FC2ブログ

小児救急 私論 

小児救急について、ネット上、またネット以外の媒体でも、議論が続けられている。救急患者の半分が、小児科患者であり、小児科医が疲弊していて、救急システムが崩壊しつつあるからだ。

医療は、経済現象と同じく、医師や医療機関という供給と、患者という需要のバランスで成立している。小児科医のメーリングリストや、医師のサイトでも、小児救急の供給を増やすことは限度がある、需要をいかに抑えるか、要するに救急にかかる小児科患者をいかに減らすかということが主な議論点になっている。

小児救急患者の、他の科との大きな違いは、親の存在がある。小児救急患者の内、医学的にみて本当に救急医療の必要な患者は、1、2割程度だろうと思う。大多数は、救急で対応しなくても良い患者だ。一方、残りの大多数の患者も二群に分けられるような気がする。一つは、親が子のことを心配になり救急に駆けつける。もう一方では、元来救急受診は必要ないが、親の都合・救急ですぐに診察を受けたい群であり、この群は繰り返し救急を受診する、いわばリピーターだ。各群は、オーバーラップすることもあるし、これは単純化した分類になるが、まとめると;

1)救急の本当に必要な群;中には重症者も含まれる
2)親が心配して救急にかかる群;大多数は軽症で救急不要
3)リピーター群;
3-1)親が共稼ぎで夜間しか受診できぬ等社会的な問題がある
3-2)親の医療についての意識に問題があり、表面上の利便性を求め    て、夜間・休日に受診する

一方、供給サイドでは、繰り返すが、小児科医とくに勤務医は少なく、当直勤務で疲弊しきっている。官僚・政治家の医療費抑制・医師数抑制の意向もあり、小児科医は絶対的に不足している。その不足人数を増やす方策も、当面ない。また、医師・パラメディカルスタッフの数が限られているのだから、夜間・休日は、供給サイドも手薄になるのは当然のことだ。

そこで、需要を抑制しなければならないという議論になる。特に、分類上3-2の群が、近年大きく増えてきていることが問題で、そのような患者・家族への対応が大きな問題になっている。議論されている対応方法は、経済的なデメリットを与える、最小限の投薬しか行わない、深夜帯に受診したら原則入院をさせる、電話による相談を受ける、トリアージをして患者を振り分けるといった対応が検討され、一部実施されている。小児医療の無料化も3-2のような群を増やすので、慎重にすべきだという意見もある。

経済的に患者に大きな負担を与えることは、1)から3)群すべての受診を等しく抑制する可能性があるので、私は、大きな負担を与えることには反対だ。この方法では、救急医療の一番の目的である、1)群を見出すことに結果として反する可能性がある。

しかし、需要を抑制するための、こうした検討は必要なことだ。官僚や政治家は、こうした表面的に住民サービスへの低下になるようなことには積極的にならないが、それに抗してでも、検討・実施してゆく必要がある。

こうした需要抑制策と相俟って、私は、患者・家族への教育、より良い医師患者関係の確立が必要だと思う。2)および3)の大部分には、診療よりも、患者の親への説明・教育が必要だ。さらに、その説明は、患者・家族の個別の特性・家庭環境等々を理解し、時間をかけて行う必要がある。これは、本当の意味でのかかりつけ医の役割だ。官僚が患者の医療機関へのアクセスを制限するために持ち出してくる、かかりつけ医ではない、本当の意味で普段から様々に接する医師と、患者・家族の関係。それは時間をかけて築き上げる信頼に基づいている。

現状では、そうした関係を結ぶには、小児科医はあまりに忙しすぎる。また、個々の診療に時間を割いていたら、経営が成り立たない診療報酬になっている。一人一人の患者さんに十分時間がかけられるだけのマンパワー・その経済的な裏づけが足りない。無制限に供給を増やすのは非現実的だが、現時点では、供給の面でも、医師・患者双方にとってとても不幸な状況にあるのではないか。

時々、ローカルの医師会の救急診療所で仕事をするが、そこで出会う患者さんには、翌日まで何とか乗り切れればよいという発想でしか、仕事ができない。患者のためを考え、また小児救急システムの保持のために、患者とその親に話をすべきかと思うこともあるが、そこで一度だけの出会いであるとなると、問題が微妙なことがらであるだけに、話さないで最小限の治療をするだけで終りにすることが多い。所謂、救急医療センターの診療にも、こうした問題があるのではないか、と常々考えている。この問題を乗り切るためにも、上記の信頼に基づく医師・患者関係の確立が必要であるように思える。

PS;上記は、医療を供給する側の論理であって、患者サイドからは別の視点があるだろうことは重々承知している。現状では、互いに離反するのではなく、与えられた条件でより良い医療を構築するために手を携える必要がある。特に、医療が音を立てて崩壊しつつある現状について、同じ認識に立つことがとても大切だ。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/420-fa5ee1b7

小児救急の抑制策は

昨日のエントリーを書いた時点から今日のエントリーを予定したわけではありませんが、それでも続編風になります。昨日書いたお話の結論は、どんなにニーズ論を唱えられても24時間365日コンビニ小児救急の成立は物理的に不可能というものです。不可能なので小児救急が目指さ

  • [2007/04/28 14:10]
  • URL |
  • 新小児科医のつぶやき |
  • TOP ▲