッションが発見される、ないし他の無線通信への妨害が生じたら、それを是正するように当局から指導が入る、ということのようだ。実測するなどという話は、これまでのところ聞いたことがない。スプリアスエミッションを実測することの困難性を考えれば、これらの対応が妥当なところではないだろうか。

JARLは、当局の意向を我々に伝えるのみで、我々の権益を守るための行動を何もとっていないように思える。ITUの意向、実際のスプリアスエミッション測定の問題などについて、我々の立場にたって積極的に発言すべきは、JARLだ。さらに、書面上の保証認定制度、無線機ごとの免許制度、固定・移動の免許状の区別などを、改善、ないし廃止すべく、JARLは強力に行政に働きかけるべきだ。それを何もしないでいるのは、アマチュア無線の没落に力を貸していることに他ならない。

歪なアマチュア無線免許制度を、さらに悲惨なものにしないために、我々は発言をすべきである。

コメント

新スプリアス法

 この法律がそのまま適用されると、国内のQRP
マニアは全滅です。

 今も、理想のQRP機器を頭の中で描いていますが、
申請してもスプリアスの測定が出来なければ使えま
せん。

 現在の仕事先にもスペアナが有りますが、校正が
されてないため、測定値が正確でない可能性があります。
校正を受けるには、¥100,000程必要です。

 もし金の心配が無ければ、¥5,000,000のスペアナ
を購入し、全国のQRPファンの送信機を安価で測定し
証明書を発行したい。また、毎年校正が必要ですから、
この費用も必要。
 できれば、登録点検業者として登録すればKW局の
検査も行う。

 夢の中の夢ですね。平成34年までスプリアス法に
引っかかる機器で頑張って出るしかないですね。
6年先、74歳、もう少し長くなりませんかね。Hi

 電波の停止発言の総務大臣にお願いしたいですね。
電波法を読んでないですね。せめて無線(放送)局の
運用停止と言ってほしいです。

高調波などのスプリアス規定と隣接スプリアス(SSBでは10KHz範囲に出るスプリアス)の二つの規定があります。 後者は単純に見ればSSBでスプラッタを撒き散らした場合のこと、CWではキークリックのことと同じですが、測定が大変です。FCC/ARRLでは隣接局に迷惑かけないようにしなさい、前者のスプリアスは他の業務局からクレームが出たら自分で退治しなさい・・・と、当たり前のことを言っています。 更に古いリグは自己責任で使って結構とまで言っています。フィルタをつけたり、測定したり(それも前者のスプリアスだけ?)お金がかかることを平気で連盟のメルマガで流すのはなぜ? 会費はそろそろ払うのを止めよう。

DNAさん

私は、こうしたスプリアス(エミッション)測定に詳しくないのですが、エミッション測定となると、現実的にはかなり難しいと聞いていますが、どうでしょうか。貴兄のような方が、kw検査の検査を担当してくれたら、頼もしいのですが、ね。JARLは、一体何を考えているのやらとため息が出ます。

同世代ですね 笑。いつかお目にかかりたいものです。

KIHさん

仰る通りですね。JARLが何しろ頑張ってくれなければならないところなのですが、お上には逆らわないという根性がしみ込んでいるようです。行政を頭ごなしに批判してもいけないので、何とか、建設的な意見を行政に持って行ってもらいたいものです。それと、外国の実情、ITUの勧告の真意等を把握しているのでしょうかね、JARLの上層部。どうも行政だけに目が行っているようにしか思えません。

この問題で、やり方をちょっと間違えると、中高年のアマチュア無線家・・・ということは、大半のハムを廃局に追いやる、または無線離れさせることになるのではないでしょうか。

ご無沙汰してます。毎日ブログを楽しくかつ真剣におませていただいています。
今回の新スプリアスに対するJARDの動きは、結局のところは、この機会に旧スプリアス機を使い続けるための、新たな保証制度とでもいうべきものを作り上げて、金もうけをしようと考えている人たちが存在していることの、現れかと思います。
とにかく世界の大勢から大きく離れている日本のアマチュア局の免許制度を改善して、包括免許にしてもらわねばならないと考えていますが、JARLにはまったく期待できません。
WRC2015で合意された60mbの国内での開放も、いったいいつになるのでしょうか。

Re: タイトルなし

ご無沙汰をしています。おっしゃられる通りですね。アマチュア無線局の免許制度は、戦後あまり時間の経っていない時期に、商用無線局と同じ制度設計で作られたのだと思います。その後、JARD、TSS等アマチュア無線に群がる利潤追求組織ができて、ますます免許制度が固定化されてしまいました。包括免許制度、免許制度の簡素化を強く主張してこなかった(というか、逆に固定化するように当局に働きかけてきたとも聞きます)JARL、その中枢にいた方々の責任は重大です。強固な利権構造になってしまっているので、この制度を諸外国並みに簡素化するのは難しいかもしれません。が、JARLが音頭をとって、簡素化を要求しないと何も変わらないでしょう。この複雑怪奇な免許制度を、特にWの友人に説明し納得してもらうのにいつも一苦労します。まずは、我々が声を挙げて、JARLに改革へのリーダーシップをとってもらわねばなりません。このままで行くと、我が国のアマチュア無線はじり貧間違いありません。

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