病床削減の現実 

わが国の病床数は、外国と比べると多い。厚労省は、強制的に病床の介護施設への転換、ないし削減を目指している。目的は医療費削減である。手法の大部分は、診療報酬上、慢性期病床が経営的に立ち行かなくすることだ。福島原発近くの病院ですら、この記事にあるような状態なのだから、他地域は推して知るべしである。

病床を減らして、そこに入るべき患者さんはどうなるのか。介護施設は、追い付かないし、入所者にはコストもかかる。で、在宅医療の推進ということになる。それもスタッフが十分でないし、何よりも家族の負担がきわめて大きくなる。今後、団塊世代に医療の必要が出たとき・・・すぐそこなのだが・・・どのような状況になるのだろうか。

以下、引用~~~

「診療報酬改訂の荒波で病床が流される」 福島県双葉郡広野町・高野病院奮戦記 第6回

高野病院事務長
高野己保

2016年7月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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平成28年の診療報酬改定後、5月の上旬に当院からの最初の請求が終わりました。医療機関が行う請求とは、患者さんが受けた診療について、健康保険組合などの公的医療保険の運営者に医療費の明細を提出することです。明細はレセプトと呼ばれ、診療や処方した薬の費用が記載されています。これをもとに医療機関に診療報酬が支払われます。

高野病院は公床118床のうち、65床が医療型療養病床として稼働しています。療養病床とは、その名の通り長期の療養を必要とする、慢性期の患者さんを対象とする病床です。高齢化が進み、国民医療費に占める高齢者の費用の割合が大きくなり、それを抑制するために、一か月の点滴や検査などを一定の枠内に制限する、いわゆる「まるめ」と言われる制度を採り入れ、平成13年に
導入されたのです。それから15年、国は現在、地域医療構想として療養病床の?機能分化?を図る制度を進めています。療養病床における機能分化とは、介護もしくは在宅への移行するようにとのことです。

療養病床は医療区分3・2・1とADL区分A~Iに分類されて評価されます。平成28年3月末現在、当院に入院されている患者さんたちは、医療の必要性が高いとされている区分3に入る患者さんが全体の32%前後、医療の必要が低いとされている医療区分1の患者さんは1%、残りの67%は医療区分2に該当していました。

しかしながら、今回の診療報酬改定で大問題が起こりました。医療区分3が見直され、その割合が平成28年4月末で20%に減らされてしまったのです。今回の当院での見直しは、主に酸素療法と血糖検査に関してでした。酸素を毎日3L以上必要としたり、3L未満でも重篤な肺炎や心不全などを合併したりしていなければ、医療区分3には認定されなくなりました。血糖検査についても、インスリン製剤やソマトメジンC製剤を1日1回以上注射し、1日3回以上の頻回な血糖検査がなければ同様に区分3には認定されません。重症度がより高くないと認定されなくなったのです。医療区分の重症度を高くし、医療機関の診療報酬を引き下げ、入院の必要のない、いわゆる社会的入院と呼ばれている患者さんを、できるだけ家庭に戻し、医療費の削減につなげようという政策の流れ
からは致し方ないのかもしれません。

しかし、当然医療区分が下がれば、診療報酬上の点数も下がり、病院の収入は減ります。医療機関は施設基準で人員の配置が定められているため、診療報酬からの収入が減ったからといって、人員を整理することはできません。当然、人件費が経営を圧迫します。正直に言えば、今は毎日出口のない迷路を彷徨っているか、はたまた上がりの見えないすごろくをしているような気持ちです。国が療養病床の削減を進めている状況では、病院の運営は今後成り立たなくなってくる。訪問看護に力を入れようかと考えても、まだ住民が普通の生活に戻っていない地域では、無駄ではないにしても、現状では地域住民のニーズに即さないし、在宅を担う医師を確保できていない。病床を減らし患者さんと職員減らすことも、病院として存続するためには、当然考えます。

では人員配置を楽にするために、国が勧める老人保健施設に転換しようかと思えば、療養病床と同等の重症度の方たちを受け入れる施設で、今より人数を少なくしたスタッフではたして人の定着がはかれるのかわからない。そしてそもそも震災後必死に集めたスタッフを辞めさせることが、この地域の医療や住民のためになるのか。そして、病床を減らして、仮設に患者さんを戻すことが、まだ地域包括ケアが確立していないこの地域で、本当に本当に大丈夫なのだろうか。毎日毎日、道を見出しては進もうとするのですが、マンパワー、住民の生活が安定していない、などの問題にぶつかり、引き返し、また別の道を探す毎日なのです。

この5年間地域医療を死守すべく頑張ってきた院長も、この4月で81歳になり、体調も思わしくない日が続いています。この地でずっと患者さんと向き合ってきた院長ですが、このまま常勤の医師が確保できなければ、最悪の場合、すべての病床を返還しなければならない事態に陥る可能性もあります。私たちは何のためにこの地域の医療環境を守ってきたのでしょうか。私たちが病床を返還すれば、この地域に入院機能をもった医療機関はなくなります。まだまだ復興していない地域で、今回の診療報酬改定、国の方針の波は、あまりにも大きいものです。

震災の時に、そこにあってはならないとされた高野病院は、とうとう病床自体が、あってはならない病院とされてしまいつつあるのです。

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