戦前の治安維持法、沖縄の問題そしてテロ等組織犯罪準備罪対策法 

以前、キリスト教独立学園高校、その創設者の鈴木弼美のことを記したことがある。こちら。このところ、両親の残した蔵書を整理していて、同高校の創立50周年の記念誌を発見した。1980年代に編まれたもののようだ。鈴木自身、さらに同高校の設立・維持・発展に関わってこられた方々、卒業生の方々が長短取り交ぜた文章を寄稿している。1000ページにも及ぼうかという浩瀚な書物だ。

そのなかで、渡辺彌一郎という方の記した、鈴木弼美との交流記が目を引いた。1920年代だったか、同地で無教会主義の伝道を始めた鈴木が同地に定着するための手助けをし、さらに鈴木がそこに高校(の前身の学校)を建設した際に援助をした現地のか方のお一人が、渡辺であった。個人的な苦悩から鈴木の下でキリスト教に入信した渡辺は、しかし、戦時中、特高警察に鈴木とともに逮捕されてしまう。当初、「国体」に反逆する者達だけを検挙するためとして導入された、治安維持法が、どんどん拡大されて行き、山形の山奥で静かにキリスト教信仰に基づく学びと信仰の生活を送っていた彼らをも、逮捕するまでになっていったのである。鈴木と渡辺は、特高警察の執拗な尋問に対して、自らの潔白と、信仰とを表明した。その拘禁は8か月にも及んだ。外部の人々の援助と、何よりも彼ら自身の毅然とした態度によって、検察は彼らを釈放せざるを得なくなった。その一部始終が、手に取るように記録されていた。平和な生活を送っていた二人が、特高警察(現在でいえば、公安警察となるのだろう)によって、何も容疑がないのに突然逮捕され、日常生活から連れ去られる恐怖はいかばかりだったかと思う。ご家族・仕事をともになさっていた方々はどのような思いだったことだろうか。彼らは、堅固な信仰に立ち、何らやましいところがなかく、助かることができた。が、特高警察の尋問は苛烈を極めた様子が、この記録に記されている。朝、拘置所から尋問のために連れ出された人が、帰ってくるときには、自力で歩けぬほどになるのを何度も目にした、とある。拷問が行われていたのだ。治安維持法によって、こうした狂った警察活動が、いたるところで繰り広げられた。国民の間に疑心暗鬼が広がり、密告も多くなされたという。お二人がその信仰によってその過酷な運命を生き延びたことにまずは驚嘆させられる。が同時に、治安維持法がいかに国民を苦しめるだけの悪法であったかということを改めて教えてくれる。

この記事を読んで思い起こしたのは、沖縄で反基地活動を行い、微罪で逮捕され、現在も拘置され続けている、山城博治のことだ。彼は、起訴されて、拘留される理由がないのに、100日以上拘留され続けている。彼は2年前に悪性リンパ腫を患っている。そのフォローも十分されていない。家族との面会もゆるされていない。国際人権NGOアムネスティが、彼の逮捕・長期間拘留の非人道性を国際的に訴えている。こちら。これも一種の治安維持法的な拘禁ではないか。テロ等組織犯罪対策法ができれば、このようなケースでは、さらに多くの方を逮捕し、長期間拘留する根拠を権力側に与えることになる。また、国民の間の密告が奨励されることになる。

現在、国会で審議されているテロ等組織犯罪対策法という名の共謀罪法案は、戦前の治安維持法とその法的意味合いは同様である。国会答弁で、安倍首相は、この法案の対象は、テロ等の組織犯罪であり、一般人は対象にならないと繰り返し述べている。だが、昨日の審議で「オレオレ詐欺」を対象にするとも述べた。オレオレ詐欺のどこが一体テロ等組織犯罪なのだろうか。安倍首相は、オレオレ詐欺という身近な犯罪にもこの法律で対処できるようになる、だからこの法案を支持してほしい、という積りだったのかもしれないが、この論理は、同法案がいかようにも拡大解釈できることを示している。安倍首相と警察・検察の意図は、治安対策にこの法律を用いることなのではないか。安保法制の審議中に、安倍首相がその必要性を外国で有事の際に、邦人を救い出すためと説明していた。だが、実際は内戦状態にある南スーダンへの自衛隊派遣、駆けつけ警護という名の内戦への参画であった。また、米軍との統一行動にも結び付けようとしている。安保法制の国民への説明は、ほとんど詐欺同然であった。それと同じことが、このテロ等組織犯罪対策法の説明でも行われている。

戦前、治安維持法により、国民がどれだけの災禍に見舞われたか、先に述べたキリスト教独立学園高校のお二人の経験から我々は学ぶべきだ。そして、沖縄でも同じようなことが進行している。次は我々がターゲットにされる可能性がある。このテロ等組織犯罪準備罪という新たな犯罪名は、オリンピックのための一時的なものではなく、今後我々の思想信条の自由を永続的に縛り上げる根拠になる。

(以上、敬称省略)

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Re: 共謀罪

Yさん お久しぶりです。HPH活動というもの、よく知りませんでした。調べてみると・・・それが、医療の本来あるべき姿ですね。どうぞお体を大切に、今後とも活動をお続けください。

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