Jim K9JWVからの最後のメール 

二週間ほど前、Jim K9JWVから、肺がんの脊椎への転移が酷くなり、ホスピスに入ることにした、余命は2か月と言われている、とメールがあった。

彼とは、それほど親しいわけではなかったが、7メガ等で何度か交信をした方だ。以前紹介したが、QRPとトップハットのついた43フィートのバーチカルで信じられぬほど強力な信号をこちらに飛ばしてきた。大学で教えておられるらしかったが、詳しい専門等は聞かずじまいだった。平坦な砂漠地帯の住宅地に居を構え、無線を楽しんでおられるリタイアをそろそろしようかという年齢の方というイメージを抱いていた。その彼が、肺がんに冒され、闘病生活に入ることを聞いたのは昨年のことだったろうか。

何度かメールのやり取りをして、彼が効果が出ることを期待して、化学療法を受ける、という話を聞いてから、パタッと連絡が途絶えていた。そして、最初に記した通りのメールが来たのだ。

死を目前にした方に、何を語るべきなのだろう。彼のように、個人的にそれほど知っているわけでもなく、無線で話を多少しただけだったら、なおさらだ。ただ、彼の語ることに耳を傾けるだけしかできない。その旨を彼に書き送り、とても差し出がましいこととは思いつつ、もしクラシックを聴くのであれば、マタイ受難曲を聞いてみてほしいと申し上げた。メールのやり取りは、それで終わってしまった。武満徹が、亡くなる直前にこの曲を聴いて、改めてこころ動かされたという話を、奥様が書き残されている。それを、西岡昌紀氏がご自身のブログで紹介なさっている。こちら。あの有名なアリアEr barme dichをことのほか愛聴なさっていた由。私自身も、死の川を過ぎゆくときに、この音楽を聴いていたいと思っている。余計なことかと思いつつ、彼がこの音楽に慰めを見出し、新たな旅立ちへの気持ちを持てたら、と思ったのだ。

実は、Jimとは別に、まだ若い小児科医の方で、進行した肺がんと闘っておられる方が、しばらく前から拙ブログに訪れて下さっていた。忙しい小児科医の仕事を、痛みや他の不快な症状と闘いながら、こなしておられた。が、この1週間ほど前に、彼は足跡を消し、忽然と姿を見せなくなった。彼のブログをブックマークしていなかったので、そこを訪れることができないのが残念なのだが、恐らくブログも閉じてしまわれたのだろう。ご家族を抱え、これから仕事が充実するときに、このように深刻な病に冒された心境は、はかりしれないものがある。新しい免疫調節薬に期待をかけておられたのだが・・・。彼のことがあったので、Jimの件を紹介するのを憚っていたのだ・・・。

最近、両親の残した大量の日記、手紙類を処分しつつ、それらに登場する人物、差出人の多くが、すでに逝去された方々であることをひしひしと感じた。我々の人生は、すぐに過ぎ去る。我々は、一時の旅人なのだ。上記の小児科医の方には、ぜひ新しいクスリの効果が出ることを期待している・・・が、我々は、この旅をそう遠くない時に終えることになる。それは皆同じなのだ。こころ穏やかにそうした時を迎えたいものだ。それまで、悔いの残らぬように、周囲の者に迷惑をかけず、愛情をもって生きてゆくことだろう・・・。

Jimの最後のメールには、マタイ受難曲の音源を探してみる、とあった・・・。

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