権力からの恫喝にひるむことなく、ワッチドッグたる役目を果たす米国のマスコミ 

昨夜、午前一時過ぎ、NHKラジオ第一は、トランプ次期米国大統領の記者会見の模様を実況中継していた。寝床で最初だけ聞いた。一か月ぶりの記者会見だ。えらい剣幕でCNNの記者を恫喝している。CNNの質問には答えない、と怒鳴っていた。下記の江川紹子氏の論説にある通り、CNNが、トランプとロシア中枢との関係を報じたことに腹を立ててのことだ。記者会見では、これまでロシアとの関係を否定してきたが、その前言を撤回し、「プーチンに気に入られたならそれは一つの資産だ」と間が抜けたことを述べている。大統領選挙にロシアが手を出したとすると、米国にとっては重大事件のはずなのだが、それをトランプは追及することにきわめて消極的だ。CNN報道への怒りと、この消極的な問題対応は、トランプがロシアと裏でつながっていることを疑わせるに十分である。

江川氏によれば、政治的立場が保守寄りのFOXニュースのキャスターが、その後の番組で、CNNを擁護し、「CNNの記者はジャーナリストの規範に従っており、彼らだけでなく、他のどんなジャーナリストも、米国の次期大統領による誹謗中傷に屈してはなりません」と述べたという。米国のマスコミは、すべてではないかもしれないが、権力者に対する批判的精神が息づいていることを改めて述べたものだ。

翻って、わが国のマスコミはどうだろうか。

大手マスコミの記者たちは、記者クラブで守られ、安倍首相・官邸付きの記者たちは、定期的に安倍首相と酒食をともにしている。あろうことか、その費用は政府持ちである。。さらに、政府は、広報予算として毎年80億円をマスコミに配っている。すべてとは言わないが、マスコミの多くが政府の代弁者に成り下がっている。政治評論家の多くが政府から金をもらっていることが判明している。特に、田崎史郎という評論家は、朝から晩までテレビに出ずっぱりで、政府の代弁者・広報者の役目を果たしている。彼にも、政府から金が渡っている。この体たらくでは、権力のワッチドッグたるマスコミの役目が果たせるはずがない。

以下、引用~~~

違いを超えて報道の自由を守る~トランプ氏に非難されたCNNをFOXが擁護
江川紹子 | ジャーナリスト
1/12(木) 19:17

ドナルド・トランプ氏が、次期大統領となって初めての記者会見。その前日、ロシアがトランプ氏の個人情報を集めていたことを示す文書の存在を報じたCNNなどを、トランプ氏は「嘘ニュース」などと激しく非難し、同社記者の質問には一切応えなかった。そうしたトランプ氏の姿勢に、CNNのライバル局であり保守的なFOXニュースのキャスターが、番組内でCNNを擁護し、権力者のジャーナリストに対する攻撃を許さない姿勢を示した。

CNNの報道によれば、ロシアが米大統領選に介入したとされる問題で、オバマ大統領やトランプ次期大統領らが米情報当局高官から受け取った報告書の中に、ロシアがトランプ氏の個人情報や財政情報も集めていたことを示す極秘文書が含まれている。文書の元になっているのは、英国の情報機関の元工作員がまとめた35ページ分のメモで、CNNはそのメモの内容も入手したが、その詳細については、独自の確認がとれていないために報道を差し控える、とした。

一方、インターネットメディアの米バズフィードニュースは、そのメモを全ページ写真で掲載。そこには、ロシアによるトランプ支援や、同氏がサンクトペテルブルクに滞在した際の贈賄や女性問題の疑惑などの情報が書かれている。

これに対しトランプ氏は、「虚偽ニュースだ。まったく政治的な魔女狩りだ」などと反論していた。

自社で裏付けがとれた事実だけを伝えたCNNと、「米国民自身が判断できるように」と未確認の情報を丸々公開したバズフィードニュースの判断の違いは、既存の報道機関と新興ネットメディアの性格の違いを反映している、とも言えるかもしれない。

佐藤栄作元首相の会見では

しかし、トランプ氏は記者会見で、両者とも激しく非難し、CNNがあたかもバズフィードを元にして報じたような発言もあった。これに対してCNNの記者が質問しようとしたが、トランプ氏は「(質問するのは)おまえじゃない。おまえの社はひどい。嘘ニュースだ」「お前じゃない!黙れ!」などと言って質問させなかった。

その様子は、かつての日本の首相、佐藤栄作氏が退任する時の記者会見を彷彿とさせた。佐藤氏は「新聞社の諸君とは話をしない」「偏向的な新聞は大嫌いだ。直接国民に話をしたい」と言い、それに抗議した記者に対し、机を叩いて「出てって下さい」と気色ばんだ。記者たちはその場を引き揚げ、佐藤首相はがらんとした会見場で、後方のテレビカメラに向かって、言いたいことを語った。
トランプ氏が、当選が決まって以降、記者会見を開かずにツイッターで言いたいことだけを一方的に発信してきたのも、直接批判をされたり、都合の悪いことを問い詰められるのがイヤだからだろう。それにしても、トランプ氏の場合は、就任前にもうこれである。大統領になれば、その政策や言動への論評など、批判にさらされる機会は増えるだろう。これから最低4年間、彼はいったいどんなメディア対応をしていくつもりなのだろうか……。

