人格攻撃をする政権 

前川前文科省事務次官の証言が公開される直前、読売新聞が同氏の「出会い系バー」通いを「スク―プして」、社会面の一面に掲載した。それと時を同じくして、菅官房長官は、この件をあげつらい、さらに彼の事務次官退任の際にそのポジションに恋々としていたとして、前川氏の人格攻撃を行った。人格下劣であるから、前川氏の言葉は信用できない、という世論を作るつもりだったのだろう。

だが、その後の経過は、読売新聞、菅官房長官の意図とは逆の方向に進んでいる。読売新聞には、抗議が殺到しているらしい。こともあろうか、それに社会部部長が紙面で反論をしていた。反論と言っても、何も目新しいことはなく、(官邸の警察官僚から情報を流してもらったのではなく)ちゃんと取材したという根拠のない内容だった。その反論記事が、読売新聞への「批判はまったく当たらない。」という文章で始まっている。そうだ、菅官房長官の十八番の頭ごなしの否定の文句である。もしかすると、菅官房長官が原稿を書いたのかも、と思わせる文面である。

読売新聞と菅官房長官の人格攻撃は、根拠がない。政治行政の私物化が問われている、森友加計問題と本質的に何の関係もない。権力を持つ政権が、歯向かう者・抵抗する者・批判する者に対して、このように卑劣な牙を向けるやり方は、必ず国民にも行う。それを法制化するのが、共謀罪法案の本質だろう。

以下、「田中良紹のブログ」より引用~~~

 6月2日付Yahooニュース 読売新聞は「週刊文春」報道にどう応えるのか(田中良紹)

加計学園の認可問題を巡り、文科省が安倍官邸から圧力を受けていたことを明らかにした前川喜平前事務次官の告発に対し、安倍官邸は前川氏が「歌舞伎町の出会い系バー」に通っていたことを読売新聞に書かせそれを反撃の切り札にした。
前川氏の身の下問題を暴露する人格攻撃で前川証言の信ぴょう性を疑わせようとしたのである。この手の人格攻撃は権力の常套手段だが、リーク先に選ばれるのは通常「週刊文春」か「週刊新潮」である。それが今回は読売新聞という一般紙にリークされた。ニュースとは言えないゴシップが一般紙の社会面を飾ったのはおそらく初めてのケースである。

極めて珍しいケースだけにまず私はどういう事情で安倍官邸が読売に書かせたのか、その裏舞台を探れば安倍政権の置かれている現状が明らかになると思った。そして同時に驚かされたのが菅官房長官の記者会見である。

薄ら笑いを浮かべながら「教育行政のトップが出会い系バーに行き小遣いまで与えていたことに、国民のみなさんもそうでしょうが極めて違和感を感ずる」と発言した。私はかつて中曽根内閣時代に後藤田官房長官の番記者をやった経験がある。その経験からしてこの記者会見に極めて強い違和感を覚えた。

官房長官とは総理大臣を支える女房役であると同時に霞が関の行政機構を統括する内閣の要である。米国で言えば副大統領と大統領報道官を合わせたような重要な役職を担う。身の下問題を暴露して相手を攻撃するような下賤の仕事はしない。
後藤田官房長官は中曽根総理が米国の要請を受けペルシャ湾に日本の海上自衛隊を派遣し機雷掃海に従事させようとしたとき、身を挺して派遣に反対し中曽根総理を翻意させたことがある。官房長官はただの総理の使い走りではなく国家の命運を総理と同等のレベルで考える人間なのである。

ところが菅官房長官は安倍総理の「お友達への特別待遇」に疑惑が生じているとき、その疑惑にまともに応えようとせず、まるで総理の使い走りであるかのように低レベルの身の下攻撃を鬼の首を取ったかのように会見で語った。

その姿に私は菅官房長官の人間としての浅ましさ、同時に官房長官という役職にある者の発言とは思えない違和感を覚えた。政治未熟児の安倍総理とは異なり、これまで何度もまともな判断を下してきたと思っていただけに、この会見で私の菅官房長官に対する評価は一変した。この程度の人間が官房長官の地位にあることに国家の行く末が案じられる。

私は前川前事務次官の「出会い系バー通い」が身の下問題であったとしても、それで今回の告発が信用に値しないことにはならないと考えていた。ところが1日発売の「週刊文春」が「出会い系バー」の女性に取材したインタビュー記事を掲載した。それを読むとこれは全く身の下問題ではない。

記者会見で前川氏は「出会い系バー」に行った理由を若者の貧困問題に対する関心からだと語り、それを大方の人間は「ふざけるな」と疑っていたわけだが、記事は前川氏の発言を裏付けている。前川氏に相談していた女性は「前川氏によって救われた」と語り、女性の両親も前川氏がこの問題で攻撃を受けていることに同情しているというのである。

記事の通りならそれはむしろ美談である。決して菅官房長官が勘ぐる汚らしい話ではない。記事の裏付けが取れれば菅官房長官は不明を愧じ前川氏に謝罪しなければならない話だと思う。記者会見であれだけのことを言ったのだから菅官房長官は当然裏付けを取り、適切な対応をすべきである。

そして官房長官以上に問題なのは社会面で大きく報じた読売新聞である。読売の社会部といえば昔は一目置かれる存在だった。前川氏が通う歌舞伎町の「出会い系バー」を取材したのであれば当然「週刊文春」が取材した女性を取材しているはずである。前川氏と最も関係のあった女性に取材もしないで新聞社が記事を書くはずはないからだ。

取材をしていながら読売新聞が「週刊文春」が書いた内容を記事にしなかったのはなぜか。結果として読売新聞と「週刊文春」とではまるで印象が異なる。「週刊文春」が事実と異なる印象操作をしているのか、それとも読売新聞が印象操作をしているのか、その黒白をつけてもらいたい。そうでないと国民はフェイクニュースに迷惑させられる。

もし仮にその女性に取材しないまま記事にしたというのなら新聞として大問題である。「週刊新潮」は官邸から読売にリークがあったと報じているが、それなら読売新聞は官邸の言う通りにフェイクニュースを掲載したことになる。

読売新聞が自らを「社会の公器」と位置付けているのであれば経緯を国民に説明する義務がある。それが出来なければ「社会の公器」をやめて読売新聞はイエロー・ペーパーを自認することだ。

安倍総理はまだこの問題で自分が「印象操作」されていると被害者面で強弁している。しかし「週刊文春」の記事の通りならを前川氏こそ「印象操作」の被害者である。前川氏に対する「印象操作」を行ったのは誰か。勝手に読売がやったと言うつもりか。
菅官房長官は杉田和博内閣官房副長官が前川氏に「出会い系バー通い」を厳重注意したと語っている。つまり警察出身の官房副長官は以前から「出会い系バー通い」を知っていた。ありうるのはやはり官邸による「印象操作」である。その頂点がいかにも嬉しそうに前川氏を批判した菅官房長官の記者会見だ。

これらすべては「週刊文春」の記事に誤りがない前提での話である。読売新聞を使って「印象操作」をやってしまったばっかりに「週刊文春」も「週刊新潮」もこの問題では官邸に冷ややかである。官邸はこれからどう対応していくのだろうか。まさか「共謀罪」をちらつかせて週刊誌を委縮させようとはしないだろうね。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/4902-8b458f9b