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見当はずれな小児救急医療問題の分析 

救急の患者を数人診て、仕事場の自室に入ってきた。初秋の日差しが差し込むが・・・天井が暗い。明り取りの天窓からの熱気が余りに酷いので、天窓を熱遮断の塗料で塗って、実質光も遮断するようにしたためであることにすぐに気づいた・・・穴倉みたいな部屋になってきた・・・。

それはさておき、小児救急と新生児・乳幼児死亡率の話題が、ある医療系BBSで取り上げられていた。

官僚は、現場を知らずに、机上の空論の報告書をせっせと作って、こと足れりとしているのだろうか・・・。

以下、引用とコメント~~~

小児救急の整備62%止まり 医師不足で目標困難に 乳児死亡率は地域差2倍 厚労相に改善勧告 (1)
07/09/12
記事:共同通信社
提供:共同通信社

 入院が必要な小児救急患者に対する24時間対応の医療体制の整備率が昨年9月現在で、全国396地区の小児救急医療圏の62%に当たる245地区にとどまっていることが総務省の行政評価で分かり、増田寛也総務相は12日、舛添要一厚生労働相に原因の分析や新たな対策を検討するよう改善を勧告した。小児医療に対する行政評価は初めて。

私の仕事場のある県では、二次小児救急医療圏は県を9に分割するように設定されている。この二次小児救急医療圏すべてで、24時間診療を行うのは、元来困難なのではないだろうか。経営面の問題では、「小児初期救急への挑戦」によると、病院の小児救急の採算成立ラインは、準夜帯40人以上、深夜帯50人以上とされている。実際上、これは成立し得ない。当県の二次小児救急医療圏の小児科医数は、3から10名である。この人数で、24時間診療を行うことは無理だ。

新たな対策は、明白だ。小児科医数を増やすこと。それに、診療報酬面で対応すること。現在は、当直と言う名の、夜間労働を小児科医がすることによって、ようやく救急医療が成立しているに過ぎない。この「対策」を講じられないのであれば、患者が救急にアクセスすることにブレーキをかける方策を考えねばならない。

 総務省が実施した都道府県の担当者や医師へのアンケートでは、7割が原因について「小児科医が足りない」と回答。構造的な医師不足を受け、同省は「2009年度末までに整備率100%を目指すとした政府の子ども・子育て応援プランの目標の達成は困難」と指摘している。

2009年度待つまで達成困難というよりも、このままでは永遠に達成できない。この方向への努力は、むしろ小児科救急医療を崩壊させる。

 今回の行政評価ではさらに、2005年の乳児の出生1000人当たりの死亡数に、最大の滋賀県(3.5人)と最小の佐賀県(1.7人)で2倍の開きがあり、乳児と新生児ともに高い死亡率が栃木など8県で常態化するなど、小児医療対策に大きな地域差が生じている実態も浮き彫りになった。

乳児死亡率は、滋賀県の数値でも、国際比較では、決して悪くはないようだ。他の先進諸国の数値は、3から7前後。新生児死亡のある程度は、先天異常などによって起きる不可避の出来事だ。わが国の周産期死亡率は、国際的に見ても、最も優れたレベルにある。新生児・乳児死亡率をさらに下げるように努力することは結構なことだが、現在達成している数値が、あたかも悪いかのような記述は現実を反映せず、公平さを欠く。

 総務省は05年12月からことし9月まで、厚労省や自治体などを調査。その結果、396地区のうち151地区の小児救急医療圏で体制が未整備だった。また整備済みとされていた地区でも、35地区で24時間対応ができず診療の空白時間帯があることが判明。同省は「実際の整備率は62%を下回る」と推定している。

 また乳児と新生児の死亡率が高いとされた8県は、05年まで過去10年間の平均死亡率が全国平均を上回るなど、他の都道府県より際立っていた。このうち栃木、福井、福岡、長崎の4県では「研究手法が分からない」などの理由で原因分析も行っていなかった。

24時間小児救急体制の未整備と、新生児・乳児死亡率との関連があたかもあるような記述だが、強い関連があるようには思えない。死亡率は、ほぼベストの状態にあると言って良い。
 
