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医療事故調査委員会制度原案 

政府。与党による医療事故調査委員会制度原案が公表された。

この案は、厚生労働省の検討委員会の報告内容と殆ど違わない。

違う点は・・・この組織の目的が、診療関連死の死因究明から、「医療事故」調査と拡大されたこと。さらに、医療界に配慮して(配慮した風を装って)、刑事告訴は、「謙抑的に」行うとされたことだろうか。

別なエントリーで取り上げた、小松秀樹氏の見解を読んだ上で、この案の報道に目を通してみて欲しい。

結論、これで医療、とりわけ急性期医療は、存在しがたくなる、または萎縮した形でしか行わざるを得なくなる。これほどに拙速にこの制度の確立を欲する、行政には、それなりの理由・・・恐らく、新たなポジションを獲得するという理由があるのだろう。

これは医療現場だけの問題ではない。国民の側からすると、適切な医療が、受けられなくなる、ということを意味する。医療の結果が悪ければ、医療の専門家以外の属するこの組織で問題にされ、すぐに行政処分はおろか民事・刑事訴訟で訴えられるとなれば、そのようなリスクのある医療は、行われなくなるからだ。結局、国民に痛みを与えることになる。


以下、朝日新聞より引用とコメント~~~

「医療事故調」実現へ 警察関与、重大事のみ 与党案
2007年11月30日

 医療事故をめぐる訴訟や刑事事件の頻発が医師不足の一因とされていることを受け、政府・与党が検討していた医療版「事故調査委員会」制度の原案が29日、明らかになった。医療界の意向を反映して「医療関係者の責任追及を目的としたものではない」と位置づけ、警察による医療死亡事故の捜査は「故意や重大な過失のある事例に限定する」と記したのが特徴だ。来年の通常国会に関連法案を提出、野党の賛成も得て成立させ、09年度中にも制度をスタートさせたい考えだ。

いつの間にか、医療事故全般に対象が拡大されている。医療全般を行政権力を背景に、監視するシステムが成立することになる。

「医療関係者の責任追及を目的としたものではない」というのであれば、調査結果を民事・刑事裁判の資料としない、と何故明言できないのだろうか。

警察の言う、「故意や重大な過失」は曖昧な概念だ。医療の結果が悪いと、業務上過失致死や有印私文書偽造等の罪状で刑事告訴してきたことへの反省がなければ、この警察の言葉には重みがない。

これだけ医療界から、反発・反論があるのに、何故来年中に制度を開始するのか、拙速ではないのか。このニュースを見て、まず第一に疑問に思ったのが、この点だ。医療現場の声を十分聞いたのか。行政の利己的な都合で急いでいないと言えるのか。


 原案は自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」が厚生労働省と法務省、警察庁などと協議してまとめた。これを基に厚労省が法案化する。

医療現場の声がどれだけ反映されたのだろうか。この問題は、医療現場の声を聞かずに決めてよいことなのか。法曹・警察は、医療を崩壊させ、厚生労働省は、それに対して有効な対策を取れぬだけでなく、崩壊を促進させてきた。これらの官僚が、医療を支配し、利権を得、一部の国民に阿るために、拙速に決めてよいものか。政治家よ、問題の在り処が分からず、官僚の言うがままなのか。

 原案によると、「国の組織」として「医療安全調査委員会」を設置する。同委は運営方針を決める中央委員会と、ブロックごとの地方委員会で構成。医療死亡事故の届け出は地方委が一元的に受け付け、「調査チーム」が死因や事故原因究明にあたる。チームは医師や法律家、遺族の立場を代表する人などで構成。「調査報告書」を医療機関と遺族に通知し、個人情報以外は公表して再発防止に役立てる。

調査委員会は、純粋に医学的な検討を行うのであるから、その医療領域の専門家が担うことだ。法曹の人間は、旧態依然とした法体系で、複雑化した医療の問題を裁こうとする。遺族は、物事を感情抜きで見ることはできない。ともに、医療の問題を、科学的に解明する上で、関与すべきでない方々だ。

 焦点だった医療事故への警察の関与については「刑事手続きは悪質な事例に限定するなど、謙抑的に対応すべきもの」と記した。地方委から警察への連絡は「明らかな過失による死亡事故等に限定する」とした。

