選挙では争点にならなかった、社会福祉の削減が目白押し 

この記事は参議院選挙前の公表されたもの。

記事内容から推測される、政府当局が国民に提供しようとするプライマリーケアの医療体制とは、

「かかりつけ医」以外にはかからせない、市販薬にある薬剤は自己負担で(ゆくゆくは米国のように薬剤はすべて自己負担にしたいのだろう)、高次医療機関には直接受診させない、医療をもっとも必要とする高齢者の自己負担を増やす(おそらく、個人番号制で把握される保有資産の額によって、自己負担を際限なく増やすことも行われる)、効果・市場への供給の継続性に問題のあるものも含む後発薬のみを保険で扱い、先発薬は自己負担にする、

といったことだろう。

社会福祉予算の削減は、国民にとって痛みの伴うことだ。だからと言って、選挙戦で議論しないのは誤りだ。他の政策・・・とくに、大企業を対象とする法人税減税、大企業内部留保、租税回避問題、拡大する財政投融資等について、社会保障削減とのバランスが取れているのか、選挙でこそ議論すべきだったのだ。低所得者2000万人に1万5千円を現金で配ることが、いかにばかばかしい政策であることだろう。

インフレターゲット政策も突き詰めると、国民の財を政府の側に移転することだ。ハイパーインフレになれば、政府の借金は激減する。インフレによりデフレ状態を脱却するというのはドグマに過ぎない。現在は需要が減少するために表面的にデフレになっているに過ぎない。これから、本格的な人口減少社会に突入するために、ソフトランディングを考えなくてはならないのだ。社会福祉の充実こそが必要なのだ。

社会福祉予算の切り詰めと、インフレ誘導は、社会のなかで一番弱い層にもっとも強い痛みを与える。

以下、引用~~~

伝えられない医療改革、あらゆる世代で患者負担増に ~これでいいのか?国
民的議論がない参院選~

この原稿はJBPRESS にて2016年7月6日に配信されたものです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47249

武蔵浦和メディカルセンター
ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕

2016年8月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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参議院選挙(7月10日投開票)がいよいよ今週末に迫ってきました。今回の選挙戦を見ていて残念なことがあります。それは医療改革についての議論がきわめて不十分だということです。
現有議席が最大の自民党は、「総合政策集2016」の中で「国民が安心できる持続可能な医療の実現」を謳っています。
具体的には、「後発医薬品の使用拡大、二重診療(過剰投与)の抑制、さらには給食給付(医療上必要なものは除く)など保険給付の対象となる療養範囲の適正化を図り、保険料負担をはじめ国民負担の増大を抑制します」とのことです。
一方で、総合政策集には記載されていませんが、政府は方針として、年間8000億~1兆円の社会保障費自然増加分を年間3000~5000億円に大幅に抑制することを打ち出し、2015年12月には「経済・財政アクションプログラムの工程表」を完成させています。
この工程表には、あらゆる世代にとって負担増となる具体的な患者負担増・給付抑制策が列挙されています。
ところが、このことはほとんどマスコミに取り上げられていません。国民的議論が行われることなくこのまま投票を迎えるのは、とてももったいないことだと思います。

●2016年4月から行われている自己負担増
「経済・財政アクションプログラムの工程表」の中で2016年4月からすでに導入されているのは、紹介状なく大病院で受診する際の窓口負担増(参考:「本当の狙いは?『大病院で再診2500円』のインパクト」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46502)、 そして入院時の食事代の患者負担増です。
紹介状を持たずに大病院で受診すると、初診5000円や再診2500円の自己負担が追加されます。診察中心の標準的なケースでは自己負担は約2倍 に増えることになります。また、入院時の食事代の患者負担額も「1食あたり260円から460円へ」と実に70%もの値上げとなっています。
今までが安く済んできたという事情があるとはいえ、いずれも自己負担金額の増加割合で考えると、倍近くの急激な値上げが行われています。

●2016年度内に実施決定が見込まれる負担増政策
これから参院選後に実施されることが見込まれる医療改革も、同様のインパクトを自己負担に与えるものばかりです。
経済財政再生計画の工程表の中で、2016年度中に法案提出および実施を目指すと明記されているのは、以下の通りです。
「かかりつけ医」以外の受診で窓口負担増
保険給付は後発医薬品までとし、先発医薬品との差額は自己負担
入院時の居住費(水光熱費)の負担増
市販類似医薬品の負担増や保険外し
70歳以上の患者負担上限額引き上げ
介護利用料の1割から2割負担へと、負担上限度額引き上げ
「軽症者」の福祉用具貸与などの保険外し
これらの狙いと効果、インパクトについて見ていきましょう。

