武器輸出の問題 

安倍政権は、2014年に、武器輸出を原則禁じてきた武器輸出三原則を破棄、新たに防衛装備移転三原則を定め、武器輸出に向けて大きく舵を切った。国際的なわが国の平和国家という評価を大きく変える、この根本的な変更を「閣議決定」で行ったことは、集団的自衛権容認を同じ「閣議」で決めたことと通じるものがある。国会審議を経ず閣議によって、国の形を変えることを平然と安倍政権は行ってきた。

武器の国際的な取引は、国際紛争の勃発・長期化に深く関係している。それはわが国の安全・防衛にも関わっている。武器輸出を解禁することの意味を、世界6月号「死の商人国家になりたいか」に掲載された論文を参考に記してみたい。

冷戦終結後、一時的に激減した武器取引は、2005年から再び急増した。スエーデンのストックホルム国際平和研究所によると、世界の軍事費は1991年に6790億ドルだったものが、2014年には1兆7760億ドルに増えている。2.5倍の増加だ。中東地域の武器輸入は、2005~09年から、2010~2015年にかけて、61%の増加をみせている。最大の武器輸出国、米国は1990年代防衛予算削減に踏み切った。武器市場を世界に求め、武器の輸出規制を緩和、対外有償軍事援助支援制度を使って、軍事企業の武器輸出を促進させてきた。

軍事企業は、多国籍化し、その業務内容も復興支援を含むふく多角産業化している。1990年代から、軍事産業の合併・買収が進み、巨大化・多国籍化した。その資本構成では、機関投資家が多数を占める。それにより、各国が、軍事産業を監督、制御することが難しくなった。紛争地域への間接・直接の武器輸出だけでなく、復興開発事業をも引き受ける多角化が、軍産複合体で進んだ。いわば、火をつけ、火を消すことに、同一の軍事企業が関与するマッチポンプ型の紛争への関与である。

武器は、不適当な国に横流しされないようにという建前で輸出されても、武器商人の手によって、武器輸出国の「敵」に渡ることは、過去にしばしば見られた(以前に紹介したアンドルー ファインスタイン著「武器ビジネス」にそうした多くの例が詳細に記述されている)。様々な縛りをつけても、輸出された武器は、どこのだれの手に渡るかはわからない。中東諸国が武器の輸入国の大きな割合を占める。そのなかで、サウジ・UAE・カタールから、ISISに武器が流されていることはよく知られた事実らしい。良い武器、悪い武器の区別はないわけだ。中東での紛争が続くことで軍事企業が利益を上げ続けられるという本音が、軍事企業自身からも聞こえてくる。

わが国の軍事産業は、これまで武器輸出が規制されてきたこともあり、さほど大規模ではない。武器調達市場の規模は2兆円ほどで、全工業生産の0.8%程度だ。主要軍事企業である、三菱重工、川崎重工ともに、売り上げに武器の占める割合は、たかだか1割程度だ。だが、EUの軍事企業に結果としては落札で負けたとはいえ、オーストラリアへの潜水艦の売却のプロジェクトは、4兆円超の巨大プロジェクトだった。そうした商談が成立すれば、わが国も主要な武器輸出国への仲間入りをすることになる。安倍政権は、武器輸出を成長戦略の一環としている。

オーストラリアは、中国と密接な関係にある。自国のダーウィン軍港を、中国に99年間借款する契約を、オーストラリアは中国と結んでいる。潜水艦という高度な軍事機密が、中国側に渡る可能性が十分あった。また、安倍政権は、フランスとの間で、武器技術を供与する取り決めを結んでいる。フランスから中国への技術移転はかなり自由に行われている。そこでもわが国の軍事機密の中国への移転が行われる可能性がある。かように、武器・軍事技術は、国境を容易に超えて、友好国ではない国、集団に渡る可能性が十分ある。

わが国が、武器輸出を行うようになると生じる問題は以下のようなことになるだろう。

○軍事企業が成長し、軍産複合体を形成。それが、世界各地の紛争に関与することになる。世界平和から逆行する。現在は、武器輸出を厳格にコントロールすることこそが必要だ。

○これまで武器を輸出しない平和国家としての国際的な評価が地に落ちる。これは、紛争の多い開発途上国への支援に大きな支障をもたらす。

○今は軍事企業の規模はさほど大きくはないが、世界有数の武器輸出国になる可能性は十分ある。世界的に軍産複合体は、国家レベルでコントロールできぬまでに大きくなっている。軍産複合体は、紛争を煽り、さらに復興支援をすることで利益を上げ続ける。わが国の軍事企業が、そうした腐敗した軍産複合体に組み込まれる可能性が高い。

○武器・軍事技術は、いったん海外に移転したら、どこに渡るかは分からない。非友好国・テロ集団へ渡る可能性も十分ある。

○武器輸出により、特定の国家・集団に加担することにより、わが国が彼らに敵対していると見なされる。現に、ISISは、わが国を有志連合に所属すると述べており、武器輸出を含めた有志連合への軍事面でのさらなる加担で、わが国、在外邦人がテロの標的になる可能性が高くなる。武器輸出は、紛争に直接関与することに他ならない。



武器輸出で利益がでた、喜ばしい、ということだけでは済まないのだ。武器輸出により、さまざまな軍事的な緊張が高まれば、それに対する防衛対策を取らねばならなくなる。その国家予算をねん出するために、市民生活がさらに犠牲になる。

世界的な視野で、この問題に対処しなければならない。

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