これを受け総務省は厚労省に対し、原因分析や死亡率の改善策の検討も求めた。

総務省がどのような改善策の指示を行ったか分からないが、やるべきことは、下記の通りハッキリしている。問題は、やる気があるかどうかだ・・・新生児・乳幼児死亡率が、特定地域で特に悪いかのように報じ、その原因を24時間救急医療の未整備に求め、医療現場にさらなる激務を要求するのは、見当はずれも甚だしい。

○産科医療における、内診問題のような現実無視の対応を止める
○産科医療他の救急医療での訴訟を抑制する
○診療報酬全般、とくに小児救急のそれを上げる
○当直が、夜間労働になっている現実を把握、対応する
○小児救急への無制限なアクセスを可能にするシステムを取りやめる、日中に診療を受けるような患者・その親への教育・指導を徹底する


▽小児救急医療圏

 小児救急医療圏 小児救急医療をその地域内で提供できるように区分けした圏域。全国で396地区(2006年9月時点)ある。人口や地理的条件、交通事情などを考慮して複数の市町村をひとまとめにした2次医療圏をベースにした。政府の少子化社会対策会議は「子ども・子育て応援プラン」で、09年度末までにすべての地区で夜間、休日でも適切な医療を提供できる体制を整備するとの目標を決めた。

コメント

夜間の受診

夜間の受診はこんな感じです。

http://pediatrics.news.coocan.jp/my_paper/rinsho59_Sept_2006.html
江原朗.小児救急担当者の夜間における診療と睡眠について.小児科臨床 2006;59:2071-2075.

お久しぶりです。

論文のご紹介をありがとうございました。大学時代に当直をしていたときのことを思い出しながら読ませていただきました。たとえ、2,3時間眠れたとしても、その後は眠りにつけず、翌日死んだようになって再び仕事についていたことを思い出しました。

総務省から厚生省へのこの改善勧告はどのように思われますか。

乳児死亡率が「高い」>24時間救急小児医療が不備>同救急医療を整備すべき、という論理は、事実認識も、論理構成もおかしいように、私は思います。

集約化で問題が解決するかどうかも、かなり疑問があります。小児科医の絶対数が足りなく、集約化によって、結果としてアクセスがし難くなることは、小児科医の負担軽減に繋がりますが、夜間は、いずれにせよ絶対的なマンパワー不足であり、先生の指摘される年間数百万人の夜間小児救急受診患者を担いきれるものではなさそうに思えます。

有意差あるのでしょうか

乳児死亡率に関しては、確率分布がポワソン分布(平均値と分散が等しい)になります。
出産と乳児死亡の実数がわからないので、1000件当たりの乳児死亡で議論させていただきます。
 1000出生あたり2ですと、平均値2、分散2(つまり標準偏差1.4)となります。
 平均プラスマイナス1.4×2では、0から4.8となり、仮に、他の県が4であっても有意差ありといえないのではないでしょうか。

苦難は続く

医療の鉄則であるaccessとcostが並立しなくなった「だけ」の事なんですが、そこに理解が到達するまで、後どれほど待てばよいのでしょうか。まだまだかかりそうですね。

ネットで手に入るデータで乳児死亡率の差を分析してみました。
滋賀県は全国平均と比べると先天異常・奇形による死亡が多いですが、その他の原因の死亡率は全国平均です。
先天異常による死亡は防ぎ得ないものも多く、他の原因の死亡率の比較から見ると医療レベルに差があるのではなく、それ以前の問題(先天異常の出生が多い)ところに問題があるようです。
他の県も似たようなものでしょう。
元記事が言うほどの医療レベルの差は日本国内では存在していないと思いますし、乳児死亡率はどの県でも世界の中ではトップレベルの低さです。元記事は不安をあおっているだけとしか思えませんし、厚生労働省の分析の応力の低さにはあきれます。

皆さん、コメントをありがとうございます。

官僚は、正しい現実認識をしていると信じたいのですが、情報を自らの意図のために故意に曲げて用いているような気がします。

後期高齢者医療の件といい、こうした問題といい、どのようになって行くのでしょうか。

ブログで、吼えるのがせいぜい私にできることですが・・・ほかに何かできることはないのか、と深刻に考えてしまいます。

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