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産科無過失補償制度を弄ぶな 

m3という医師向けのサイトで、m3編集部の方が、産科医療補償制度について、その制度を立ち上げようとしている、日本医療機能評価機構の河北理事にインタビューをしている。

医療に無過失の分娩出生の結果、脳性まひになる児が、確実に存在する。そうした児に対する支援は、医療ではなく、社会保障制度として行うべきではないだろうか。

さらに、日本医療機能評価機構という、医療に寄生して肥大化してきた官僚の天下り団体が、この事業に当たるのはきわめて不適切である。対象の審査は、産婦人科・周産期の専門家が行い、補償の給付は、官僚機構とは別な組織が行うべきだ。さらに、民事訴訟の抑制策も、必要となる。

以下、引用とコメント~~~

――2006年11月の自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」の報告書を受けて、議論がスタートしたとお聞きしています。

 自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」は様々な検討を行っていますが、われわれはそのうち、11月29日の報告書「産科医療における無過失補償制度の枠組みについて」を基に、検討を進めました。委員会には様々な立場のメンバーがおり、まずはフリーディスカッションから始めました。しかし、あくまで自民党の報告書で示された枠組みを前提に、われわれの報告書をまとめています。

自民党の報告書は、医師の責任追及をするものではないと謳っているが、内実は、刑事訴追・民事訴訟に際して、調査結果を渡すものであり、医師の責任追及に加担するものだ。自民党の報告書の枠組みを前提にしている段階で、この制度の危うさが分かる。

――改めて産科医療補償制度の目的をお教えください。

 目的は二つあります。分娩は病気ではありませんが、分娩をきっかけに、一定数の脳性麻痺の子供が生まれるため、医療者の過失の有無を問わず、子供およびその家族を社会的に支援するのが目的の一つです。国の福祉政策につなげるための制度であり、一定期間、子供の介護などにかかわる経済的支援をすることが第一です。 

脳性まひは、1000出生に対して、1から2の頻度で生じる。その大半(9割)は、胎内での問題で生じる、即ち、分娩と直接の因果関係がないとされている。とすると、脳性まひ児の養育支援は、医療ではなく、社会福祉が担うべきである。

 その一方で、分娩は医療行為であることも確かです。脳死麻痺の子供が生まれた場合、産婦側と、医療機関・医師・助産婦の間で、意見の食い違いが生じることがあります。こうした場合、特に明らかな過失がない場合に、両者の溝を埋めるのが、もう一つの目的です。裁判になれば、両者の時間的・精神的負担は大きいので、この産科医療補償制度で両者の負担軽減を目指しています。同時に、産科医が、いたずらに紛争に巻き込まれることなく、安心して分娩に取り組める体制作りにつながることも期待しています。

医療側に過失がないのであれば、医療が負担を強いられるのは間違っている。ここでのロジックは、患児家族サイドに偏っている。医療側に過失がないのであれば、それに対して、紛争を起こすこと自体が誤りである。

 補償の対象になるのは、年間800件前後、多くても1000件程度だと考えています。

年間出生が、100万件として、脳性まひの頻度が、1/1000出生とすると、少なくとも、1000人の脳性まひ児が生まれている。現実は、恐らくこの2倍程度。補償の対象は、後にこの理事が語っているように、「先天的な要因、一部の未熟児などを除いた、分娩を機に生じた」脳性まひなので、この数字の1/10程度になる。即ち、実際のところ年間100から200名程度ではないか。民事訴訟を起こされ、医療機関が敗訴すると、この補償は出なくなるので、補償対象はさらに少なくなる可能性が大きい。

――制度は、分娩の際の医療事故(過失の有無を問わず)により脳性麻痺となった子供および家族への補償と、事故原因の分析・再発防止策の検討という、二つの柱から成っています。

 まず申し上げておきたいのですが、この制度では医師などの責任を問うことは一切考えていません。この点は安心してほしいと思います。

 本制度では、日本医療機能評価機構が主体となり、運営組織を設置し、その下に各種委員会を設け、補償のための審査や、原因分析、再発防止策の検討などを行います。

 補償の対象は原則、出生体重2000kg以上かつ在胎週数33週以上で脳性麻痺になった場合で、重症度が身体障害者等級の1級および2級に該当する子供です。つまり、「分娩を機に」というのが前提なので、先天的な要因で脳性麻痺になった場合などは対象外になります。

 まず補償対象に該当するか否かを審査し、該当すればこの時点で補償金を支払います。ここでは、医療側に過失があるか否かは問いません。その後に、原因分析に入ります。その結果は、当事者にフィードバックするほか、再発防止策の検討を行い、産科医療の質向上に役立てます。原因分析の過程で過失が明らかになった場合には、それ以外の補償制度との調整を行います。

――「過失が明らかになった場合」に、「調整する」とはどのような意味なのでしょうか。

 脳性麻痺の原因を分析した結果は、医療機関と産婦側の双方に連絡します。何らかの過失が認められた場合、当然、双方が知るところになるわけです。提訴するか否かは当事者の判断ですが、例えば、産婦側が提訴し、分娩機関の過失が認定され、損害賠償責任があるとされた場合、既に支払った産科医療補償制度による補償金は本来、分娩機関が負担すべきものなので、求償してもらうことになります。したがって、補償のための審査、原因分析・再発防止、求償は、時期が少しずつずれることになります。

