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"The Soloist" 

まだ雪深いであろう米国のコロラドに住む友人Cap W0CCAが、メールをくれた。彼は、土木エンジニアでありながら、広大な自宅にリンゴ園を持っている。息子さんがシアトルで麻酔科医のレジデントとして働いている。無線でお目にかかるたびに、彼のリベラルな考えとともに、そうした彼とご家族の生活について伺うのを楽しみにしている。

そのメールには、タイトルの映画を見るようにと記されていた。感動的な映画の由。出演者の一人がチェリストを演じる映画らしい・・・

こちら。

彼が送ってきた、この映画に関するwikiにすべてが記述されている。あるジャーナリストがロスアンジェルスで路上生活者の若者に出会う。その若者は才能あるチェリストで、ジュリアードに学んでいたが、統合失調症を発症したために学業からドロップアウトし、路上生活者になってしまう。チェロが手に入らぬために、弦を二本だけ張ったバイオリンで路上で演奏をしていた。そこで、その記者は彼を社会復帰させようと奮闘し始めるのだが・・・という粗筋らしい。

完璧なハッピーエンドで終わる映画ではなさそうなのは、米国映画らしからぬ筋書きだなと思った。多くの米国映画の場合は、その路上生活者の青年が病気を克服し、カーネギーホールでデビューリサイタルを開く・・・といった筋書きのことが多いからだ。ジャーナリストとの人間的交流、それに統合失調症の現実をきめ細かに描いているようだ・・・面白そうだ。

と同時に、何かこれは実話に基づいているのではないかという思いが湧いた。そこで、この主人公の一人のジャーナリストの名前でググると、確かに、その人物が実在し、ロスアンジェルスタイムスの有名なコラムニストであり、この映画の筋書きのノンフィクションを記し、米国で多くの方に読まれたらしいことが分かった。米国流の映画によくあるハッピーエンディングではないことも、それで理解できた。

とだけ書いて済まそうかと思ったが、二つばかり余計なことを・・・

一つは、統合失調症は極めてありふれた病気なのだ。発症率は100人に1人と言われている。私自身、この病気の多くの方と接してきた。医師を目指す直接のきっかけになったのは、ご家族に統合失調症の方を二人持つ、小学校の教師をなさっていた方・・・生きていらっしゃるとすると、もう80歳近い年齢のはず、お元気だろうかとこれを記しながら、改めて思った・・・と知り合ったことだった。独特の世界に生きる統合失調症の方々と共に生きてみたいと単純に思ったのだ・・・それはいささか偏見の裏返しのような関心でしかなかったと今にして思えば反省しきりなのだが・・・。結局、精神医学には進まなかったが、統合失調症が極めてありふれた病気であり、その病を病む方々を包摂して、ともに生きて行くことを考えることは大切なことだと思う。

もう一つは、米国社会は厳しい競争社会であり、こうした病気を抱える方、または戦争に従事しその後遺症としてアルコールや薬の中毒、そして精神を病む方は、容易に路上生活者に転落して行く。Cap自身、この映画を紹介するメールで、ロスアンジェルスでは路上生活者は珍しくもなんともないのだが、と記していた。わが国も、米国と同じような社会に向かいつつある。とくに、集団的自衛権で米軍の指揮下に入った自衛隊が、海外で戦争に参加するようになる体制は整った。隊員、とくに若手の下位の隊員の絶対数が足りない自衛隊はやがて徴兵制を敷く・・・これは政権与党の多くの政治家が、様々な機会に述べている・・・公然とは口にしていないが、憲法に自衛隊の存在を書き込み、その後9条2項を除き、自衛隊をを実質的に軍に変える。すると、自動的に徴兵制が実現することになる。海外で実際の戦闘に従事した若者のかなりの数が、米国の退役軍人が退役後生きている人生を歩むことを強制されることになる。だから、この話は決して遠い国の出来事とは言えない。

コロラドでリンゴ畑の木々が一斉に開花するととても見事らしい。お互いにあまり歳を取らぬうちに、ロッキーの山々を近く仰ぎ見る、コロラドに彼を訪ねてみたいものだ。

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