厚労省が医師の人事権を握ろうとしている 

このところささやかれていた噂が、厚労省の諮問会議から現実の提案として提起された。

保険医になる(すなわち、臨床医として仕事をする)ための条件として、僻地勤務を義務付けるというわけだ。期間は一年から半年だそうだ。

突っ込みどころ満載なのだが、毎年8000人から4000人の若い医師を、受け入れる僻地がどこにあるのだろうか。各県、100数十名の医師が配置されることになる。場所によっては、僻地などない都道府県もある。

医師の労働する場所の選択の自由は一体どうなるのだろうか。労働の権利・選択権を阻害することにならないのか。医師を教育するのに莫大なコストがかかっている、だから義務があるとしばしば語られる。だが、そのコストには大学病院の運営コストが含まれており、医学部といえどもほかの理系学部とそれほど教育費用に差はない。医師の基本的人権に属する、労働の選択の自由を制限する根拠にはならない。

保険医、それに時には専門医資格とのからみで、この僻地就業が議論されるが、地域医療の崩壊の責任は、保険医や専門医にはない。厚生労働省の政策、とりわけ新臨床研修制度によって、地域医療の崩壊が起きたのだ。そのしりぬぐいを若い医師にさせるのはお門違いだろう。

この提言をまとめた、尾身茂氏は、公衆衛生・医療行政の専門家(のはず)だ。彼の名で思い起こすのは、新型インフルエンザ流行時の厚労省専門家会議の長であったことだ。のちに、彼は当時の検疫対策よりも地域での感染拡大を重視すべきだったなどと言っているが、流行当時は、行政のスポークスマンであり、検疫にも効果はあったと明言している。空港検疫など有害無益であったことは、その後多くの専門家が指摘している。こちら。また、彼は自治医大の一期生、自治医大の元教授でもある。自治医大の設立趣旨はその後守られているのか、またはあの設立趣旨で医師を教育してきたことが間違っていなかったのか、をこそ彼は検証すべきではないのか。官僚の意向を提言するだけの無責任さは頂けない。ここでまた行政のお先棒担ぎをするのか。

結局、この保険医資格取得に際する僻地診療の義務化は、行政が医師すべての人事権を握るための施策である。行政は、かって大学医局が行ってきた人事制度を自分たちが行えると踏んでいる。その人事権の背後にある大きな利権を見込んでの話だ

だが、結局、彼らの目論見は失敗に終わる。それが明らかになる過程で、地域医療はさらに窮乏化する。

以下、引用~~~

保険医の条件に「医師不足地域の経験」 偏在解消へ提案
16/10/07記事:朝日新聞

 地方や一部の診療科で医師が不足している問題について、厚生労働省の分科会で6日、医師不足地域での勤務経験を公的医療保険による診療ができる保険医として登録するための条件にすることを、専門家が提案した。目立った反対意見はなく、厚労省は今後、この提案を盛り込んだ医師偏在対策案を示す。
 
 「地方の医師不足を助長しかねない」と導入が来春に延期された専門医制度に関連し、地域医療機能推進機構の尾身茂理事長が提案した。
 
 尾身氏はまず、将来の人口や主要な病気の変化も考え、都道府県などごとに一定の幅がある各診療科別の専門医の「研修枠」を設けることを提案。その上で、保険医の登録や保険医療機関の責任者になる条件に、医師不足地域での一定期間の勤務を求めた。具体的な勤務期間として、医師の「不足」地域は1年、「極めて不足」「離島など」は半年と例示し、「地域偏在の解消に最も実効性がある対策の一つ」と訴えた。
 
 委員からは「考え方は賛成」などと目立った反対意見はなかったが、実現には「法改正や関係者間のきめ細かい協議が必要と思われる」(尾身氏)。医師不足地域での勤務経験がなくても全額患者負担の自由診療はできるが、国民皆保険の日本では医療費の大部分は保険診療なだけに、論議を呼びそうだ。(寺崎省子)

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