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死因究明調査組織は機能するか? 

厚生労働省が、診療行為にかかわる死因究明のための調査組織を立ち上げるべく検討している。

医療行為は、本来人体に侵襲を加えるもので、重症であればあるほど、予期せぬ好ましくない効果が現れることがある。さらに、診療行為は、様々な選択肢のなかから、効果の出る可能性の高いものを選ぶ一連の過程だ。医療行為の事後、結果が明らかになってから、それまでの経緯を批判的に検討し、今後の診療行為に生かす作業は、法的責任追及とは、まったく別個に行われなければならない。過去を見直すのは、より良い未来を得るために行うのだ。

意図した犯罪行為や、きわめて重大な過失に対して、法的責任を問われるのは致し方ないのかもしれない。しかし、それは例外的な状況である。法的責任追及は、あくまで過去にだけ向けられた視点である。

この検討委員会のメンバーは、14名、その内、医療関係者は5名。医師も2名含まれているが、大学教授と病院長であり、臨床の第一線で日々医療事故の危険と闘っている臨床医は含まれていない。オブザーバーは、警察・法務省の官僚である。これでは、医療事故に直接係る医師の声が反映されないのではないか。

報告書は、医療事故の「被害者」に対して、医師が反省し「謝罪」する基礎になると断じている。医療事故は、医師に責任のないことが多い。が、報告書は、不幸な転帰をとった患者さんを「被害者」とし、医師は「謝罪」すべきと決め付けている。この調査の方向性が、死因を明らかにし、再発しないようにする未来志向のものではないことを意味しているのではないだろうか。

調査結果が、刑事裁判を始めとする法的解決に利用されることを否定するべきではないと記されている。刑事訴追され、責任追及されることを前提として、関係者は真実を明らかとする作業を行うだろうか。航空機事故の原因究明と、医療事故のそれとがしばしば比較されるが、刑事訴追されるかどうかが、両者の決定的な違いである。さらに、刑事訴追を前提に行う調査が、一般的に行われるとしたら、そうしたリスクのある医療から、医師は撤退することだろう。

医療システムの問題も追及するとしているが、せいぜい医療機関の責任の追及だけを念頭に置いているだけらしい。医療コストをかけず、きわめて乏しいマンパワーで、医師の労働条件は労働基準法を明らかに犯している現状は、問われぬのだろうか。そうした医療事故の直接・間接の誘発原因になっていることがしばしばある。厚生労働省そのものが、「被害者」に「謝罪」する可能性は、最初からないのだろうか。

この調査組織が、表面上の目的を果たせるとは、到底思えない。むしろ、医療の崩壊を推し進めるだけだろう。それは、巡って、国民から適切な医療を受ける権利を剥奪することになる。

以下引用~~~

死因究明のための調査組織は再発防止と信頼回復が目的  厚労省
07/07/30
記事:WIC REPORT
提供:厚生政策情報センター
ID:643482


診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会(第6回 7/26)《厚労省》
 厚生労働省が7月26日に開催した「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」で配布された資料。この日は、これまでの主な議論を再整理した新旧対照表(P24-P52参照)や、前回配布された資料(P53-P71参照)が提示され、死因究明を行うための調査組織について、議論された。
 資料によると、診療関連死の死因究明を行う調査組織は、真相究明をした上で再発防止を図ることが目的。医療従事者が自らの医療事故を究明し、患者側の真相を知りたいという要求に応えるもので、両者間の信頼回復にも有用としている。さらにこの調査結果については、行政処分、民事・刑事訴訟に活用されることを否定すべきではない、としている(P7-P8参照)。真相究明の意味するものは(1)純粋に医学的な観点からの死因究明(2)医療事故の発生に至った根本原因の分析(3)インフォームドコンセントをはじめとした患者・遺族と医療従事者とコミュニケーション等についての評価-の3点を挙げている(P7参照)。調査組織への遺族の参加は、調査・評価の過程において、聞き取り調査や質問等の形での参加を保証しておく必要がある、としているが、調査・評価委員会へ参加は、遺族が参加することにより、十分な議論がしにくい状況が生れることが考えられる、としている(P10参照)。
 また、診療関連死の届出制度については、医療に関する異状死の届出先は、警察ではなく保健所にするよう提案されている(P12参照)。

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