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ボンヘッファー、そして若井晋氏 

英語ブログにも詳しく紹介した、ボンヘッファーの詩について、ボンヘッファーに絡まる記憶について記しておきたい。内容の一部は以前のポストと二重になる。

ボンヘッファーの名を初めて知ったのは、1970年代後半、高橋聖書研究会に通っていたころのことだった。日曜日の午後、都立大学駅近くにあった今井館という古い集会施設で、読書会が開かれた。夏から秋にかけてのことだった。そこで取り上げられた本が、ボンヘッファーの「抵抗と信従」であった。ドイツ語のテキストを対照させ、読み進めるという勉強会だった。抵抗することは、他の何かにつき従うことである、ということを学んだ記憶がある。ボンヘッファーが優れた福音派の牧師・神学者であり、ナチスへの抵抗運動に加わり、ナチスが負ける少し前に処刑された人物であることも知った。その後、ドイツにおけるナチス抵抗運動の記録には、彼が必ず登場することを知った。

現在、安倍晋三は、日本を戦前の体制に引き戻し、そこでさらなる権力の集中を画策している。それは、米国への隷従に伴う戦争・武力衝突に自衛隊を加担させ、さらにはわが国自体を戦場にしようとすることである。それは、戦前の「国体」を実現させることを目的としている。米国隷従が、その意図とは相いれないことを彼は無視する。米国にはますます追従することになる。それは、米国が主導した戦後民主主義体制と矛盾し、我が国の国民を苦難に追い込むことは明らかである。

そうした政治的な動きのなかで、ナチスという全体主義に抵抗したボンヘッファーに再び出会ったことになる。勿論、今のところ、ナチスの時代ほどは切迫していない。だが、このすぐ先に、放漫国家財政と高齢化による困窮によって内部から崩壊するのか、戦争への加担による外力で崩壊するか、という瀬戸際にいる。ボンヘッファーの生き方から学ぶべきことは多い。

もう一つ、その読書会で、以前から何度か紹介させ頂いた若井晋氏と出会った。彼は、東大の医学部専門課程に進学されたばかりで、少し若い私に、まるで弟に相対するかのように接してくださった。その後、近くの医大で仕事をする時期が、二、三年間、彼と重なったことがあった。廊下等で行き交うと、いつもこぼれるような笑顔で、一言、二言、声をかけて下さった。彼は、基礎の仕事をなさり、そこから脳外科の臨床に移られた。海外医療協力にも出かけJOCSの幹部も務められた。50歳前後で、母校の教授として転出されたことを聞いていた。だが、その数年後、アルツハイマーを発症され、大学を辞めざるを得なかった。その事実を公表もなさっている。以前に紹介したが、こちら。もう70歳前後になられたはず。ご家族、周囲の方々の手厚い看護、介護もあり、比較的ゆっくりな経過であった。だが、最近、私の家族から聞いたところでは、すでに意思疎通が難しく、常に横臥の状態にある様子だ。彼は、医療を通して、常に他者のために生きた。そして、今、自らの信念、信仰に基づき、自らの存在を通して若年性アルツハイマーという病気を世の中に知らしめるべく戦っている。私の思いの中で、その姿が、ボンヘッファーと重なってくる。

東独で生まれ1973年に西独に逃れたアマチュア無線の友人がいる。Reinhart 現在のDL7UF/W7である。彼は、その後米国に移住なさった。彼とは1980年代に7メガでしばしば交信をした。数年前、SNSで再びめぐり逢い、それほど頻繁ではないが、コメントをしあったりしていた。彼が、昨年暮れに、ボンヘッファーの詩と、それをある方が曲に乗せて歌うクリップを公開された。その詩は、ボンヘッファーが捕らえられやがて処刑される直前に記されたとある。美しく、こころうつ詩である。処刑されるのを前にして、クリスマスの日に澄み切ったこころで感謝を歌っている。Reinhartによる英語への翻訳と説明が下記の文章である。最後に、演奏のyouotubeのurlがある。お聞きになられることをお勧めしたい。