●「かかりつけ医」と相談して疑問点の解決を
まず、「『かかりつけ医』以外の医師に診てもらう際は、窓口負担増」とされています。医療のフリーアクセス制度がとられている日本では、複数の医療機関を回る利用者が少なくありません。その状況への対策と考えられます。
例えば、1カ月前に胃内視鏡検査を受けて「異常なし」だったにもかかわらず、検査結果が正しいか不安だから、別の医療機関を受診してもう一度胃内 視鏡検査をしてほしいと希望する人がいます。医師が必要性を認めず患者希望で行う検査は保険対象外なので、患者は、検査を受けた医療機関に不明点を改めて問い合わせるべきでしょう。
また、「このような検査結果でこの薬を処方されて飲んでいるが、それが正しいのか確認したいから、別の同じ科目の医療機関を受診したい」という場合、これも、セカンドオピニオンなので保険の対象外になります。検査と処方を受けた医療機関で、まずは疑問点を相談するべきということになります。
このように、「かかりつけ医」としっかり相談して疑問点を解決すれば、無駄な受診や検査を防ぐことができます。フリーアクセスの悪用対策という意味で、利用者にとっては不便かもしれませんが一定の意義のある方策だと思います


●保険給付薬剤は必要最低限でも十分か?
次は、「保険給付は後発医薬品までとし、先発医薬品との差額は自己負担とする」という項目です(後発医薬品と先発品の違いは、以前のコラム「先発品と『同じ』?誤解されているジェネリック」[ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44202 ] をご覧ください)。
「後発医薬品と先発品の成分は同じだが、有効性が違う場合がある」「後発医薬品には安定供給に不安なものがある」という2つの点をしっかり認めた上で、“医療費節約のために、保険適応は後発医薬品までとする”ということであれば、政策として「あり」かとは思います。
もちろん、作用機序の上で血中濃度の測定だけでは有効性が担保できない可能性のある後発医薬品について、そして、安定供給が不十分な場合には、救済措置の整備が必須でしょう。
この項目については、2017年度中に結論を出すとされていますが、せっかくの選挙の機会に、「保険で給付する薬剤は必要最低限でも十分か?」に関して国民の間で議論がなされないのは残念な限りです。

●制度上はすっきりするけれど自己負担は・・・
「市販類似医薬品(=薬局でも購入可能な医薬品)は負担を増やし、保険の対象から外す」としている項目はどうでしょうか。
それまで3割負担だった患者負担が10割負担になったら、大きなインパクトをもたらします。
私が専門としている胃腸科と肛門科では、薬局でも購入可能な胃薬や痔の軟膏を「今は痛くないけれど、(胃や肛門が)痛くなった時のために処方してほしい」という要望を受けることがほぼ毎日のようにあります。
薬を希望される気持ちはよく分かるのですが、現在、症状がないのであれば、保険処方の対象外のはずです。しかし、2~3カ月に1回は必要になることが見込まれる場合にも保険対象外の自費で処方するべきなのか、現在の制度ではグレーゾーンとなっています。
薬局で購入可能な薬については自己負担割合を増やす、ないしは保険対象外になれば、確かに制度上はすっきりすると思います。「せっかく医療機関に 来たのだから、ついでに薬をもらった方が“お得”」という状況も解消されることしょう。でも、これこそが、自己負担増に多大なインパクトを与えることが必 至の変更です。
「70歳以上の患者負担上限額引き上げ」や「介護利用料の1割から2割負担へと、負担上限度額引き上げ」という項目も、対象となる人にとって自己負担が倍増することは言うまでもありません。

●選挙戦で議論されないのは大きな問題
このように見ていけば、“国民が安心できる持続可能な医療の実現”という文言が、いかに選挙向けのキャッチフレーズにすぎないかということが分かるのではないでしょうか。「今のところ決定した事実はない」という政治的答弁で、議論されないまま選挙が行われてしまうのは大きな問題と言わざるをえません。
選挙戦では、「保育士さんの処遇改善をこれからもやっていく。介護離職をゼロにしていく」といった耳障りのいい演説をする候補も見受けられます。
けれども、医療においてこれまで述べてきたことが既に決定されており、あらゆる世代に負担増となる医療改革が迫っています。そのことを、皆さんにはぜひ知っていただき、心構えを持ってほしいと思います。

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