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Kol Nidrei 

旧約聖書を考古学的に検証した入門書がある。長谷川修一という研究者の書かれた本。中公新書。一つは「旧約聖書の謎」、次いで記されたのが「聖書考古学」。前者は、かなりアカデミックな記述、一方後者は分かりやすい。聖書の内容を、考古学的視点から検討したもので、面白い。

そもそも旧約聖書は、イスラエルの民が神により選ばれた民であることを述べた書物。紀元8世紀ころ以降に、それまで口承であったものが文字で記されたものと言われている。イスラエルは、旧約聖書が書かれた当時、南北王国の時代を経て、バビロン捕囚の苦難の時期を迎えていた。紀元前6世紀にバビロンから帰ることを許され、再び王国を築こうとしていた。その際に、民族のアイデンティティを維持し、新たな中央集権を築くために旧約聖書が著された、ということのようだ。

長谷川氏の前者の本は、旧約聖書に出てくる7つの事件・逸話を考古学的に検証したものだが、ノアの箱舟・出エジプトからヨナ記の記事まで、残念ながら、聖書にしるされた通りの事実は、歴史的に証明されない、とされている。だが、メソポタミアやエジプトでの碑文や、考古学的に発掘された遺跡等の検討から、それらの記事の背景が浮かび上がる。紀元前10数世紀前の記録から、旧約聖書に記された記事が浮かび上がってくる様には、興奮を禁じ得ない。

エジプトへの移住、そこからカナンへの脱出、さらに南北王国時代を経て滅亡・バビロン捕囚の民族的な苦難を経て、イスラエルに再び王国を築く。それは、ローマ帝国の支配により終焉を迎える。その後、第二次世界大戦が終わるまで、イスラエルの民族は世界各地で、この旧約聖書の契約が実現することを唯一の希望として、民族のアイデンティティを維持してきた。旧約聖書が、民族の同一性を維持するうえで果たした役割は限りなく大きい。

死海文書という一群の最も古い(一部はもっと古いものもエジプトで見つかっているようだが)旧約聖書の原典が見いだされたことは、こうした聖書学の領域でも驚天動地の発見だったようだ。11世紀初頭に書き写されたレニングラード写本が現在出回っている聖書の原典になっている。だが、死海写本は、聖書には「異本」があるということを明らかにした。聖書の記述を一字一句そのまま信じることは、信仰の在り方としては正しいのかもしれないが、聖書の内容に肉薄し、より深く理解しようとする態度とは異なる。聖書の考古学は、これからも研究が続けられ、聖書の意味をより深く理解する助けになるのではないだろうか。

10代の頃、聖書の勉強を何年間かしていた・・・それを思い起こして、懐かしことだった。

というところまでは、長い前置き・・・。

facebookでMargarita Balanasが、チェロアンサンブルをバックに、ブルッフの「コル 二ドライ」を演奏している。この曲は、ブルッフがユダヤ教、ユダヤ民族の音楽に題材をとり、ユダヤ的なものを表現している。前半の苦悶するような旋律は、苦難の歴史を反映しているように思える。一方、後半では天国的な救いの音楽が奏でられる。Balanasの演奏は見事。バックのチェロアンサンブルには、有名なCapson兄弟の弟もいる・・・彼が組織したアンサンブルなのか・・・。ブルッフ自身はユダヤ教徒ではなかったらしいが、ロマン派的なこの音楽にユダヤ民族の歴史を凝縮させた。チェロ奏者には必聴・・・できれば必演の一曲。私も以前トライしたが、最初の数小節で挫折。

この演奏をfacebookにアップしたら、米国人の友人二人、それにイタリア人一人がlikeボタンを押してくれた。前のお二人が、ユダヤ系アメリカ人で・・・やはりね、と一人呟いた。

Balanasの演奏、こちら。

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