権力者のメディアへの圧力にどう対応するか

CNNは、トランプ氏の対応に、「入念な取材に基づいて我が国の政府の動向についての情報を公にしたCNNの判断は、裏付けのないメモの公表に踏み切ったバズフィードの判断とはまったく異なる。トランプ陣営はそのことを知りながら、バズフィードの判断を利用し(問題を一緒くたにして)、CNNの報道から人々の注意をそらそうとしている」と批判。さらに、報道には自信を持っており、批判を続けるトランプ陣営には「何が事実に反するというのか特定してもらいたい」としている。

私の関心は、CNNに対するトランプ氏の対応に、他のメディアがどう反応するかだった。
なぜなら、権力を監視するのがメディアの役割であって、批判的に報じるメディアは排除するというやり方を許していては、他のメディアが次のターゲットになることもありうるからだ。ツイッターで企業を脅して、その経営方針に介入していくように、特定メディアへの取材拒否を許せば、他のメディアに対する恫喝にもなりうる。

こうした問題について、日本の状況はどうだろう。私が思い出すのは、2013年夏の参議院選挙を前にした自民党のTBSに対する取材拒否事件だ。

2013年6月25日に閉幕した第183回通常国会で、いくつかの重要法案が廃案になったことを報じたTBSのニュース番組について、自民党は「廃案の責任が全て与党側にあると視聴者が誤解する」と抗議。番組では与党に批判的なコメント以上の時間をとって、安倍首相など与党関係者の発言が紹介されていたのだが、同党は「参議院選挙の公示日に、TBSの取材や幹部の出演を拒否すると通告した。選挙期間中に政権与党の取材ができなくなれば、報道機関としてのダメージは大きい。結局、TBSは”詫び状”めいた文書を自民党に提出して、処分を解除してもらうことになる。

この時、私が記憶している限り、他メディアは距離を置いて見守っているだけだった。報道の自由に対する政権与党の不当な圧力と受け止め、即座に自らの言葉で批判的な論評を加えたメディアを、私は知らない。

過去には、特定メディアやジャーナリストに対する圧力や攻撃に対し、他のメディアやその関係者が戦ったこともある。たとえば毎日新聞の西山太吉記者が沖縄密約報道の後に逮捕・起訴された事件では、現読売新聞主筆の渡辺恒雄氏が紙面で西山擁護の論陣を張ったし、裁判には渡辺氏のほか、当時読売新聞記者で、その後日本テレビ会長となる氏家齊一郎氏(故人)、朝日新聞で常務となる富森叡児氏などが弁護側証人となった。

立場の違いを超えて

果たして、今回のトランプ氏のCNN攻撃に対し、米メディアがどう対応するのか……。そう思っていたら、まず飛び込んできたのが、FOXニュースのキャスター、シェパード・スミス氏の番組での発言だった。

彼はカメラをまっすぐ見据え、ゆっくりはっきり、そしてきっぱりと、次のように述べた。
「トランプ次期大統領は本日、CNNのジム・アコスタ記者に、お前の社は嘘ニュースだ、と述べました。ロシア関係のCNNの特ダネは、オンラインニュースメディアが(精査することなく)出したメモ類とは、根本的に別物です。我々はフォックスニュースでCNNの報道(の正否を)を確認することはできませんが、我々の見解は以下の通りです。CNNの記者はジャーナリストの規範に従っており、彼らだけでなく、他のどんなジャーナリストも、米国の次期大統領による誹謗中傷に屈してはなりません

FOXニュースといえば、CNNと同じニュース専門チャンネルで、いわばライバル局。政治的なスタンスはリベラルなCNNに対して、保守的で共和党寄りだ。それでも、権力者が特定メディアを攻撃してきた時には、立場の違いや社益を超えて、取材・報道の自由を守るという観点から、はっきり批判を加える。

日本のジャーナリズムに関わる者たちは、このFOXニュースの対応から、大いに学んで欲しい。

コメント

ジャーナリストの戦う伝統

Wは新聞社等は武装レベルの警備の伝統ある国ですし、ジャーナリストが終身雇用でないからその場その場でテストされているようなものです。日本の場合は終身雇用のひとがリスクをとらないでしょうし、まともにさからったときに本気でタマねらわれたらひとたまりもないでしょう。

韓国で産経新聞記者がやられたときに一枚岩でなかった日本でそうそう期待はできないでしょう。

Re: ジャーナリストの戦う伝統

しかし、今のまま、権力とベッタリでは、それも人々から見放される道ではないかと思うのですが。

米国で、トランプの今回の記者会見の内容に関して、fact checkを行い、「50%があからさまな嘘、84%が部分的に嘘だと分かった」と、あちらのマスコミが報じているようです。post truthの問題に関して、あちらはよりシビアに対応しているようです。

わが国でも、雑誌類はまだまだ健全な批判精神を維持していると思うのですが・・・とくにテレビは酷いですね。

問題は、ポピュリズムが勃興する政治社会状況にあるわけで、そちらに対処してゆくべきなのでしょう。

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