悪質、謙抑的とは一体何なのか。もし本気で、このようにすると思っているのならば、福島地検は、大野病院事件を即刻公訴取り下げすべきである。

 現在は、医療機関の説明に納得しない遺族は、民事裁判や刑事告訴を通じて死亡に至る経緯を知ろうとする例が多い。新制度により、訴訟が減ることを期待。調査報告書は、医療機関と遺族の和解や調停、示談などにも「活用できる」とした。

訴訟が減ることが期待できるのか。民事・刑事訴訟への道が残されているならば、この調査を足がかりに、告訴される可能性も十分ある。

 新制度は「原因究明には医療の知識がある者が携わるべきだ」との医療界の声や、福島県で06年2月、手術中に患者を死亡させたとして産婦人科医が逮捕され、その是非が論議を呼んだことも踏まえ、専門家が航空機や鉄道事故の原因調査を行う「航空・鉄道事故調査委員会」をモデルに検討された。

専門家が航空機や鉄道事故の原因調査を行う航空・鉄道事故調査委員会をモデルに、調査組織を作ると言いながら、法曹界・遺族サイドの専門家ではない人間を加えるというのは、矛盾だ。行政の都合で拙速に立ち上げられる組織が、医療を完全に崩壊させるという悪夢はご免だ。

コメント

自民党の原案がここにアップされています。

http://www.nishijimahidetoshi.net/report/detail.php?RN=415&PG=t

調査対象は、診療関連死のケースのようです。新聞報道は、医療事故と拡大していましたが、間違いの様子。

それにしても、次に掲げる本質的な点は、厚生労働省の素案そのままです。調査組織に、法曹関係者・遺族サイドの人間を加える、調査は、医療機関に強制する届出と、遺族からの申し出によって始める、調査結果を民事訴訟・刑事訴訟に利用しうる。

医療現場の声を考慮したとありますが、全く考慮されていない。

政治家は、結局、真実ではなく、より声の大きな国民の層の意見に耳を傾けているように思えます。小松秀樹氏の問いかけを理解できないのでしょうか。

青字のコメントのおかげで分かりやすかったです。
なるほど、これは問題ですね。
もっと、良い制度を考えてくれてると思った自分が馬鹿だったか…。

この制度、従来の裁判とあまり変わらないですね。
結局、専門的な分野は専門家間で是非を論じなければ意味がない。
遺族なんてものは、自分に不利な事実は絶対に認めないでしょう。
ましてや、事故調査を申し出る遺族の思考に客観性があるとは思えません。
産科無過失補償制度にしても、この制度にしても、ため息が出ます。
この国は、どうなるんでしょうか。


すみません、もし、仮に先生が事故調査委員会を作るとしたら、どういう組織・仕組みにしますか?
お忙しくなければ、聞いてみたいです。

医療事故原因を調査し究明するのは、第三者の専門家しかありえないのではないでしょうか。現在の医療水準・医療体制で出来ることと、出来ないことをよく分かっており、問題となる医学専門領域の専門家が、問題を分析し、原因を究明して、再発につなげることが一番大切です。

ご遺族の気持ちを受け止め、医療側からの説明を仲介される方も必要でしょうね。

医療がこれだけ分化・高度化した現在、医療側にも患者側にもパラダイムの変化が求められているのではないでしょうか。医療側は、それを悲痛な気持ちで感じているが、社会の側は、ただただ医療側を追及すれば問題が解決するだろうと未だに思っているという状況なのではないでしょうか。

弁護士会のように、同業同士で医療内容を監視し合い、改善を求める組織も必要でしょうね。医師会は、これまで何もしてきませんでした(その権限もなかったのでしょうが)。

なるほど!
医師と患者の間に入る人の存在は考えたことがなかったです。
でも、それは名案ですね。

原因究明は、第三者の専門家、というのには全く同感。
専門家以外には、原因なんて究明できるわけがないですもんね。
問題は非医療者の感情ですね。
いまだに「医師同士、かばい合うつもりだろ」とか「外部の人間を入れないと隠匿されてしまう」とか、声が出そう。
でも、医師同士での議論は、非常に真摯で誠実でした。
大淀事件の時の各ブログを見て、感じました。

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