以下、引用~~~

Dietrich Bonhoeffer, theologian and anti-Nazi dissident, wrote the poem “Von Guten Mächten wunderbar geborgen…” in a concentration camp on Christmas 1944 not too long before he was executed. An amazing man… One the family’s favorite songs. Brother Volker sent this link just before the start of the New Year in Germany

By loving forces silently surrounded,
I feel quite soothed, secure, and filled with grace.
So I would like to live these days together,
and go with you into another year.
Still matters of the past are pressing our hearts
and evil days are weighing down on us.
Oh Lord, to our souls, so scared and sore,
give rescue, as it's that you made us for.
And when you pass to us the bitter chalice
of suffering, filled to the brim and more,
we take it, full of thanks and trembling not,
from this, your caring and beloved hand.
But if you want to please us, over and again,
with our shining sun and wondrous world,
let us muse on what is past, and then we shall,
with our lives, in all belong to you.
Warm and bright be our candles' flame today,
since into gloom you brought a gleaming light,
and lead again us, if you will, together!
We know it: you are beaming in the night.
When silence now will snow around us ev'rywhere,
so let us hear the all-embracing sound
of greater things than we can see and wider,
your world, and all your children's soaring hail.
By loving forces wonderfully sheltered,
we are awaiting fearlessly what comes.
God is with us at dusk and in the morning
and most assuredly on ev'ry day.

https://youtu.be/aN7dGz6NH5M

コメント

途方に暮れも

 管理人様
 新年のご挨拶を申しげます。
 昨年一年も毎日のように愛読させていただきました。感謝します。
 管理人様の記事に政治的話題が多くなったのは、時代の危機を強く反映している結果だと思いますが、本当に危機的時代に突入していると途方にくれます。
 ボンヘッファーは、小生が最も尊敬する人の一人です。彼の歩みを振り返る時に、彼は他の人がまだ十分危険を認識しなかったときに、すでにヒトラーの危険性を認識していました。そしてキリスト者としての良心に従って抵抗したわけですが、それでもヒトラーの悪魔的な行動を止めることができなかった。
 しかし今は現政権の欺瞞性を多くの人は気づいているが、それをいかにして止めることができるか、と途方にくれます。ボンヘッファーの時代と全く違うのでポスト真実と呼ばれる時代に、どのような抵抗が可能で良いのか、答えを見出すことができません。
 それでも今年は改めて、ボンヘッファーの著作を読む営みを課そうと思っています。自分自身キリスト者でありながら、パウロが2コリント4.7-18で述べているように信仰と状態に達しえないことを悲しく思います。
 すっかり暗いコメントになってしまいましたが、今年も、管理人様の発信を楽しみにしています。一年間の感謝を込めて

ちいろばさん

いつもこのブログを訪れて下さっている由、感謝に堪えません。

ドイツの反ナチス運動の流れを調べると、いくつかの主体があり、ところがことごとく潰されてしまったようです。現在の状態は、報道の自由が抑圧されていますが、少なくともネットを介した見解の発信は国民の間では可能です。この戦前回帰を目指す政権を、若い人々が多く支持しているようです。彼らに向かって、現政権の政策は彼らの人生を台無しにする、生存基盤を危うくするものだということを繰り返し発信すべきではないかと考えています。

ボンヘッファーは、本当に預言者的な優れた人物だったようですね。この詩を読んで、こころが熱くなると同時に、自分では到達できぬ心境かもしれないと感じてしまいました。それと同時に、彼のことをご存知かどうか・・・、アルツハイマーであることをカムアウトされ、その病との闘いの最終章にあられる若井先生を思い出さずにはおれなかったのでした。

浅学未熟なものですが、まだしばらくはこのブログを続けてまいりたいと思っています。またいろいろとご教示ください。この一年の健康を祈りあげます。

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