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政府の医師不足対策 

政府の医師不足対策は、自治医大と同じ地域医療への縛りをつけた入学枠を各地の国公立大学医学部に設けるという案のようだ。奨学金を貸与、義務年限を勤め上げたら、返済免除。自治医大の全国版だ。

これでは、医師不足を解決しない。

その理由は・・・

○以前から繰り返し言ってきたが、医師が一人前になるのには大学入学後10年以上はかかる。これから先、10年間は、どうしようというのか?

○学生の主体性を、制限することになり、制度として成り立つか疑問だ。大学入学前に、一生の決定をするのは無理がある。医学を学ぶ過程で、基礎医学・社会医学に興味を持つかもしれない。また、基礎と臨床を結ぶ研究職にモチベーションを抱くかもしれない。そうした、学生の主体的な自己決定権を、制度上縛ることは、学生・社会双方にとって好ましくない。「入学前からへき地勤務を前提条件とし、在学中に学費貸与などで支援すれば、問題ない」というのは、行政の勝手な論理だ。

○このプランは、医師不足を起した原因・理由を検討したうえで作られたプランではない。これまで医師の増員に関する、行政当局の誤った施策を自己批判していない。ということは、医師数を僅かに増やす方向になし崩し的に実質上方向転換しても、医療費削減は継続するということになる。また、うやむやの内に無責任な朝令暮改を繰り返す可能性が高い。行政当局、それを支持し協同してきた政治家には、まずこれまでの政策の誤りを認め、それの反省から、より根本的な対策を採ってもらいたい。それが、翻って、この医師不足対策に多少なりとも意味を与えることになる。

・・・・・・・

自治医大が出来て、既に30年以上経った。卒業生を何人も知っているが、皆優秀な方々だった。自治医大卒業生が実際に僻地勤務するのは、義務年限9年間の内、2年ほどだと聞く。若い医師が、医師として成長するためには、基幹病院などで教育指導を受け続けることが必要なことを示しているのだろう。

また一方では、自治医大卒業生が各自治体での義務年限を終えた後のポストが用意されていないといった噂も聞いたことがある。自治医大のこれまでの実績・問題点を理解した上で、このプランを作ったのだろうか。私には、どうしてもそうは思えない・・・思い付きの机上の空論のような気がしてならない。


以下、引用~~~

医学部に地域勤務枠…全国250人、授業料を免除

政府・与党方針、卒業後へき地で10年

 政府・与党は12日、へき地や離島など地域の医師不足・偏在を解消するため、全国の大学の医学部に、卒業後10年程度はへき地など地域医療に従事することを条件とした「地域医療枠(仮称)」の新設を認める方針を固めた。

 地域枠は、47都道府県ごとに年5人程度、全国で約250人の定員増を想定している。地域枠の学生には、授業料の免除といった優遇措置を設ける。政府・与党が週明けにも開く、医師不足に関する協議会がまとめる新たな医師確保対策の中心となる見通しだ。

医師確保対策 医師の不足や偏在を改善するための対策。厚生労働、文部科学両省などは2006年8月に新たな「総合対策」を策定。医師不足で悩む県にある大学医学部の定員増を暫定的に認めたことが柱。医師数は1982年の閣議で「過剰を招かないよう、適正な水準を保つ」と決定しており、新対策は事実上の方向転換となった。

 地域枠のモデルとなるのは、1972年に全国の都道府県が共同で設立した自治医科大学(高久史麿学長、栃木県下野市)だ。同大では、在学中の学費などは大学側が貸与し、学生は、卒業後、自分の出身都道府県でのへき地などの地域医療に9年間従事すれば、学費返済などが全額免除される。事実上、へき地勤務を義務づけている形だ。

 新たな医師確保対策で、政府・与党は、この“自治医大方式”を全国に拡大することを想定している。全国には医学部を持つ国公立と私立大学が計80大学ある。このうち、地域枠を設けた大学に対し、政府・与党は、交付金などによる財政支援を検討している。

 医療行政に影響力を持つ自民党の丹羽総務会長は12日、新潟市内での講演で、「自治医大の制度を全国47都道府県の国公立大などに拡大したらどうか。5人ずつ増やせば、へき地での医師不足は間違いなく解消する」と述べ、“自治医大方式”の拡大を提案した。

 医学部を卒業した学生にへき地勤務を義務づけることは当初、「職業選択の自由に抵触する恐れがある」との指摘もあった。だが、「入学前からへき地勤務を前提条件とし、在学中に学費貸与などで支援すれば、問題ない」と判断した。

 政府は昨年8月、「医師確保総合対策」を策定し、医師不足で悩む県にある大学医学部の定員増を暫定的に認め、2008年度から最大110人を認めた。しかし、医師不足解消の見通しは立たず、来年度予算編成に向け、追加対策が必要だとの声が政府・与党内から出ていた。

 今回、新たに地域医療を強化するのは、現在の医師不足問題が、医師の絶対数不足よりも、都市と地方の医師の偏在に、より問題があるとみているためだ。

 厚労省によると、人口10万人当たりの医師数は、全国平均の211・7人(2004年)に対し、青森(173・7人)、岩手(179・1人)、岐阜(171・3人)などと東北を中心に平均を大きく下回る。東京(278・4人)など大都市との格差が大きい。また、02年度の立ち入り検査では、全国の4分の1の病院で医師数が医療法の基準を下回った。

 政府・与党は、医師不足問題に関する協議会で、「新たな医師確保対策」をまとめ、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)2007」にも新たな医師確保対策を盛り込む方針だ。


(読売新聞、2007年5月13日)

コメント

僻地枠の実効性は?

読売新聞によると、僻地の医師が足りないので国立大学医学部の授業料を免除する僻地枠をつくるとか。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070513it01.htm?from=top

しかし、医学部6年間の授業料は国立では320万円程度です。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/koukyou/other/ot02.html

これでは、僻地枠で入学しても、授業料減免分を返済して僻地から逃げると思います。


なお、1980年代に医学部を増やしたからといって、僻地の医師はあまり増えていません。

Kobayashi Y, Takaki H. Geographic distribution of physicians in Japan. Lancet.
1992 Dec 5;340(8832):1391-3.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=1360099&query_hl=11&itool=pubmed_DocSum

地方の医師を増やすには、年限を切った地方派遣と労働環境の整備(給与をあげるより、睡眠時間の確保が先決です)が必須です。

江原朗

仰られる通りですね。

官僚は、この事実を知らないのでしょうか。

若い方々を、制度と金で縛るのは、納得できません。現在の僻地医療の状況を改善し、現にそこで頑張っている医師を厚遇すること、それによって地域医療に飛び込もうという医師が増えるようになるのでしょうね。

貴重な情報をありがとうございました。

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