官僚の思い上がり 

官僚は、自らが無謬であり、それによって国民に対して権力を行使できる、という思い込みを持っている。

政官業が一致して、国が右肩上がりの成長を続けていた間は、その弊害があまり見えてこなかった。

だが、右肩上がりの成長は過去のものとなり、超高齢化人口減少社会になり、国力が落ちてきた現在、官僚のその思い込みは、幾多の弊害をもたらしていることが明らかになってきた。

この記事で3に取り上げられている事例は、小松秀樹医師が、厚労省および千葉県に出向中の医系技官から受けた、恣意的ハラスメントの問題だ。別なポストで彼のMRICでの新たな発言を取り上げる積りだが、この医系技官の行為は行政官として許されざるものだ。

記事の著者、井上弁護士と私の見解で多少異なるのは、これは医系技官だけの問題だけではなく、法系技官にも当てはまることで、後者が制度設計で根本的なところを押さえていることが多いわけで、むしろ法系技官の在り方こそが問われる。医系技官は、臨床経験を現在よりも長く積むことをその採用条件にすべきだ。また、行政政策の「結果責任」を高級官僚は問われるべきだ。

以下、MRICより引用~~~

医系技官ガバナンス ~医系技官システムのガバナンス改革~

この原稿はMMJ6月号(6月15日発売)からの転載です。

井上法律事務所 弁護士
井上清成

2016年6月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1.医系技官システムの問題性
厚生系の公務員には、その中核に、法令系事務官と医系技官とがいる。法令系事務官は、法学部出身者を核としていて、特にその中心はいわゆるキャリア官僚となって厚生行政の実務をリードしてきた。厚生労働省の事務次官をトップとし、局長・課長ポストの多くを占めている。一般的に法令に忠実だが、微細にまでこだわり過ぎるという評判もあるらしい。いわゆる規範的予期類型が徹
底しているのであろう。
他方、医師免許を持った者には公務員の別コースがあり、医系技官といわれる。医学部出身者で医師であるから、法令系事務官と比べれば、医学・医療の専門家と評してよい。ただ、実際は、熟練した医師は多くはないようである。また、当然ながら、一般に、憲法・民法・刑法をはじめとする基本法令の理解は深くないらしい。この点で、医系技官の中には、どっちつかずのダブル未熟者
が紛れ込みかねず、公務の遂行に問題が生じることもありえよう。
その種の医系技官でも結構、強大な権限をふるうポストに座り、時に問題を引き起こす。今は、そのような医系技官システムに対するガバナンスの改革が必要となっている時期のようにも思う。

2.過去の事例
かつて、保険診療報酬請求に関する個別指導や監査では、品の悪い医系技官が猛威を振るっていた。昔々の警察取調べを彷彿とさせるような暴言を、公式の席である個別指導や監査の場で吐いたりしていたらしい。さすがに余りにも酷いので、訴訟も多発した。厚労省も組織改革をし、厚生局として整備して以降は、弁護士帯同も確立する中で、そのような事例は減っているようである。徐
々に、個別指導や監査でも医系技官に代わって法令系事務官が仕切るようになった。医系技官システムに対するガバナンスの改革が順調に進行中、と評してもよいかも知れない。

医療事故調査制度の創設も、ホットな場であった。医療事故調の議論は、ともすれば直ぐに炎上してしまうほど、先鋭な利害対立・信条対立が起きやすい。
そのような中で熱血の医系技官が強腕に制度を立ち上げようとすれば、大炎上してしまう。しかし、とにもかくにも医療事故調査制度は創設されたが、当然、そのような熱血の医系技官の思惑通りには行かなかった。問題は、公務員たるにもかかわらず、自らの納得が行かないからといって、検討会取りまとめの公式結果を意図的に一部は隠して、各地で研修しに回ったことである。

一例を挙げよう。今般の医療事故調の最重要ポイントの一つは、「医療事故の範囲」では「※過誤の有無は問わない」としたことであった。公式の検討会取りまとめの図表があるにもかかわらず、当該医系技官は、公式の図表に(黒塗りの縁取りを設けるという)細工をして、「医療事故の範囲」「※過誤の有無は問わない」を削除した形でスライドを制作して、各地で研修して回ったので
ある。そのうち、上司の法令系事務官からのチェックが入り、その後は、黒い縁取りを外して研修が行われるようになったらしい。事無きを得たとはいえ、医系技官システムに対するガバナンスの改革の必要性が感じられるエピソードではあろう。

3.近時の事例―職務専念義務違反
まだ未解決の医系技官ガバナンスの事例もある。
ある病院の医師が、本省の課長であった医系技官とその配下にあってある県に出向していた医系技官とを、施策面で批判し続けていた。ある時、当該医師は本省に対して当該医系技官の調査をするなどの要請をする文書を出そうとしていたところ、当該医系技官配下の(ある県に出向中の)医系技官が当該文書を入手して、その県に所在していて当該医師の雇主たる病院の経営者に対して、メールを送付したらしい。その県に出向している医系技官は、入手した当該文書を添付して、「既にお耳に入っているかもしれませんが、別添情報提供させていただきます。補足のご説明でお電話いたします。」と、その県にある病院の経営者に送ったのである。間もなく、当該医師は病院から懲戒解雇された。

しかし、これは言論統制以外の何物でもない。つまり、言論統制は医系技官の本来の職務ではないのだから職務外のことをしていたことになり、そのメール送付をした医系技官は、職務専念義務(地方公務員法35条)に違反したのである。
職務専念義務といえば、本省の課長であった医系技官の職務専念義務(国家公務員法101条)違反は、さらに甚だしい。
行政の民事不介入は、行政の大原則である。ところが、本省の課長であった医系技官は、ある病院とある病院の医師の派遣を斡旋し、医師派遣契約の仲介を自らしていたらしい。その医系技官が自身で報酬をもらったかもらわなかったではなく、民間契約の仲介行為をしたこと自体が大問題である。本当に、民間契約の仲介や斡旋をしていたとするならば、民事介入をしていたことになり、
それだけで直ちに職務専念義務違反になってしまう。

そもそも管理職それもキャリア官僚たる公務員の職務上の行為は、過去・現在・将来そして他省庁の分野へもまたがり、直接・間接を問わず、情報の交換・議論・検討や社交儀礼上の諸行為も含み、極めて多岐にわたる。そのため、職務専念義務違反とされる行為は、極めて稀ではあろう。しかしながら、私的な動機・利害に基づく言論統制や民事介入は、明らかに公務員としての職務専念
義務に違反している。厚労省や当該県としても、医系技官へのガバナンスを効かさねばならないところであろう。

4.医系技官ガバナンスの改革を
以上、厚労省の医系技官システムの問題事例のエピソードを少し挙げてみた。
現在、厚労省は数々のガバナンス改革を試み、一定の成果を挙げてきている。
今後は、現行の医系技官システムから個別的に医系専門家に委嘱するシステムに大幅移行することも視野に入れつつ、医系技官システムのガバナンス改革にも新たに着手すべきであろう。

http://expres.umin.jp/mric/mric143.pdf

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