  本制度は、結果として「無過失」、つまり誰の責任でもない脳性麻痺の子供を、社会の責任として支えようという仕組みです。これまでは仮に裁判になっても、分娩機関の損害賠償責任が認定されなかった場合、子供の介護費用などはすべて親の負担になっていました。この負担を軽減するのがこの制度です。

――例えば、この補償制度で2000万円を産婦側に支払い、後に民事裁判で医療機関に8000万円の賠償責任が確定した場合はどうなりますか。

 2000万円も医療機関に負担してもらうことになります(編集部注:産婦側が受け取るのは、2000万円+8000万円ではなく、8000万円)。

――報告書には、「医学的観点から原因分析を行った場合、分娩機関に重大な過失が明らかであると思料されるケースについては、専門委員会に諮る」とあります。

 この制度は、分娩機関から保険料を徴収して運営する准公的な仕組みですから、「重大な過失が明らかである」場合は、その過失責任までは負う必要はありません。当事者が示談や裁判などのアクションを起こさない場合、われわれが「分娩機関が過失の責任を負うべきである」ことを働きかけます。

日本医療機能評価機構が、過失の有無を判断するのか。できるのか。結局、責任追及をしているではないか。

――無過失補償制度の創設で、現場の医師の間には、「補償金という形で経済的な支援を受けるため、それを基に産婦側が提訴するケースが増えるのでは」という懸念があります。

 もしあるとしても、それは一時的な現象でしょう。確かに、この制度からの支払いが経済的な支援となるため、訴訟が増えるかもしれません。だからといって、本制度が、裁判における過失の認定基準を左右するわけではありませんので、原告側が勝訴する確率は今と変わりません。ですので、われわれは心配していませんし、分娩機関も心配しないでいただきたいと考えています。

民事・刑事訴訟で、医学的には認めがたい判決が、多く出されている。訴訟の頻度が増えるのであれば、そうした医学的にみて間違った判決を下される医療機関・医師が増えることを意味する。近年の民事訴訟では、億単位の賠償判決が下されることが多い。とすると、この補償金を、民事訴訟の訴訟費用に当てて、より多くの賠償金を得ようとする動きが出ることが、当然予測される。心配するなと、気安く言ってもらっては困る。

――行政には、事例の報告などは行うのでしょうか。

 統計処理したデータは報告しますが、個別の事例を報告することはありません。

――ところで、補償のための審査や原因分析はどのような形で行うのでしょうか。

 審査は、書類審査が基本です。フォーマットを用意し、記入してもらいます。ほとんどが書類審査で終わるでしょう。必要に応じて現地に赴く場合もあるでしょうが、わずかでしょう。また原因分析のために、分娩時の診療録・分娩監視記録も併せて提出してもらうことを想定しています。原因分析に当たっては、可能な限り、当事者の意見もお聞きします。

審査する能力があるのかどうかが大きな問題。さらに根本的に、補償を行う者と、審査する者が同一であると、補償を少なくする動機付けが必ず起こる。両者は、別組織にすることが絶対必要である。

――これは強制ではなく、民間保険で運用する形になるのでしょうか。

 はい。立法措置は伴いませんので、加入を強制することはできません。前述のように準公的な仕組みですが、任意の保険です。日本医療機能評価機構が主体となり、損害保険会社などに参加してもらい運営していく形になります。当事者である医療機関が加入しない限り、制度としては成り立ちませんので、90%以上は加入していただきたいと考えています。

日本医療機能評価機構は、病院の機能評価を一件300万円何がしかで引き受け、潤沢な資金を得てきた。その機能評価たるや、形式的なもので、ただただ会議とペーパーワークを増やすものであるらしい。機能評価を、高額の更新料を支払い、更新することを求められた病院が、更新をしなくなってきている、とも聞く。そのような状況の、日本医療機能評価機構は、この補償事業を、新たなビジネスチャンスと捉えたように思える。

この補償制度で、同機構に入る収入の額・・・
一件の出生につき、5万円の保険料納付が求められるようだ。100万出生の90%が加入するとすると、90万出生。同機構の保険料収入は、450億円となる。

一方、同機構が補償金として支払う額・・・
同機構が推測している1000名が対象になるとして、200億円。ただし、、「先天的な要因、一部の未熟児などを除いた、分娩を機に生じた」脳性まひであり、民事訴訟で医療機関が敗訴したものを除く、という厳しい条件を課せば、対象数はこの1/10以下になる。即ち、20億円以下になるはずだ。

上記の通り、同機構は、この補償制度で大幅な黒字になるはず。どうしてこんな制度設計が許されるのだろうか。

もっと根本的な疑念として、無過失のケースに対する補償をするために、何故医療機関が保険金を支払わなければならないのか、という大きな疑問が残る(健康保険の出産一時金を上げて、実質医療機関の負担がないようにする、といった議論も聞こえるが、これも官僚お得意のはしご外しで、容易に外される可能性が高い)。こうした問題は、本来、社会保障が扱うべき問題ではないのだろうか。


 この3月21日に予定されている機構の理事会で正式決定します。2008年10月からは妊婦の登録をしてもらい、2009年1月くらいに、遅くても2009年度中に実際に事業を始めたいと考えています。

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