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医療事故調の本音は、医師の責任追及 

MRICメルマガで、下記の評論が送られてきた。厚生労働省第二次試案の目的は、医師の責任追及にあるというのが、この論者の結論である。

官僚は、一体何を目指そうとしているのだろうか。やがて混合診療に移行する時に、医療の直接の監視を行うためなのか(行政官が、医療内容を監視するなど出来ないことは、医療の現場にいるものとしては、痛いほど分かっているが、彼等官僚は出来ると考えているらしい)。ただ、単に余剰人のポストを作るためなのか(滅茶苦茶な仕事をしてきた社保庁の公務員を、医療の監視に当らせるのか・・・それだけは是非とも止めて頂きたい)。

医療事故の再発を防ぐためには、ペナルティを課す前提なしに、第三者の医療関係者によって原因を究明し、それを現場に適切にフィードバックすることだ。ペナルティを課すことを前提に、法曹関係者・患者側関係者が、原因を究明することには無理がある。

官僚は、医療制度を猫の目のごとく変えてきた。この数年は、それでも一つだけ筋は通してきている。医療費の削減という一点である。この医療事故調も、立ち上げて、うまくいかなければ変えればよい程度に安易に考えているのではないか。この制度は、医療を破壊する。それを知りつつ立ち上げるのは、国民に対して無責任だ。知らない、分からないのであれば、今からでも医療現場の声を聞くことだ。これを繰り返し言っておきたい。

以下、MRICより引用(転載可とされている)、下線は、当ブログ主がつけた~~~

Medical Research Information Center (MRIC) メルマガ 臨時 vol 4


    ■□ 診療関連死の届出義務 □■
     ―死因究明制度・厚労省第二次試案の法的「目的」は?
      (その2・再発防止?)―

                               弁護士  井上清成


1 厚労省第二次試案の「再発防止」の位置付けは?

 平成19年10月に、厚生労働省によって、「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案―第二次試案」が出された。そこでは、医療事故調査委員会を新設する目的として、「原因究明・再発防止」があげられている。ところが、MRICメルマガ臨時vol66(2007年12月25日)の「4つの原因究明―死因究明制度・厚労省第二次試案の法的『目的』は?」で既に述べたとおり、「原因究明・再発防止」にいう「原因究明」は、実は「責任追及」であった。 それでは、もう一つの目的である「再発防止」の位置付けは、どうであろうか。


2 診療関連死の届出範囲

 厚労省第二次試案には、「届出対象となる診療関連死の範囲については、現在の医療事故情報収集等事業の『医療機関における事故等の範囲』を踏まえて定める。」とある。医療事故情報収集等事業は医療法施行規則9条の23で定められ、その第1項第2号にイロハの3つが「範囲」として定められていた。なお、これらの届出の違反に対しては、刑罰などの形のペナルティはない。長いものであるが、そのまま引用する。

 イ 誤った医療又は管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事案

 ロ 誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事案(行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事案の発生を予期しなかったものに限る。)

 ハ イ及びロに掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する事案

 したがって、「医療事故情報収集等事業の『…範囲』を踏まえて定める」のであるならば、診療関連死の範囲もイロハの3つとなるのが自然であろう(そして、ペナルティもない)。


3 届出範囲の合目的的な整理

 とはいっても、イロハの定義は甚だ長たらしくて、わかりにくい。簡潔に整理するのが合理的であろう。当然、医療事故情報収集等事業の目的は医療安全・再発防止であるから、その目的に沿う整理をすることになる。したがって、その本質を最もズバリと言い切っているハの条項に集約するしかない。結局、届出範囲は、イロは削除してハのみ残し、「医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する事案」のみとなるはずである

 ところが、平成19年12月27日に開催された死因究明等検討会において、厚生労働省は全く逆の提案をした。それは、ハを削除して、イロのみを残すというものである。大要、次のとおりであったらしい。

 「医療事故情報収集等事業の届出範囲を踏まえて、届出範囲は、以下のようにしてはどうか。

 ①誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、患者が死亡した事案

 ②誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療に起因して、患者が死亡した事案(行った医療に起因すると疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る。)」


4 不合理な整理をした理由は?

 厚生労働省の提案の①が医療法施行規則のイに相当し、②がロに相当することは明瞭である。つまり、ハの「事故の発生の予防及び再発の防止に資する事案」を敢えてカットした。そのような法技術的に見て不合理な整理をした理由は、何であろうか。

 憶測はどのようにもしうるが、少なくとも法技術的に見て明らかな点がある。もしもハを削除せずに残していたとするならば、ハにはペナルティを課すことができない。

 すなわち、「事故予防や再発防止に資する」などという不確定な法概念を挿入すると、届出を義務化し、しかもその違反にペナルティを課すことが著しく困難になってしまうのである

 憶測の領域を出ないが、厚生労働省は医師法21条の異状死届出制度を実質的にはそのまま維持しようと考えている、と思わざるを得ない。届出主体(検案医から医療機関へ)と届出先(警察署から医療事故調査委員会へ)という形式を変えただけで、届出対象(異状死とイロ)と制裁措置(刑罰とペナルティ)という実質は同一なのである。


5 「再発防止」は二次的なもの?

 以上の次第であるので、診療関連死の届出義務は、異状死体等の届出義務と殆んど変わるところがない。診療関連死の届出範囲では、事故予防や再発防止が軽視されている。

 したがって、厚労省第二次試案は、やはり「責任追及」が真の目的であり、これに比して「再発防止」の位置付けは低く、せいぜい二次的なものにとどまると評しえよう。

著者略歴
  昭和56年  東京大学法学部卒業
  昭和61年  弁護士登録(東京弁護士会所属)
  平成元年   井上法律事務所開設
  平成16年  医療法務弁護士グループ代表

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