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広島・長崎の経験を風化させぬために 

核兵器をめぐる情勢は、新たな局面に入ろうとしている。

一つは、核兵器の拡散の問題だ。北朝鮮の問題を挙げるまでもなく、弱小貧困国家の兵器として登場し始めている。テロリストが手に入れるのもそう遠いことではない。核拡散防止条約の網の目をかいくぐって、核兵器が国際関係のなかに出現し始めている。

もう一つは、いわゆる核大国の核軍備の問題だ。彼らは、軍縮の方向には向かっていない。大気圏外での核爆発は、すぐに地球上の汚染をもたらさないために、核兵器使用の閾値は低い。宇宙軍拡の主要な問題になる。また、米国は、「使用可能な核兵器」を開発しようとしている。小型化、可動性を実現した核兵器で、彼らは実戦に用いる積りだ。

その一方で、ICANのような核軍縮運動も引き続き行われている。広島・長崎の記憶を風化させずに、我が国がイニシアチヴをとって核軍縮を世界に訴えてゆくべきなのだ。が、安倍政権は、そうした動きに対して反応しようとしない。安倍首相のこの平和祈念式典での演説は、具体的な核軍縮運動には直接言及せず、核保有国と、そうでない国とを「橋渡し」するのだと述べたに過ぎない。彼の言う「橋渡し」は、現実には、米国の核の傘の下に入り、米国の核戦略の命じるままに動くことでしかない。安倍首相には、核軍縮を進める意志はない。民間の核廃絶運動を、我々が盛り上げてゆくほかない。そして、人類の歴史にとって憂慮すべきこの兵器を地球上から無くすべきなのだ。

広島での被曝の経験から、放射能被曝の安全基準が米国を中心として設定された。だが、その安全基準は、爆心地から10km離れた地点をnegative controlに立てたものだという。これは、明らかに被曝の危険性を低く見積もることになる。また、内部被ばくのリスクも低く見積もることになる。こうした点で、広島・長崎の被爆は、福島第一原発事故に結びつく。これも、忘れてはならない点だ。

広島・長崎の経験は、口承するだけでは、やがて忘れられてゆく。第二次世界大戦のなかにおける、あの悲惨な出来事の意味を、各自が把握し、自分の問題として考えるようにならないといけない。

そのことを改めて感じた8月6日だった。

以下、平和祈念式典における広島市長の平和宣言を引用する。

朝日デジタルより引用~~~

広島市長「核廃絶を人類共通の価値観に」 平和宣言全文
2018年8月6日10時38分

 6日午前に広島市で開かれた平和記念式典で、松井一実市長が「平和宣言」を読み上げた。全文は次の通り。

     ◇

 73年前、今日と同じ月曜日の朝。広島には真夏の太陽が照りつけ、いつも通りの一日が始まろうとしていました。皆さん、あなたや大切な家族がそこにいたらと想像しながら聞いてください。8時15分、目もくらむ一瞬の閃光(せんこう)。摂氏100万度を超える火の球からの強烈な放射線と熱線、そして猛烈な爆風。立ち昇ったきのこ雲の下で何の罪もない多くの命が奪われ、街は破壊し尽くされました。「熱いよう! 痛いよう!」潰(つぶ)れた家の下から母親に助けを求め叫ぶ子どもの声。「水を、水を下さい!」息絶え絶えの呻(うめ)き声、唸(うな)り声。人が焦げる臭気の中、赤い肉をむき出しにして亡霊のごとくさまよう人々。随所で降った黒い雨。脳裏に焼きついた地獄絵図と放射線障害は、生き延びた被爆者の心身を蝕(むしば)み続け、今なお苦悩の根源となっています。

 世界にいまだ1万4千発を超える核兵器がある中、意図的であれ偶発的であれ、核兵器が炸裂(さくれつ)したあの日の広島の姿を再現させ、人々を苦難に陥れる可能性が高まっています。

 被爆者の訴えは、核兵器の恐ろしさを熟知し、それを手にしたいという誘惑を断ち切るための警鐘です。年々被爆者の数が減少する中、その声に耳を傾けることが一層重要になっています。20歳だった被爆者は「核兵器が使われたなら、生あるもの全て死滅し、美しい地球は廃墟(はいきょ)と化すでしょう。世界の指導者は被爆地に集い、その惨状に触れ、核兵器廃絶に向かう道筋だけでもつけてもらいたい。核廃絶ができるような万物の霊長たる人間であってほしい」と訴え、命を大切にし、地球の破局を避けるため、為政者に対し「理性」と洞察力を持って核兵器廃絶に向かうよう求めています。

 昨年、核兵器禁止条約の成立に貢献したICANがノーベル平和賞を受賞し、被爆者の思いが世界に広まりつつあります。その一方で、今世界では自国第一主義が台頭し、核兵器の近代化が進められるなど、各国間に東西冷戦期の緊張関係が再現しかねない状況にあります。

 同じく20歳だった別の被爆者は訴えます。「あのような惨事が二度と世界に起こらないことを願う。過去の事だとして忘却や風化させてしまうことがあっては絶対にならない。人類の英知を傾けることで地球が平和に満ちた場所となることを切に願う」。人類は歴史を忘れ、あるいは直視することを止(や)めたとき、再び重大な過ちを犯してしまいます。だからこそ私たちは「ヒロシマ」を「継続」して語り伝えなければなりません。核兵器の廃絶に向けた取り組みが、各国の為政者の「理性」に基づく行動によって「継続」するようにしなければなりません。

 核抑止や核の傘という考え方は、核兵器の破壊力を誇示し、相手国に恐怖を与えることによって世界の秩序を維持しようとするものであり、長期にわたる世界の安全を保障するには、極めて不安定で危険極まりないものです。為政者は、このことを心に刻んだ上で、NPT(核不拡散条約)に義務づけられた核軍縮を誠実に履行し、さらに、核兵器禁止条約を核兵器のない世界への一里塚とするための取り組みを進めていただきたい。

 私たち市民社会は、朝鮮半島の緊張緩和が今後も対話によって平和裏に進むことを心から希望しています。為政者が勇気を持って行動するために、市民社会は多様性を尊重しながら互いに信頼関係を醸成し、核兵器の廃絶を人類共通の価値観にしていかなければなりません。世界の7600を超える都市で構成する平和首長会議は、そのための環境づくりに力を注ぎます。

 日本政府には、核兵器禁止条約の発効に向けた流れの中で、日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現するためにも、国際社会が核兵器のない世界の実現に向けた対話と協調を進めるよう、その役割を果たしていただきたい。また、平均年齢が82歳を超えた被爆者をはじめ、放射線の影響により心身に苦しみを抱える多くの人々の苦悩に寄り添い、その支援策を充実するとともに、「黒い雨降雨地域」を拡大するよう強く求めます。

 本日、私たちは思いを新たに、原爆犠牲者の御霊(みたま)に衷心より哀悼の誠を捧げ、被爆地長崎、そして世界の人々と共に、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを誓います。

平成30年(2018年)8月6日

広島市長 松井一実

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