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我々への挽歌 

昨日、夕食の準備をしながら、ブラームス2番をかけた。以前、この曲は初夏の音楽だと記した。その印象は変わらないが、やはり何時聞いても良い音楽だ。ザンデルリンクの指揮するシュターツカペレ。

youtubeで同曲を漁ってみた。小澤征爾がサイトウキネンを引き連れて、ヨーロッパへの演奏旅行をした際の記録がアップされていた。1991年のこと。バブルが崩壊し、我が国が失われた10年、20年に突入する頃。

こちら。

小澤の行うリハ、以前にも観た記憶があるが、結構事細かにオケに指示を出している。ブラ3、3楽章のチェロの有名な旋律、チェロのボーイングを含めて念入りに指示を出している。トップは岩崎恍。

魂を揺さぶられる思いだったのは、ブラ2、1楽章第二主題。この主題、それにそこに至る音楽的な語法に特にこころ惹かれるのだが、サイトウキネンのチェロはすごい。とくに再現部(このclipで行くと、25分の辺り)、チェロがfisでこの旋律を弾き始めるのだが、泣きださんばかりの歌が聞こえる。あのfisの音の広がり、深さは尋常なことではない。これだけの奏者が揃い、そして小澤が指揮をすると、こうした音楽が実現するのか、と感動を新たにした。

サイトウキネンでは日常的なことだが、すでに大家と言われる演奏者が、後ろのプルトで精いっぱい弾いている。憧れの倉田澄子女史も2か3プルトの裏で頑張って弾いている。この光景も聴く者のこころを熱くさせる・・・音楽そのもののもたらす感動ではないのだが・・・。

このオケの演奏者たち、そして小澤という指揮者は、戦後、我が国が成長し続けた時期を、良い面で代表する人々だったのだと改めて思う。戦後の民主主義と右肩上がりの成長に伴い、人々が希望を託してきた人々だったのだ。その社会の在り様が、こうした人々を輩出する一つのファクターだった。

我が国の人口はすでに減少し始めている。人口が減るということは、国力がそがれることを意味する。そうした社会で、これだけの音楽家を輩出し、彼らを支えて行くだけの余力はあるのだろうか。このサイトウキネンという音楽集団は、我が国が誇るべき財産であったと思うと同時に、これからは、このような団体が生まれ、維持されることはなくなってしまうのではないか、という思いを禁じ得ない。

そうであっては欲しくないと思うのだが、社会保障の面だけでなく、日本はこれから坂道をころがり落ちるように衰退の道を歩む。それはまぎれもない確定的な事実だ。サイトウキネンの圧倒的なエネルギーを聴きながら、これからの日本社会の進む方向が、改めてはっきり目の前に現出した。大変残念なことなのだが・・・。

そんなことを考えながらこの曲を聴いていると、サイトウキネン・小澤征爾の演奏するこの曲は、我々への挽歌なのかもしれないという思いが湧いてきた。

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