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ブラームス 六つの小品 作品118 

夜、眠りに就くときに、音楽を聴くことがある。音楽が、こころを落ち着かせてくれるからだ。

選曲を間違えると、むしろ目が冴えてしまう。しばらく、マーラーの5番、特に最初の楽章、それに有名なアダージェットを聴いてきた。時々は、以前にも触れた、トゥリーナの室内楽、とくにピアノ四重奏曲を聴くこともあった。神経を鋭敏にさせる、緊張を強いる音楽、または音楽的な思弁を必要とする音楽は、たとえ好みの音楽であっても不可だ。一度、バッハのオルガン曲をかけたら、目が醒めてしまったことがある。ベートーベンの弦楽四重奏曲などもあまり好ましくない。

ここ数日、ブラームスの「六つの小品」作品118を聴いている。演奏は、バックハウス。1から4分程度の小曲を集めた、ブラームス晩年のピアノのための作品だ。大分前に、音源は手に入れてあり、何度か聴いてきたが、もう一つぴんとこなかった。しかし、ブラームスが、その晩年の作品に込めた思いを、これらの作品からも聴くことがようやくできたような気がする。人生への諦観が、底流に流れ、そこで熱い思いと、闘う気概と、そして慰める意思とが、直接こころに訴えかけてくる。感情を揺さぶったり、宇宙大の思弁の世界にさそったりしない。至高の宗教的な世界でもない。ブラームス、その人が、晩年に到達した思いを、一切の虚飾を排して、自分の言葉で語りかけてくるのを聴く思いがする。それが、ここになって、ようやく分かった気がした。バックハウスのピアノも、大げさな表面的な表情を付けることなく、剛直なまでに率直に、この音楽の精神を表現している。

学生オケ時代、某女子大の練習場で練習を終え、暗くなったキャンパスを、友人達と連れ立って一緒に帰ることがあった。世間話や、馬鹿話、それに音楽の話をしながら。当時コンマスをしていた後輩のTが、どうした文脈であったか忘れたが、「ブラームスのインテルメッツォは良いですよね・・・。」と言ったのを、思い出した。当時の我々にとっては、ブラームスは特別の存在だった。ブラームスのクラリネット五重奏曲・ピアノ四重奏曲1番・・・オケのメンバーが、合わせているのを羨望の眼差しで見たり、自分達でもちょっと合わせてみたりしていたものだった。ピアノ曲のインテルメッツォをじっくり聴いて、その良さを理解するまでに、30ウン年の年月がかかってしまった。白熱電灯の街灯に照らし出された、Tの横顔と、彼の真剣な口調を、昨日のように思い起こす。

しばらくは、寝る前の、または夢の世界に誘ってくれる音楽が、この「六つの小品」であり続けるのかもしれない。

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